TOP >PCオーディオデジタルアンプ > TOPPING TP10 MARK2

TOPPING TP10 MARK2

実売4,500円~7,800円





TOPPING TP10 MARK2は中国の拓品電子のデジタルアンプです。2000年代半ばから後半にかけての、中国製デジタルアンプのブームの立役者で、TP-20とともに人気の商品でした。


当時は小型のデジタルアンプが少なかったこともあり、幅90mm×高さ50mm×奥行162mmというボディサイズにまずビックリ。それでいてピュアオーディオ用のスピーカーをちゃんと鳴らせるということにまたビックリしました。

何よりも価格が1万円以下なのに、音がクリアで解像度もあり、それよりも高いミニコンポや、初級クラスのプリメインに匹敵する音が出てきたのに驚きました。

当時はデジタルアンプICの情報が少なく、技術的な課題や音質的な問題も知られていなかったので、メーカーの宣伝文句どおりに、画期的な製品だと勘違いした人も多くいたようです。

多くの製品は、三角波発生器とPWM(パルス幅変調)を使用して、パワーMOS-FETで増幅する仕組みです。
実際はパーツがIC化されただけで、基本的には1977年のSONYのデジタルアンプ「TA-N88」の回路とあまり変わりません。



TP10 MARK2は心臓部となるデジタルアンプICに、Tripath(トライパス)社のTA2024Cを使用しています。

TA2024Cはトライパス社独自の、DPP(DIGITAL POWER PROCESSING)技術を使用しており、AB級アンプのオーディオ特性とD級アンプの電力効率を持っています。

三角波によるPWM(パルス幅変調)を使わずに、独自のアルゴリズムにより、周波数が変化する複雑なデジタル波形を使用しているのが特徴です。その効率は10W出力時で90%にも達します。その他にミュート機能、過電流や過熱などの保護回路が搭載されています。


またTP10は品質の良いオーディオ用パーツを使用しており、EPCOS製のメタライズドフィルムコンデンサや、エルナ製の「シルミック」コンデンサといった高音質のパーツを使用しています。

外部電源は12Vのセンタープラスとなっており、 付属品のACアダプターは12V・3Aです。


後継機のTP10 MARK3は2009年に発売。MARK2の回路を簡略化し、パーツを減らしたバージョンで、不評だったのか短命で終わります。
そして2010年に最終モデルとなるMARK4が発売されます。MARK4ではアンプ部をMARK2とほぼ同じ回路に戻し、スピーカー保護用のリレーを追加しています。



(音質について)
当時はSTEREO誌のブラインドテストで、9,800円のラステーム RSDA202が、アキュフェーズのC-2800とM-8000の組み合わせ(330万円)よりも、音が良いという評価が出た後でしたので、いわば猫も杓子もデジタルアンプは音が良いと騒いでいました。

また、マークレビンソンのNo 331Lが、トライパスのデジタルアンプICを使ったキットに負けたという「ハイエンドの敗北」という記事が拡散されたり、それを前言撤回した「ハイエンドの逆襲」は逆に誰も興味を示さなかったということもありました。


確かにハイエンドは製造コストからみたコスパは劣悪ですので、価格差ほどの音の差は出ません。またアンプなどは5年もほっておけば、中にホコリがたまって音がかなり悪くなります。同じように1970~80年代の作られたアンプの「名機」でも、適切なメンテをしなければ、簡単にデジアンに負けてしまいます。


ただハイエンドなど高音質を追及したモデルでは、繊細さを求めるために機器間の相性が出ますし、セッティングの経験も必要になります。つまり使う側の人にもレベルが求められます。

こういう話はオーディオでは、昔は当たり前だったのですが、いつしか「高い物だから音が良い」「新しい物だから音が良い」という、変な話が当たり前になってきていたので、Toopingのようなデジタルアンプの登場は、ある意味良いブレイクスルーになったのかもしれません。


音は解像度があり、そこそこ透明感もあります。ただそこは1万円以下のアンプ。細かい部分は音がつぶれたり、出なかったりします。ただこれはミニコンポやピュアオーディオの初級クラスのアンプでも同じです。

TOOPING TP21と比べると少し硬い音です。メリハリのある音作りなので、ロックやJPOPなどを聴いている分にはわかりずらいですが、クラシックやジャズでは、レンジの狭さや音楽の表現の弱さなどが出てきます。

電源のON/OFF時にポップノイズが少しでるので注意が必要です。

付属のACアダプターは14V・4Aですが、音質はあまり良くないので、他社製の12VのACアダプタを使っています。



(フロントパネルとリアパネル)
フロントパネルには厚さ8mmのアルミ材を使用。ヘアライン仕上げになっています。
デザインはシンプルで、ボリュームのツマミと電源ランプがあるだけです。

リアパネルのRCA端子は金メッキがされたしっかりとしたものです。それに引き換えスピーカー端子は安物です。スピーカーケーブルを通す穴が小さいので、細いケーブルしか使えません。実質的にはバナナプラグ専用と考えたほうがよいと思います。

DCインは12Vのセンタープラス。付属のACアダプタは12V・3Aでです。その上には電源スイッチがあります。

フロントパネル リアパネル


(ケースや内部について)
ケース本体はアルミ製のBOX構造。基板はスライドさせて差し込み、フロントとリアパネルを使って固定する方式です。
強度の向上と振動防止のために天板と底板にリブが入っています。底面には小さなゴム足が付いています。

ケース ケースの底面





(内部について)
このTOPPING TP10 MARK2は、基板の日付は2008年10月。後継機のMARK3は、2009年2月ごろから生産に入っているので、最終に近いロットです。

内部の回路はまさにシンプル&ストレート。レイアウトやパーツは違いますが、基本的にはTP20 MARK2やTP21と同じようです。

デジタルアンプICはTripath「TA2024C」。チップの隣にあるカップリングコンデンサには、EPCOS製のメタライズドフィルムコンデンサ。

DCオフセット調整用のトリマポテンションメータは、BOURNS 3296が使われています。

平滑用の電解コンデンサはエルナ製のシルミック。ローパスフィルターはBournsの巻線インダクタやDALE製の抵抗が使われています。

ボリュームはアルプス電気製です。

メイン基板

Tripath TA2024C ローパスフィルター

EPCOS製のメタライズド
フィルムコンデンサ
電解コンデンサ シルミック
16V・220μF X2本

アルプス電気製のボリューム 付属のACアダプタ
12V/3A


(デジタルアンプICについて)
TripathのデジタルアンプICのTA2024Cは、TA2024およびTA2024Bの置き換え用に作られたICです。

有名なTA2020を含めてTripathのデジタルアンプICは、オーディオ専用に作られた訳ではありません。低消費電力でコストも安いことから、いろいろな家電製品の音声出力に使用されています。
逆に言うと一般用途に開発されたために、出力が10~20W程度しかないと言えます。

中国製デジタルアンプやキットが、注目される以前の2003年の時点で、すでにソニー、シャープ、東芝、日立、サムスン、三洋電機、富士通ゼネラル、ビクターなどの液晶やプラズマテレビに採用されています。


TripathのデジタルアンプICの特徴は、DPP(DIGITAL POWER PROCESSING)技術です。

従来のデジタルアンプICの、PWM(Pulse Width Modulation)方式の弱点である、相互変調歪などの歪やノイズの発生を解決するために、ノイズシェイピング(ΔΣ変調)とフィードバック回路を組み合わせています。→US特許5777512 


PWM方式では三角波を使用してA/D変換を行いますが、三角波の非直線性から歪みやノイズが発生します。

信号を高速なスイッチングで処理し、パルスのオンとオフを作り、オンの部分をパルス幅(時間幅)に変化させています。また増幅の際にもスィッチング処理が行われます。
このスイッチング処理の際に大量のノイズが発生するため、オーディオ信号では歪になってしまいます。


これを解決するために考えだされたのが「ノイズシェイピング」で、古くからのオーディオファンにとっては、「MASH」などの1bitDACでおなじみの技術です。

MASHもPWM方式のDACで、デジタルアンプICとは電圧増幅とD/A変換という機能の違いはありますが、回路としては共通部分が多いです。

MASHではCDの16bitのデジタルデータを1bitに再量子化しますが、この際に量子化ノイズが発生します。ノイズシェイピングはこの量子化ノイズを、高い周波数域に移動する技術で、後でローパスフィルターを通すことでノイズをカットすることができます。

Tripathはそこに目を付けて、デジタルアンプうまく適合させたのが、成功のポイントだったのかもしれません。


TA2024Cの仕組みは、まず積分器と量子化器(ΔΣ変調)を使用してアナログ信号をデジタル信号にA/D変換を行います。
このA/D変換時には、量子化ノイズ(いわゆるデジタルノイズ)が発生するので、ノイズシェイパーを使って、量子化ノイズを高域に移動さてています。

デジタル信号はパルス幅(PWM)に変調されているので、MOS-FETを使ったスイッチング回路で増幅します。
このままだと信号はまだパルス波形なので、後段のローパスフィルターを通して、アナログ波形に復調すると同時に、高周波のノイズ成分をカットしてスピーカーに出力します。

また増幅回路を出た信号は、フィードバック回路に渡されて、アンチエイリアシング(折り返し雑音)フィルタと、連続時間フィードバック回路を通り、積分器で高周波歪と低周波歪の補償が行われます。

TOPPING TP10 MARK2のスペック


定格出力 15W+15W(4Ω)
10W+10W(8Ω)
高調波歪率 0.03%
S/N比 98dB
ダイナミックレンジ 98dB
スピーカーインピーダンス 4Ω~8Ω
電源(ACアダプタ) DC 12V 3A センタープラス
サイズ 幅90×高さ50×奥行162mm
重量 420g





デジタルアンプ
USB DAC
ヘッドホンアンプ
DAP
イヤホン
ヘッドホン
オーディオケーブル
PCオーディオTOP
オーディオTOP





TOPPING TP10 MARK2のレビュー  B級オーディオ・ファン