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Victor XL-V501

     1986年 定価59,800円



ビクターはCD(コンパクトディスク)に対抗する規格、AHD(Advanced High Density Disc)を推進していましたが、親会社だった松下電器(パナソニック)や、他のメーカーの支持をえられず孤立してしまいます。それでもAHDのプレーヤーを開発して発売しました。

しかし他のほとんどのメーカーは、1982年10月のCD発売に合わせて、CDプレーヤーの開発を行っており、ビクターも方針を変更してCDプレーヤーを発売することになります。
ただ開発は間に合わなかったため、Lo-D DAD-1000のOEM供給を受けて、XL-V1として発売しました。

CDプレーヤーの開発は、当初はライバルメーカーの後塵を期したものの、もともと技術力の高いメーカーです。1986年発売のXL-V1100(150,000円)は、各社のフラグシップに十分対抗できる実力を持ち、XL-V501(59,800円)は、ライバル機をも凌駕する内容を持っていました。


XL-V501は「高音質&多機能」をコンセプトに開発され、1986年11月に発売されました。

型番としてはXL-V500(1984年・138,000円)の後継機ですが、XL-V500は回路の集積化が進む前の「第2.5世代」のプレーヤーです。
価格の差は8万円もありますが、CDプレーヤーの進歩がとても早い時代だったので、XL-V501のほうがピックアップ、メカ、サーボ回路、DAC、デジタルフィルターなど1〜2世代進んだものを搭載しています。

この1986年の「598」(59,800円)クラスには、前年のmarantz CD-34の大ヒツトを受けて、各社から続々と新商品が送り込まれました。

ライバル機は59,800円の価格だけでも、SONY CDP-55、YAMAHA CDX-700、DENON DCD-900、Technics SL-P520、KENWOOD DP-990D、ONKYO Integra C-300X、Pioneer PD-7030、Lo-D DA-401、LUXMAN D-102、marantz CD75などがあり、これ以外にも64,800円や55,000円といった価格のCDプレーヤーも、当然ライバルとなるため、まさに激戦地帯でした。
1986年の59800円クラスのCDプレーヤーの比較


そんな中、XL-V501はFMfanのダイナミック大賞を、獲得するなど高い評価を得ました。またセールス的にも好調だったそうです。海外にも「JVC XL-V550」という名前で輸出が行われています。



XL-V501はVictorのCDプレーヤーとして、初めてオプティカリンク(光伝送)を搭載しました。
光伝送は1985年にONKYOが、Integra C-700(138,000円)に初めて搭載した回路で、電気信号を光に変換して伝送するというものです。これによりデジタル回路とオーディオ回路を電気的に分離し、オーディオ回路への、デジタルノイズの侵入を遮断するというものでした。

D/Aコンバーターは、16bitのバーブラウン「PCM54HP」を搭載。オーバーサンプリング(2倍)の、デジタルフィルターを装備していました。

ピックアップは応答速度を向上させた、ハイプレシジョン3ビームピックアップを搭載。
メカは制振材のベースと、インシュレーションラバーを組み合わせた「ISメカ」により、外部振動を遮断しています。
また、シャーシの底板には、格子状のラジアルベースを装備して、振動を抑えるとともに、ウェイトバランスの適正化をはかっています。

ヘッドフォンのボリュームは電動ボリュームです。1986年は89,800円クラスのCDプレーヤーでも、電動ボリュームを搭載したモデルは少なかったのですが、1987年になるとXL-V501に刺激を受けたのか、電動ボリュームの搭載機が一気に増えます。


1985年の「598」クラスというと、「最高の物を最低の価格で」というマランツの戦略モデル CD-34を除けば、内容はメカもシャーシも回路も、お金をかけていないエントリークラス。音もCDが聴ければ良いという感じがありました。

その翌年に発売されたXL-V501は、オプティカリンク(光伝送)やISメカなどの新しい技術に加えて、多彩なプログラム機能を持ち、音質も大きく向上しました。

そして、このXL-V501の発売直後から日本は「バブル時代」に突入。CDプレーヤーにはさらに物量が投入されていきます。そんな中、Victorはその後も「598」クラスで、ヒット作を連発。高い評価を得ていきます。



(音質について)
中音域重視の明るめのサウンドです。低音は出ますが、それほど押し出しは強くありません。高音の艶はビクターサウンドそのもの。解像度や透明感、それにレンジといったものは、PCM54HPのシングルDACですので、物足りなさは出てきます。

ジャンルとしは当時大ブームだったロックやJPOPを意識していますが、ちゃんとクラシックやジャズも聴けます。
いわゆるオールラウンダーですが、バランスはなかなか良く、総合的には上級機のXL-Z701に肉薄する部分もあり、ONKYO C-701Xよりも音が良いです。当時の「598」モデルとしては、かなりレベルが高かったのではないかと思います。



(フロントパネル)
それまでのVictorのCDプレーヤーとは違う、全く新しいデザインとなりました。
兄貴分のXL-Z701とも共通のデザインで、トレイのラインや飾りビス、ディスプレィ表示などが違うだけです。またこのデザインは後継機のXL-Z501、XL-Z511にも引き継がれて行きます。

ディスプレィは「マルチモード・デイスプレイ」と呼ばれるもので、ミュージックカレンダーは20個。数字が大きく見やすいです。
トレイの上には赤色のオプティカルリンク(光伝送)のインジケーターがあります。

メインの操作キーはディスプレの下にあり、10キーとプログラム機能はディスプレィ右側と、わかりやすく操作はしやすい配置です。

プログラム機能はイントロスキャン、ランダムプレイ、オールリピート、A→Bリピートなど、このクラスでも多彩な機能を持っていました。





(シャーシと内部について)
シャーシーは鋼板製で、メカ側にシャーシの重心が偏るのを防ぐため、基板側にラジアルベースを装備しています。

ラジアルベースは格子パターンのプレスが入った鋼板で、厚さは2mm、重さは870g。底板にネジ留めされています。これにより振動を抑えるとともに、重心を下げて安定化をはかり、ウェイトバランスをセンターにする役目を持っています。インシュレーターは中空のプラスチック製です。

このラジアルベースのおかげで、ライバル機がみんな4kg台の重量だったのに対し、5.5kgと重さを稼いでいます。しかし上には上がいるもので、ONKYOのIntegra C-300Xは何と7.0kg。しかしこれも重さが2kg以上もある「Xスタビライザー」を取り付けているためです。

内部は左側がメカと電源トランス。右側のメイン基板は手前がサーボ、信号処理、システムコントロール回路などのデジタル回路。奥は左側に電源回路、右側がオーディオ回路です。

天板 底板

インシュレーター

動画の音はビデオカメラの内蔵マイクで録音しているため、音質は良くありません。



(電源回路)
電源トランスはゼブラ製でコアサイズが55mmX47mmX24mm。アナログとデジタルの別巻線で、容量は19VAと余裕があります。

電源回路も独立電源となっています。使われているコンデンサは、ELNA製の25V・4700μF 2本やスチロールコンデンサなどが使われています。
電源コードは細い並行コードです。

電源トランス 電源回路



(デジタル回路 サーボ・信号処理・システムコントロール)
デジタル回路のメインは、YAMAHA製のチップ「YM3805」です。YM3805にはサーボ制御の回路と、復調や誤り訂正などの信号処理回路が、1パッケージに収められています。

誤り訂正のSRAMは 富士通製の8bit ハイスピード・CMOSスタティックRAM「MB8416A-15」が使われています。
システムコントロール用のマイコンは、「HD614080SB02」です。他に
デジタル回路 左:YAMAHA YM3805
右:富士通 MB8416A-15

サーボ調整用のボリューム

トラッキング・ゲイン(T.E. GAIN ADJ)、トラッキング・オフセット(T.E. OFFSET ADJ)、フォーカス・オフセット(F.E.. OFFSET ADJ)、キック・ゲイン(K. GAIN ADJ)の4つ。



(DAC・オーディオ回路)
D/Aコンバーターは16bitのバーブラウン「PCM54HP」を搭載。オーバーサンプリング(2倍)の、NPC製のデジタルフィルター「SM5806P」を装備していました。

DACの「PCM54HP」はラダー抵抗型のDACで、全高調波歪率-92dB、ダイナミックレンジ96dBというスペックを持ち、直線性精度が高く低ノイズであったため、多くのCDプレーヤーに搭載されました。XL-V501では放熱板を取り付けて安定度を高めています。

このPCM54HPはシングルDACのため、マルチプレクサ「BU4053」でスイッチングし、左右のチャンネルに信号を振り分けています。

デジタルフィルターの「SM5806P」は、35次X2のFIR型フィルターで、CDの44.1kHzの倍となる88.2kHzでサンプリングを行い、高調波ノイズを可聴帯域外にシフト。24.1kHzで従来もよりもノイズの減衰量を約30dB改善しています。

デジタル回路とオーディオ回路の間にあるのが、オプティカルリンク(光伝送)です。デジタル回路からの信号はHP製の高速フォトカプラ「6N137」によって、光に変換することで、デジタルノイズを除去しています。

他にサンプルホールド、デグリッチ、ローパスフィルター、デエンファシス、ラインアンプ、ミューティングなどの回路があります。

オーディオ回路のコンデンサは、スチロールコンデンサが多く使われています。電解コンデンサは日本ケミコンのオーディオ用「AWD」。オペアンプはJRC「5532S」が使われています。

オーディオ回路 上:DAC バーブラウン
PCM54HP
下:デジタルフィルター
NPC SM5806P

マルチプレクサ
ROHM BU4053B
高速フォトカプラ
HP 6N137



(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカはVictor独自の、IS(Independent Suspension)メカニズムです。

底板に制振材を張ってメカのベース部とし、その上に大型のインシュレーション・ラバーを装着。メカとピックアップが載ったメカベース(メカシャーシ)を、4点支持でフローティングしています。

ピックアップは自社製の「OPTIMA-2」を搭載。このピックアップは3ビームのハイプレシジョンタイプで、追随性、応答性が優れています。
ピックアップのスライド機構はラック&ピニオンのギヤ式ですが、スレッドモーターとギヤの間にゴムベルトを使用し、モーターの振動がピックアップに伝わらないようにしています。


(メカのメンテナンス・修理)
スライド機構のゴムベルトは簡単に交換ができますが、トレイ開閉用のゴムベルトの交換は面倒です。

まず、ストッパーのネジを外してトレイをメカから引き抜きます。次にメカをシャーシから取り外します。メカの裏側にあるギヤをバラして、新しいゴムベルトをプーリーに巻き付け、ベルトの反対側を穴から出して、モーターのプーリーに巻き付けます。(細いベルトならギヤをバラさずに、ギヤに噛ませて中に入れることもできます。)

インシュレーション・ラバーは製造から20年以上がたち、硬化の症状も出てきますので、ゴムの保護剤などでメンテナンスをしたほうが良いかと思います。

ピックアップ「OPTIMA-2」のレーザー出力のボリュームは裏側にあります。

ピックアップ・ドライブメカ ピックアップ・ドライブメカ

ピックアップ OPTIMA-2 制振材ベースと
インシュレーション・ラバー

トレイ開閉用のゴムベルト



(出力端子)
リアパネルのアナログ出力は、固定と可変の2系統。また他の機器とのシンクロ用の接続端子やGND端子があります。デジタル出力端子は装備されていません。
リモコンの型番はRM-SX701。

左からアナログ端子、シンクロ端子、GND端子


上: XL-V501(1986年11月発売)
下: XL-Z701(1987年3月発売)

Victor XL-V501のスペック

周波数特性 2Hz〜20kHz
全高調波歪率 0.0035%
ダイナミックレンジ 97dB
S/N比 100dB
消費電力 12W
サイズ 幅435×高さ100×奥行300mm
重量 5.5kg (実測重量 5.5kg)




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