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AKAI CS−F39R

     1982年 定価69,800円



AKAIのCS-F39Rは、1982年3月に発売されたオートリバースのカセットデッキです。姉妹機としてCS-F36R(定価59,800円)がありました。

AKAI(赤井電機)のカセットデッキというと、GXヘッドを搭載したGXシリーズが有名ですが、CS-Fシリーズは1980年のCS-F11(47,800円)からスタートしたシリーズで、「CS」という型番はGXヘッド以外のヘッド搭載機のための型番のようです。

CS-Fシリーズの登場により従来からのGXシリーズ、新しいCS-Fシリーズ、ミニコンポサイズのUCシリーズという3本立てとなり、1982年のカタログブックによると、カセットデッキは合計21機種とSONYと並んで、業界最多のラインアップとなっています。

ところがこの積極攻勢策はうまくいかず、機種を大幅に整理して1984年のカタログブックでは10機種と半分以下となります。CS-Fシリーズも消滅し短命で終わってしまいました。


CS-F39RはCS-F33R(1981年)の後継機で、AKAIのリバースデッキとしては第6世代となります。オートリバース機能はアカイ独自の赤外線テープセンサーによるクイックリバースシステムで、磁気テープが終了してリーダーテープをセンサーが検知して0.5秒で、反対面の再生がスタートします。
リバースセレクターにより、ワンウェイの録再、フォワードからの往復録音と再生、A・B両面のエンドレス再生などが可能です。

ヘッドにはHD(High Density Metallic Head)ヘッドを搭載。再録X1、消去X2という構成です。

メカは2モーターで、キャプスタン用に低ワウ・フラッターの電子制御DCモーター、リール用はトルクの強いDCモーターを使用しています。
クイックリバースに対応するためバイ・カウンターキャプスタンドライブを搭載しています。これはフォワードとリバースに専用のキャプスタンシャフトとピンチローラーを設け、消去ヘッドをキャプスタンの外側に設置、高精度のテープガイドなど、走行性能の安定化を図っています。

ノイズリダクションシステムはドルビーBタイプとCタイプを搭載しています。Cタイプには高域のリニアリティを改善するスペクトラル・スキューイング回路や高域での録音飽和を抑えるアンチサチュレーション回路を装備しています。他にFMステレオ放送のエアチェック用にMPXフィルターを搭載しています。

テープセレクターはノーマル、クローム、メタルの3ポジションに対応しています。

自動頭出し機能のIPLS(Instant Program Locating System)を搭載しており、再生、早送り、巻戻しと組み合わせて、いろいろなオートプレイが可能です。その他にテープカウンターと連動させたメモリープレイも可能です。



(音質について)
CS-F39Rのヘッドは有名なGXヘッドではなく、HDヘッドですが、GX-R66と聞き比べてもそれほど遜色のある音ではありません。
ただGX-Z5000などと比べると、明らかにレンジが狭く、解像度や透明感なども劣ります。ただこれはGX-R66でも同じことです。

1980年代後半の中級機はバブル時代ということもあり、高音質のパーツをふんだんに使用した物量機なので、これは仕方ありません。



(キャビネット・内部について)
カラーリングやスイッチの配置などアカイらしいスタイリッシュなデザインです。
シグナルメーターは12セグメントのFLメーターですが、テープカウンターは電子式ではなく3ケタの回転式です。

録音レベルの調整はロングストロークスライドボリュームです。その下にはテープセレクタやオートリバースのモードの切り替えスイッチやマイク端子(標準プラグ)があります。
一番右側には再生、録音、早送り、巻き戻しなどの操作ボタンがあります。





(キャビネット・内部について)
キャビネットは鋼板製ですが、リアパネルだけは木製となっています。ちなみに輸出仕様にはオプションでウッドケースが用意されていたようです。

内部は左側にメカブロックと電源回路。右側のメイン基板は録音・再生、イコライザー、ノイズリダクションなどのオーディオブロックとなっています。フロントパネルの裏側にはシステムコントロール用の基板があります。




(電源回路)
CS-F39Rの電源部は回路的には一般的な構成ですが、特徴的なのはキチンとした磁気対策をしていることです。
カセットデッキは磁気テープを使用する訳ですが、トランスからのリーケージフラックス(磁束漏れ)対策は高級機でも意外とルーズだったりします。

電源トランスの容量は25V・31VAで、上部をBMC(バルク・モールディング・コンパウンド)のカバーで、周囲を鋼板製のカバーで覆って磁束漏れを抑えています。
さらにカセットテープが装着されるメカ部との間に鋼板によるシールド板を設置。反対側のリアパネルは非磁性素材を使用しています。

電源回路は3系統の独立電源となっています。




(ヘッド・メカ)
CS-F39Rはクイック・オートリバースに対応するため、バイ・カウンターキャプスタンドライブを搭載しています。AKAIは1970年代からGXC-730Dなどのリバース機に、バイ・カウンターキャプスタンドライブを使用していますが、CS-F39Rの物は改良型で、消去ヘッドがピンチローラーの外側に配置されているのが特徴です。

この機構は中央に録再ヘッドがあり、その両側にテープガイドとリバース検知用の赤外線センサー。フォワードとリバース専用のキャプスタンとピンチローラーがあります。そして一番外側にフォワードとリバース用の消去ヘッドがあります。

消去ヘッドはカセットテープのピンチローラー用の穴で、テープタッチしているため、圧着パッドには当たりませんが、録音上の支障はありません。

録再ヘッドは回転式(ロータリーヘッド)ではなく、2chのヘッドを前後に動かして、カセットテープのA面・B面のトラックに対応するAKAI独自のリニアモーション機構です。

録再用のヘッドは1981年から登場したHD(High Density Metallic Head)ヘッドですが、詳細は不明です。時期からいうと改良型のハードパーマロイかもしれません。

メカのモーターはキャプスタン用が電子制御DCモーターを使用。リール用はDCモーターです。

ヘッド・キャプスタン・ピンチローラー メカ



(録音・再生回路・システムコントロール回路)
メイン基板はほとんどが録音と再生回路で、きれいな左右対称のディスクリート構成となっています。

ノイズリダクションシステムのドルビー用ICは日立製「HA12038」です。ドルビーBタイプと、Cタイプにはスペクトラル・スキューイング回路やアンチサチュレーション回路を搭載しています。

システムコントール基板のマイコン(4bit)は三洋製の「LM6402A」です。

録音・再生回路 ドルビー用IC
日立 HA12038

フリーケンシーレスポンスの
調整ボリューム
システムコントロール基板


(入出力端子)
入出力端子はライン入力とライン出力とワイヤード(有線)用のリモコン端子です。リモコンは別売で有線のリモコンユニット(RC-21 6,000円)、ワイヤレスリモコン(RC-90 18,000円)がありました。

リアパネル



(1982年 Maxellのメタルテープ MX)
1982年、Maxellはカセットテープの主力モデルをリニューアル。当時のラインアップはノーマルタイプのUL、UD、XL1、XL-1S。クロームタイプのXLU、XLU-S。そしてメタルテープの「MX」です。

新しくなった「MX」は、これから発売されるデジタルオーディオディスク(CD)や、ダイレクトカッティングなどの、高度な音楽ソースに対応するために開発されたもの。

磁性体は超微粒子化したSP(スタビライズド・ピュア)メタル。これによりノイズを全帯域にわたって1dB以上低減し、高域のダイナミックレンジは2dB以上拡大しています。また独自の酸化防止処理技術により、特性変化を抑えています。
音像を定位させるPAカセットメカニズム採用しています。


AKAI CS-F39Rのスペック

周波数特性 25Hz〜18kHz ±3dB(メタルテープ)
20Hz〜17kHz ±3dB(クロームテープ)
20Hz〜16kHz ±3dB(ノーマルテープ)
S/N比 60dB/56dB(EIAJ)
ドルビーB・・・1kHzで5dB、5kHz以上で10dB改善
ドルビーC・・・500Hzで15dB、1kHz〜10kHzで20dB改善
高調波ひずみ率 0.7%(メタルテープ)
ワウ・フラッター 0.04%(WRMS)
0.07%(W.Peak)
消費電力 20W
サイズ 幅440×高さ118×奥行309mm
重量 7.6kg




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