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SANSUI CD-α607 1998年 定価98,000円


CD-α607は1998年にサンスイが発売した最後のCDプレーヤーです。CD-α907とCD-α707は1986年に発売されましたが「607」の名前は87年のCD-α607iが最初で、その後CDプレーヤーの製品名は「917」「717」「617」に移行したため、CD-α607の名前はいわば欠番となっていました。

サンスイというとアンプで有名なメーカーですが、CDプレーヤーの上級機ではシャーシーや電源などに、こだわりが感じられる製品を生み出していました。
CD-α607は機種名こそ「607」となっていますが、「907」以上のこだわりも取り入れた特徴的なCDプレーヤーとして「有終の美」を飾った1台でした。

シャーシはCD-α917XRで話題となった「純銅ドーム」をさらに発展させたような、「純銅インナーシャーシ」を新たに開発。電源部も強力で大型のトロイダルトランスとコンデンサを搭載しています。D/Aコンバーターもサインマグニチュード方式のバー・ブラウンの24bit・BiCMOS DAC「PCM1704U」を搭載と、なかなか充実した内容となっていました。そして最大のウリがHDCDデコーダーの搭載でした。

HDCD(High Definition Compatible Digital)は高音質CDのひとつで、20bitを越える音楽信号を16bitのCDに記録する技術と波形再生技術を組み合わせたものです。
HDCDはふつうのCDプレーヤーで再生できますが、CD-α607のようなHDCDデコーダーを搭載したプレーヤーでは、CDに記録された隠しコードから16bit信号になる前の波形の情報を読みとり、元の音楽信号に近い「波形再生」を行って再生することができます。
他の波形再生技術であるレガートリンク・コンバージョンやアルファ・プロセッシングなどは、CDの16bitの音楽信号から元の波形を推定して再現するのに対し、HDCDは隠しコードに元の波形情報が記憶されているため、より正確な波形再生が可能でした。→HDCD

HDCDは1999年には世界中の200レーベルから約4000タイトルが発売されていましたが、デコーダーを搭載した機器が普及しなかったため、HDCDを発売するレーベルは少くなくなっています。


(音質について)

1.CDの音
どちらかというロック・POP向けの音で、クラッシックやジャズも聞けますよというオールラウンドタイプの音です。ソフトが少ないHDCDへの対応を考えると、しょうがないのかもしれません。クラッシックとかジャズだけなら、7〜6万円台の機種でもっといい音を出すものがあります。

高域はよくでていますが低域は普通。普通といっても1990年台の中級機と比べての話で、現在のDENONやマランツの9万円台のプレーヤーは低音が弱いので、それと比べるとけっこう出ているという感じになります。けっして高解像度ではありませんが実用には十分。音の広がりは良いですが、奥行きは良くないです。

2.HDCDの音
同じ曲をふつうのCDとHDCDで聞き比べて見ると、CDは下手をすると同時期の6万円台の機種にも負けてしまいそうな感じでしたが、HDCDをかけると一変。同じCDプレーヤーとは思えないような音になります。Fレンジがグ〜ンとワイドとなり、音の広がりや奥行きも比べ物にならないくらい向上します。
どうやらCD-α607のデジタル・フィルターは、HDCDデコーダーに内蔵のものを使っているようで、もしかしたら特性もHDCDに合わせたものになっているのかもしれません。


(フロントパネル)
弟分のCD-α507と共通のデザインで、センタートレイとその下にディスプレィとオーソドックスなデザイン。プログラム関係のボタンはリモコンのみとしているのでシンプルなイメージです。
HDCDのインジケーターは小さなランプが点灯するだけのちょっと寂しいものです。

左のツマミがヘッドフォンVOL
右が可変出力のアッテネーター

ディスプレイ HDCDのインジケーター


(シャーシと内部について)
シャーシのベースとなる鋼板部分とフロントパネルはCD-α507と共通。底板は鋼板の上に2mm厚の純銅の板を貼った2重底。リアパネルは鋼板製ですが、両面を銅メッキしています。天板も2重構造で、鋼板に特殊ゴム材を介して0.68mmの純銅の板が貼られています。

サンスイはシャーシに銅を使うことに、こだわりを持っており、それまでに銅メッキや銅クラッド材などを使用してきましたが、最後のプレーヤーでとうとう「純銅シャーシ」を完成させてしまいました。インシュレーターはサンスイお得意の楕円インシュレーター(樹脂製)になっています。

ネット上ではよく「銅シャーシ」や「シャーシは銅製」という言葉が登場しますが、そのほとんどが鋼板に銅メッキをしたシャーシです。銅は軟らかい金属のため、基本的には振動が大敵であるオーディオ製品のシャーシには向きません。また鋼板よりも価格が高いため、メーカーとしては使いにくい素材です。
鋼板との2重構造とはいえ「純銅」のシャーシを持ったCDプレーヤーは、私の知る限り国内では過去にも現在にもCD-α607しかありません。たぶん世界中を見てもCD-α607だけかもしれません。

内部は左側が電源トランスと電源回路。中央部はメカと電源回路で、右側は手前にデジタル回路、奥がオーディオ回路となっています。

天板 楕円インシュレーター


(電源回路)
電源回路のパーツは異常なほど贅沢で、CDプレーヤーの30年あまりの歴史の中でも、ある意味トップクラスです。

電源トランスはサンスイのCDプレーヤーの特徴「斜め配置」のEIトランスではなく、直径が85mmと大型のトロイダル・トランスが使われています。マランツが容量を大幅にアップしたというSACDプレーヤー SA-11S3(504,000円)のトロイダルトランスより、一回り以上大きいので、こちらの方が容量が大きいはずです。

平滑用のコンデンサは何とラグ端子型で、しかも音質には定評のある「シルミック」。容量が50V・4700μFと、CDプレーヤーに使うのはもったいないような立派なものが2本あります。
ちなみにカタログには「ハイエンドクラスのシルミック2本を採用」と書いてありますが、アキュフェーズのDP-700(1,155,000円)でも、こんなに良いコンデンサは使っていません。

たぶんサンスイの経営や組織がまともな状態であれば、コストの健全化が求められて、こんなにすごいパーツは使われなかったのかもしれません。まさに最後の大盤振る舞いです。
電源回路とトロイダル・トランス シルミック・コンデンサ


(オーディオ回路)
オーディオ回路のD/Aコンバーターは、サイン・マグニチュード方式のバー・ブラウンの24bit/192kHzDAC「PCM1704U」を、左右独立で搭載しています。

サイン・マグニチュード方式は2つのDACを+専用と-専用で動作させて合成するというもので、マルチビットのDACにつきものだったゼロクロス歪みが発生しないというメリットがあります。仕組みとしてはテクニクスやDENONが採用していた4DACシステムに近いものです。

またPCM1704UはDACに入ってくる音楽データを、加工要素を入れずにストレートにD/A変換することが「カレントセグメント」という機構を持っており、音質的にも優れたDACでした。
このPCM1704U、現在では1個の価格が5000〜7000円と、ハイエンド機用の32bit・24bitDACも真っ青になるようなお値段の「超高級DAC」となっています。

HDCDデコーダはパシフィック・マイクロソニックス社製の「PMD-100」で、デジタルフィルターも内蔵されています。
コンデンサにはオーディオ用のシルミックやスチロール・コンデンサが使われています。
オーディオ回路 HDCDデコーダ

(ピックアップ・ドライブメカ)
シャーシやトランスなどにお金をかけてしまったせいか、ピックアップ・ドライブメカは価格を考えると見劣りするものです。たぶんCD-α507と同じものだと思います。

メカベースは樹脂製。これ自体は悪いことではありませんが強度は十分とはいえません。クランパーのついたブリッジは、はめ込め式なので指で押すとグラついてしまいます。メカまわりは音質にも影響が大きいので定価を上げてでも、もう少し強度のあるものにして欲しかったです。
ピックアップはSONY製の「KSS-213B」で、スライド機構はギヤ式です。サーボ回路はデジタルサーボになっています。

といっても現在のCDプレーヤーはメカはコストダウンの対象(WEBやカタログでは強化しているようなことを言っていますが真っ赤なウソ)なので、CD-α607のメカの本体は現在の13〜17万クラスのSACDプレーヤーのものとほとんどかわりません。

トレイの後ろの部分には振動対策のために、H型にテフロンテープが貼ってあります。テフロンテープはコストが安いこともあって、サンスイ末期の製品には防振材として良く使われていました。試しにはがしてみましたが音は変わりません。
確かに薄いテープでも微細な振動は抑えられるかもしれませんが、音質に影響する振動を抑えるには、もう少し厚さや強度があり内部損失のあるものでないと難しいようです。
ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ・ドライブメカ

ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ KSS-213B


(出力端子・リモコン)
リアの出力端子はアナログは可変のみ。デジタルは光と同軸の2系統。残念ながらバランス出力はありません。
出力端子 リモコン


HDCD (High Definition Compatible Digital)
SAMPLER


1992年に発売されたHDCDのサンプラーCDです。現在もamazonなどで購入可能。

HDCDの開発者のひとり、キース・ジョンソンが経営しているリファレンス・レコーディングスが制作したもので、デューク・エリントン、マイルス・デイヴィス、ランドル・トンプソンなどの曲が収録されています。


スペック

周波数特性 4Hz〜20kHz±0.3dB
高調波歪率 0.0018%以下
ダイナミックレンジ 100dB以上
S/N比 116dB以上
消費電力 10W
サイズ 幅432×高さ111×奥行288mm
重量 8.0kg













SANSUI・サンスイ CD-α607 B級オーディオ・ファン