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S.M.S.L. SA-36A PRO





SA-36A PROは、中国のS.M.S.L.社(Shenzhen ShuangMuSanLin Electronics Co., Ltd)のデジタルアンプです。
S.M.S.L.社はデジタルアンプやUSB-DACなどを生産しているメーカーで、他にはホームオーディオやカーオーディオなども手掛けています。

SA-36A PROは小型デジタルアンプとしは、スタンダードとも言える商品で、日本でも通販サイトを中心にたくさんの取扱店があります。

発売されたころの価格は3,480円~6,280円ぐらいでしたが、その後は中国の生産コストの上昇などで、4,500円~8,000円台の価格になりました。


S.M.S.L.は2009年にTripath(トライパス)社の、「TA2020」を搭載したデジタルアンプ「SA-36」を発売。これを改良したのが有名な「SA-36A」で、2010年ごろに発売されました。

日本ではSA-36も輸入されていましたが、当時はTOPPINGのデジタルアンプが人気で、知る人ぞ知るという感じの存在でした。SA-36Aが発売されるとTOPPINGよりも価格が安く、しかも音が良いということで、人気となりヒット商品となりました。


SA-36A PROは2014年に発売されたSA-36Aの後継機で、デジタルアンプICのTripath(トライパス)社の「TA2020」が生産中止となったため、Ti社の「TDA3118D2」に変更したモデルです。

商品名は「PRO」が付いただけで、外見も変わらないので、マイナーチェンジのように見えますが、基板・回路ともに新設計で、アルプス製ボリュームやEPCOSやパナソニック製のコンデンサなどのパーツが使用されていました。

2015年にはリニューアルが行われ、デジタルアンプICをST社の「TDA7492PE」に変更し、内部の回路も一新されました。問題になっていた電源のON/OFF時のポップノイズも、ほとんど気にならないくらい低減されています。
電源は12V~15Vに変更(2014年モデルは12V~24V)されています。

出力は21W+21W(4Ω)。最近は小型のデジタルアンプでも、出力が100Wを超えるものが出てきていますが、小型スピーカーをドライブさせるにはSA-36A PROでも十分です。


ただ、この2015年モデル。スペックは変わっていないものの、中味は2014年モデルよりも、かなりパーツを減らしており、コストダウンをしたことがわかります。

中国ではデジタルアンプやUSB-DACを、生産しているメーカーがたくさんあり、競争もかなり激しいようです。

ニュースにも良く出てくる通り、中国では年々、人件費やパーツ代が値上がりしており、製造コストが上昇しています。今回の2015年モデルもそれを考慮した設計なのかもしれません。

SA-36A PROの日本での販売価格は、発売時よりも上昇していますが、中国での卸価格は145元(約2,300円)ぐらいだそうです。


2016年に新たにSA-36A Plusが発売されました。デジタルアンプICはTI製の「TPA3118」を搭載しています。

機能面では電子ボリュームとEQモードの搭載。Bluetoothでパソコンやスマホと接続できるため、ワイヤレス再生が可能(ラインケーブルが不要)。USBフラッシュドライブ(USBメモリ)とTFカードに対応など、大幅に変化しました。

その代わり、内部のオーディオ回路(プリ部、出力部)と電源部は、大幅な簡素化とコストダウンが行われています。
「SA-36」の名前が付いていますが全く別物であり、アンプの中身のグレードは2ランクぐらい下になります。



(音質について)
所有しているSA-36A PROは、「TDA7492PE」を搭載した2015年モデルです。

音質はSA-36Aから大きくかわり、音が「かたく」なりました。いろいろなUSB-DACやCDプレーヤーを接続してみましたが、みんな一様に「かたい音」です。つまりこれがこのアンプの「キャラクター」です。

デジタルアンプの音について、よくネットの書き込みでは「無色透明」と書かれますが、実際にはそんなことはありません。

SA-36Aと比べると音のメリハリが強く「ドンシャリ」なので、オーディオ経験の浅い人が聴くと、こちらのほうが良い音に聞えるかもしれません。
高音と低音が出ているため、中音が引っ込み気味で音楽全体のバランスが悪いのと、高音で音の輪郭はハッキリさせているものの、細かい音や小さい音がつぶれてしまっています。

総合的にはSA-36Aよりも1ランク~1.5ランクぐらい音質は落ちています。ただ「ドンシャリ」はオーディオ経験者には嫌われる音ですが、ロックやJPOP、アニソンなどの曲には向いていますし、安価なスピーカーを使っている場合、ドンシャリのほうが相性が良くなる場合もあります。


その他のデジアンでは、Lepai LP-2020A+と比べると解像度が高くレンジも広く、音は断然こちらのほうが良いです。

TOPPING TP21と比べると、レンジが狭く平面的な音です。音がやせておりキレがありません。解像度も落ちます。また高音の伸びや低音の量感でも劣ります。



(フロントパネルとリアパネル)
フロントパネルは6mm厚のアルミ材を使用しています。電源ボタンとボリュームのツマミがあるだけで、スイッチを入れるボリュームの周りが青く光るという、中華アンプのお決まりのデザインです。カラーはシルバー、ゴールド、ブラックの3種類です。

リアパネルのRCA端子は金メッキ。スピーカー端子は安物(TOPPING TP21と同じ物)です。スピーカーケーブルを通す穴が小さいので、細いケーブルしか使えません。また端子の間隔が狭いので取り付け作業がやりにくいです。実質的にはバナナプラグ専用と考えたほうがよいと思います。

DCインは12V~15Vでセンタープラスです。

フロントパネル リアパネル





(ケースや内部について)
ケース本体はTOPPING TP21よりも、ひと回り小さいです。アルミ製で2分割のBOX構造。基板はスライドさせて差し込み、フロントとリアパネルを使って固定する方式です。

ケースは強度の向上と振動防止のために天板と底板にリブが入っています。底面には小さなゴム足が付いています。

なお、SA-36A PROに使われているネジは、トルクス(ヘックスローブ)なので、専用のドライバーが必要となります。サイズはT10。

ケース本体 ケースの底部


左:SA-36A PRO  右:SA-36A



(SA-36A PRO 2015モデルの内部について)
SA-36APROの2015年モデルは、「いったい何が起こったのか?」という感じで、SA-36Aや2014年モデルのSA-36A PROと比べると、中味はスカスカです。

2015年モデルが発売された時は、SA-36Aとあまり値段が変わらなかったので、「シュリンクフレーション」とも言えましたが、現在の販売価格は4,500円ぐらいに上がっているので、「価格はインフレ・中味はデフレ」になってしまいました。

この結果、オークションなどではSA-36Aが、昔の販売価格よりも高い価格で、取引されることになりました。

今から考えれば、これがS.M.S.Lの「手抜き設計」の始まりで、一部のモデルを除いて、現在まで行われています。


SA-36A PROの2015年モデルは、パーツ数が大幅に減っただけでなく、パーツもグレードを落としている感じです。

またSA-36Aと比べると入力部、電源部やローパスフィルターの回路を簡略化して、パーツのグレードを下げており、後継機というよりは1~1.5クラス下のモデルと言えます。


デジタルアンプICは2014年モデルはTI社の「TPA3118D2」で、2015年モデルはSTマイクロ製の「TDA7492PE」に変更になっています。

動作電圧(ACアダプタ)も2015年モデルは、12~15Vに引き下げられています。「TDA7492PE」の入力電圧は26Vまであるので、回路がそのままであれば、12~24Vのままでいけたハズです。

つまりデジタルアンプIC以外のパーツは、耐圧の低いパーツのほうがコストが安いので、コストをケチるために耐圧が下げたとも考えられます。
ただしアンプでは電源の余裕度が下がれば、ほぼ間違いなく音質が悪化します。

そういうこともあって、最大出力は2014年モデルの25W+25W(4Ω)から、21W+21W(4Ω)に落ちています。


デジタルアンプICのSTマイクロ「TDA7492PE」は、PWM(Pulse Width Modulation)方式の増幅回路の他に、スタンバイやミュート機能、過電流や過熱抑制などの保護回路が搭載されています。

ブロック図などの資料を見る限り、オーソドックスなデジタルアンプのようです。最大出力は4Ωで57W+57Wとなっています。

その他のパーツは、S.M.S.L社のサイトによると、電源部の平滑コンデンサはパナソニック製で16V・4700μFが2本。
他にドイツのERO製のフィルムコンデンサや、PILKORやTDK-EPCOS製のフィルムコンデンサ、TDK製のパワーインダクタが使われていることになっています。


平滑コンデンサの4700μFという容量は、「TDA7492PE」のデータシートの推奨2200μF(バルクコンデンサ)よりもかなり大きいです。

スイッチONの状態で、ACアダプタを電源コンセントを抜いてみると、数秒間はスピーカーから音が出続けるので、電源の安定化には効果を発揮する容量かと思います。

平滑コンデンサを大容量にすることで、デジタルアンプICなどの動作が安定し、音質が向上することはToppingのデジタルアンプで、すでに実証されていたので、回路やパーツのコストダウンによる音質劣化を、これで少し解消する狙いがあったのかもしれません。

SA-36APRO 2015バージョンの基板

SA-36A(2013年)の基板

STマイクロ「TDA7492PE」 ローパスフィルターと
パナソニック製の電解コンデンサ

TDK-EPCOS製の
メタライズドフィルムコンデンサ
ボリューム


S.M.S.L.社のサイトによると、最新のSA-36A PROの出力は20W+20W(4Ω)、12W+12W(8Ω)と少し低下しました。

内部は平滑コンデンサが1本になり、フィルムコンデンサも変更されています。


S.M.S.L. SA-36A PROのスペック

最大出力 21W+21W(4Ω)
高調波歪率 0.03%
ダイナミックレンジ 103dB
スピーカー
インピーダンス
4Ω~8Ω
電源(ACアダプタ) 12V~15V センタープラス
サイズ 幅92mm×高さ43mm×奥行150mm
重量 500g





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