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SONY SCD−XB9 |
2000年 定価80,000円 |
SONYのSCD-XB9は、2000年6月に発売されたSACD(スーパーオーディオCD)プレーヤーです。 輸出仕様はSCD-XB940で、ヨーロッパではカーオブザイヤーのオーディオ版ともいえるEISA AWORDを、受賞しています。 ライバルは同じ年に発売されたDVDオーディオプレーヤー Victor XV-D721。 当時、次世代CD規格としてはSONYとフィリップスによって開発されたSACDと、ビクター、パナソニック、東芝、パイオニアなどが推進したDVDオーディオがあり、1999年からプレーヤーの発売が始まります。 SONYが投入したSACDプレーヤーは「SCD-1」(50万円)と「SCD-777ES」(35万円)の高級機のみ。一方、DVDオーディオ陣営は普及価格帯のプレーヤーも準備していました。ところが発売直前になって著作権保護暗号方式(CSS)が一部解読されたため、パナソニックとビクターは2000年夏に発売を延期しました。 SCD-XB9はSACDの普及を目ざし、シェアを確保するために投入されたプレーヤーといえます。DVDオーディオ陣営の普及機であるパナソニックDVD-A7(12万円)、テクニクスDVD-A10(15万円)、ビクターXV-D721(93000円)より低価格であり、なおかつ上記の暗号問題により、ひと足先に発売となりました。またSCD-XB9と組み合わせるプリメインアンプTA-FB9も発売されています。 SCD-XB9のデザインは従来のSONYのCDプレーヤーより、DENONのDCDシリーズを意識したような感じです。 SACD再生の要となるDSDデコーダーは上級機「SCD-1」や「SCD-777ES」と同じものを搭載。DSD信号の振幅軸方向の精度を高めるために、スイッチング歪みの影響を除去しオーディオ信号の形を整えるACPシステム(Accurate Complementary Pulse density modulation)を採用。時間軸の揺らぎを改善し精度を高めるパルスジェネレーターも搭載しています。 その他には可変デジタルフィルターやオーディオ・デジタル独立の電源トランス、偏芯インシュレーターなど、上級機のSCD-1やSCD-777ES、過去のESシリーズのエッセンスを取り入れたモデルとなっています。 ピックアップは波長650nmのシングルレーザーで、SACDとCDの両方に対応しています。一般のCDプレーヤーで使用されているのは、波長780nmのレーザーですが、650nmでもサーボ回路などのコントロールでCDを再生することは可能で、初期のDVDプレーヤーでCDが再生できたのも、同じやり方をしているためです。 ただ波長650nmのレーザーでCDを再生するとサーボのコントロール量が多くなり、デジタルノイズが増加し音質の悪化につながるため、上級機のSCD-1やSCD-777ESではSACDとCDおのおの専用のピックアップを搭載したツインピックアップとしています。 (音質について) 1.CDの音 CDの再生では90年代前半の5〜6万クラスのCDプレーヤーである「DCD-1515AL」や「DP-7040」にも負けています。低音や高音が足りない場合は、使用するシステムにあわせてデジタルフィルターのモード(5種類)を使いわけることで、いくらかの改善はされると思います。ただフィルターを変えても、サウンドの厚みの不足や透明感の悪さなどはそのままです。 2.SACDの音 自然な音色で音の広がりや透明感なども良く、CDとの差は歴然です。ただCDP-555ESJなど能力の高いCDプレーヤーと聞き比べると、録音が新しいものや状態が良いものは、SACDのアドバンテージを実感しますが、モダンジャズなど古い年代の録音の物では、その差は意外に小さく、アドバンテージはあまり感じられませんでした。 (音質改善) このままでは「投資対コスト」が合わないので、音質改善のための対策を行いました。対策といっても100円ショップのダイソーで買った防振ゴム(硬い方)を、ピックアップ・サーボメカの周りにいくつか貼っただけです。要はメカによる振動を抑えて、その分だけでもサーボの効きを少なくしノイズを減らすという作戦です。 SCD-XB9のメカベースは価格の割にチープなので効果はバッチリ。音はクリアになり、奥行きや厚みも出てきました。この効果はCDだけでなくSACDにも現れました。 |
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(フロントパネル) | ||||||||||||
1990年代のSONY製CDプレーヤーと比べると、シンプルでスッキリとしたデザインになっています。カラーはシルバーのみですが、輸出仕様のSCD-XB940にはブラックもありました。 フロントパネルの操作ボタンは必要最低限で、SACD/CDの切り替えやデジタルフィルターのモード切替、ディスプレィのON/OFF、プログラム再生などはリモコンからしかできません。 |
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(シャーシ・内部について) | ||||||||||||
シャーシは鋼板製で、80〜90年代のESシリーズのような防振対策は見られません。 内部はオーソドックスで、中央にビックアップ・ドライブメカ。左側に電源回路。右側手前のチップが並んでいるところがデジタル回路で、サーボ回路や信号処理が行われています。その奥にオーディオ回路となっています。 ボディはやや小ぶりですが、中味はギッシリと詰まっています。ピックアップの近くやD/Aコンバーターに銅のテープを貼るなど、ノイズ・歪対策への配慮が見られます。また製造ロットによってはブチルゴムを使うなどの防振対策も見られます。 |
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(電源回路) | ||||||||||||
電源回路のトランスはデジタル回路用とオーディオ回路用に分けたデュアル・トランスで、底板の上にさらに鋼板を敷きネジ止めされています。電源コードにはノイズフィルターが取り付けられています。 電解コンデンサはELNAのオーディオ用や日本ケミコンのSMGやASF、ニチコンのAVFなどを使用。 この電源回路とDSDチップは発熱量が多い(消費電力も26WとCDP-X55ESよりも多い)のですが、放熱スリットが無いため、夏場など室温が高い時はシャーシの内部も高温となります。コンデンサの劣化などを気にされる人は注意したほうがよいかもしれません。 |
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(デジタル回路) | ||||||||||||
デジタル回路にはサーボ回路、信号処理回路、DSD回路、パルス・ジェネレーターなどがあり、文字どおりのデジタル回路基板となっています。 SACD再生用のDSDデコーダーは「CXD2751Q」で、これは上級機のSONYのSCD-1やSCD-777ES、DVP-S9000ESやAccuphaseのDP-85などでも使用されているものです。 「VC24 plus(CXD9515Q)」は、いわばDSD対応の1bitDACで、DSDデコーダーで発生するスイッチング歪みを低減するACPシステム(トシィルター)、1bitの波形データを作るパルス・ジェネレーター、CD用の可変デジタルフィルターやノイズシェーパー、そしてD/A変換部を一体化したチップです。 よりによってデジタル回路のど真ん中にDACを置いている訳ですから音質への悪影響はかなりあると思います。 |
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(DAC・オーディオ回路) | ||||||||||||
オーディオ回路には銅テープを貼った「カレント・パルスDAC」の後ろ半分「CXA8042AS」が、左右に1つずつあります。 SONYはカタログでは「CXA8042AS」をあたかもD/Aコンバータのように説明していますが、実際には上記のとおり、D/A変換は「VC24 plus(CXD9515Q)」で行われており、「CXA8042AS」はD/A変換されたアナログ信号を受けて、スイッチングし電流パルスを生成する機能しかありません。 ちなみに翌2001年に登場するスーパーオーディオD/Aコンバータ(SA DAC)も、基本的な構成はVC24 plus+CXA8042ASと同じになっています。 電解コンデンサはELNAのSILMICやニチコンのFWなどが使われています。 オーディオ回路への電源供給ラインには、ノイズを低減するフェライトコアを装着し、気配りをしているのですが、隣のデジタル回路では多量の輻射ノイズ(空中に放出されるノイズ)を発生させており、これによるオーディオ回路への影響は少なからずあると思います。 |
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(ピックアップ・ドライブメカ) | ||||||||||||
ピックアップ・ドライブメカはキチンと作られているところと、手抜きがされているところがあり何とも中途半端です。 メカ全体のベースは鋼板を加工したベースの上に樹脂製のベースが載る2階建て構造。これはよくある方法ですが、鋼板とプラスチックのベースの結合方法はお粗末で、ハメコミ式にしてビス1本で固定と昔のSONYでは考えられないやり方です。 メカ自体は黄色のABS樹脂製のベース(これは強度がありしっかりしています)に3点支持でフローティングされています。 ブリッジにあるクランパーはディスクスタビライザータイプ。トレイは厚さ1ミリ程度のプラスチック製で強度がどうのというレベルではなく、トレイの形をしているというだけです。 |
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ピックアップユニットは自社製のKHM-220AAAです。これにスピンドルモーターや、トラッキングモーターがいっしょになった、アッセンブリーパーツは「KSS-220AAA」として販売されました。 このピックアップはSACD用という訳ではなく、DVP-S313などのDVDプレーヤーに使用されている物です。波長650nmのシングルレーザーのため、CD-Rには非対応となっています。 DVD再生用の半導体レーザーはCD再生用のものに比べて、ケタ違いに光出力が大きく、寿命は使用状況にもよりますが、当時の物は数千時間(CD用は約1万5千時間)といわれていました。 SCD-XB9ではCDの再生時でも、レーザーは大きな出力で動作しており、普通のCDプレーヤーより早くレーザーの寿命が訪れます。 ウチのSCD-XB9ではレーザーの寿命が近づき出力が低下し始めると、SACDが読み込みが出来なくなりますが、CDは普通に再生できました。 はじめはピックアップのレーザー出力のボリュームを上げれば、簡単に直るものと思っていましたが、出力調整とデジタルサーボの関係がけっこうシビアで直りません。結局、ピックアップユニットの交換で無事に直りました。 ちなみに出力調整用のボリュームは、ピックアップ本体の裏側にあります。 メカシャーシとなる黒い部分のフレームは、エンジニアリングプラスチックのようで、モーターからの振動がピックアップに伝わるのを減らすために、シーソー式のサスペンションになっています。 ピックアップのスライド機構は、モーターのシャフトが、らせん状になっているワームギア方式です。 |
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(出力端子とリモコン) | ||||||||||||
出力端子はデジタルが光と同軸の2系統(ともにCD再生時のみ)と、アナログが1系統となっています。 リモコンの型番はRM-SX90。 |
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再生周波数範囲 | 2Hz〜100kH(SACD) |
周波数特性 | 2Hz〜50kH(SACD) 2Hz〜20kHz(CD) |
高調波歪率 | 0.0015%以下(SACD) 0.0020%以下(CD) |
ダイナミックレンジ | 103dB以上(SACD) 99dB以上(CD) |
消費電力 | 26W |
サイズ | 幅430×高さ115×奥行290mm |
重量 | 5.5kg |
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