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オーディオ雑誌「DigiFi No.10」(2013年5月発売)の付録であるUSB-DAC付きヘッドホンアンプです。 「DigiFi No.7」(2012年8月発売)の付録、USB-DAC付きデジタルパワーアンプの評判が良かったことから、企画されたヘッドホンアンプで、設計は前回に続きOlasonicが行っています。 価格は前回のデジタルアンプが2,980円だったのに対し、今回はヘッドホンアンプにも関わらず3,300円と値上げになりました。それでも当時は、中国製のUSB-DAC付きヘッドホンアンプよりも、だいぶ安い価格でした。 DigiFi No.7と同じくUSB-DAC付きですが回路は新設計です。デジタルアンプICやLC回路などのパーツが無くなった分、電解コンデンサが大幅に増えました。しかも音質を考慮した結果だと思いますが。固体コンデンサをやめて、リードタイプの電解コンデンサになっています。 DACはバーブラウン「PCM2704C」で、DigiFi 7のデジタルパワーアンプに搭載されていた「PCM2704」の後継モデルですが、機能・スペックは変更なし。音質も変わりません。 というかUSBインターフェイス内蔵で安価なDACというと、このPCM2704シリーズぐらいしか選択肢が無いのでしかたありません。ちなみにPCM2704Cは16bit・DACなので、ハイレゾ再生はできません。 ヘッドホンアンプは専用のヘッドホンアンプICを使う場合と、オペアンプを使う場合がありますが、「DigiFi No.10」ではオペアンプ「NJM8080」によるアンプになっています。 発売前の記事ではアンプを差動回路にして、ノイズを約10分の1に低減しているなどと書いてありましたが、オペアンプ自体が差動増幅器ですし、オペアンプを使ったヘッドホンアンプなど何十年も前からあります。つまり普通のヘッドホンアンプなのです。 それをカッコ付けて記事にしていましたが、発売そうそうにヘッドホン端子から、ホワイトノイズが出るという問題が発覚しました。 ラインアウトの場合もオペアンプを使用したラインアンプによって出力をしています。ただこの場合はホワイトノイズは出ません。オペアンプは同じ「NJM8080」を使った差動増幅で、ヘッドホンアンプよりはゲインが小さいです。 この「ホワイトノイズ」問題を受けて、改造派や自作派の人たちを巻き込んで、ネットでは対策の方法や回路やパーツの変更案などで盛り上がりました。 電源部にはSCDS(Super Charged Drive System)電源回路となっているそうです。 いちおうOlasonic独自の回路ということになっていますが、回路の仕組み自体は、1970年代のオーディオアンプで、普通に使われていたものと同じです。 オーディオ業界の悪いクセで、コンデンサや抵抗の並びをちょっと変えただけで、新開発・新技術の「回路」になってしまいます。 ちなみに同様の効果を狙って、TOPPINGのTP21やTP30にも大きい容量のコンデンサが搭載されています。 ヘットホン用のボリュームは可変抵抗ではなくトグルスイッチです。これはPCM2704の電子ボリューム機能を利用して、USBインターフェイスを介して、パソコンのOSのシステムボリュームを動かして、音量を調整することができます。 この方法は一見すると合理的に見えますが、すでにUSB-DACを使用している人ならわかることですが、パソコン側の音量をMAXにした状態が一番良い音が出ます。 今回の方法では小さな音量で入ってる音源を、ヘッドホンアンプ側で一生懸命に増幅して、聴こえるレベルにするという、かえって音質的には良くない方法です。単にコストダウンのための方策です。 電解コンデンサは平滑用が、日本ケミコンの「SMQ」で16V・6800μF。バルクコンデンサは日本ケミコンの「SMG」。どちらも一般用のコンデンサで、オーディオ用ではありません。 入力端子はUSB端子(TYPE B)で、パソコンからオーディオ信号とバスパワー電源を取り込みます。電源はUSBバスパワーのみで、外部電源は利用できません。 出力端子はヘッドホン用がステレオミニ。ラインアウトはRCA端子です。 付録として入っているのはDACの基板、金属製の脚(支柱)と取り付け用のビスです。 対応OSはWindows XP/Vista/7/8で、Windows 10でもドライバーのインストールをしなくても、問題なく動きます。Mac OSは9.1/10.1 以降です。 デジタル版の雑誌は1,300円なので、付録は2,000円ということになります。2,000円にはヘッドホンアンプの設計費、パーツ代、組み立てコスト、物流費、それにOlasonicとステレオサウンドのマージンが載っている訳ですが、この内容をからすると格安の値段です。 とはいえ、ボリュームやホワイトノイズの問題など、逆にOlasonicのノウハウ不足が露呈してしまったアンプでもあります。 (音質について) 1.ヘットホンアンプ 音はレンジが狭く、解像度や透明感も物足りません。DACのPCM2704はUSBインターフェイスを内蔵しているため、もともとノイジーで音の良くないDACです。取り柄は安くて多機能なこと。 たぶん、このDAC自体の音の悪さが「ホワイトノイズ」問題と結び付いて騒ぎが大きくなったように思います。さらにヘットホンアンプは本当に簡単な回路で、別に高音質なパーツが使われている訳ではありません。何しろ2000円という価格なのですから。 ヘッドホンアンプとヘッドホン及びイヤホンは相性が出ることもあります。ましてや、このヘッドホンアンプでは、ボリュームを使用していないので、ヘッドホンやイヤホンのインピーダンスへの対応が、かえって難しい場合も出ると思います。 2.ラインアウト端子 単純にUSB-DACとしてのみ使う場合です。全体の傾向はヘッドホンアンプの場合と変わりません。DACのPCM2704の音の限界を感じてしまいます。 コンデンサやオペアンプの交換、外部電源化など、音質改善のための改造の余地はあるかもしれませんが、同じDACを使用したRATOC REX-A1648HA1も音は良くありません。 今、パソコンにヘッドホンやイヤホン、アクティブスピーカーを直付けしている場合は、このヘッドホンアンプを使うことで、音質は向上させることができます。 ただし、そこそこ高いヘッドホンやイヤホンを使っている場合は、もうちょっと音の良いヘッドホンアンプを使わないと、ヘッドホンやイヤホンの能力を100%発揮できないです。 ※このヘッドホンアンプはケースを付けなければ、基板だけの「裸」の状態ですので、パソコンからの放射ノイズの影響を受けやすく、ノイズが入ったり音質が悪化することもあるので、設置場所には注意が必要です。 |
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(基板・入出力端子について) | |||||||||||||||
基板は幅64mm×奥行94mmとかなり小さな基板です。 カップリングや定電源用のコンデンサが並んでいるので、パーツはそこそこ多いですが、D/A変換、ヘッドホンアンプともにシンプルな回路です。 ヘッドホンアンプだけでも、キチンとした回路を作れば、この基板がそれだけで、いっぱいになりますし、DACとローパスフィルタの場合はこの3倍ぐらいの面積が必要となります。 もっとも雑誌を抜けば2,000円ですので、いろいろと割り切らなければ、この価格にできません。 入力端子はUSB端子のみで、ライン入力はありません。出力はヘッドホン用がステレオミニ。ラインアウトはRCA端子です。電源はUSBのバスパワーに対応しています。 |
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回路の配置は手前右がヘッドホンアンプ。RCA端子の前がラインアンプ。基板の中心部にSCDS電源。その奥がD/A変換回路です。 | |||||||||||||||
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(DACについて) | |||||||||||||||
このヘッドホンアンプに使われているDACは、TI社製のバーブラウンのデルタシグマ型DACの「PCM2704C」です。 PCM2704は16bit・DACで、サンプリング周波数は32/44.1/48kHzに対応しています。 特徴としては、USBインターフェース(コントローラ)を内蔵していることです。このためインターフェース用のICが不要となります。 また電圧レギュレータも内蔵しているので、電源をUSBのバスパワーから供給を受けて稼働できます。 その他にもクロックを引き上げるPLL回路や、S/PDIFのエンコーダーとデコーダーを搭載しており、DACというよりも多機能チップになっています。 そのかわりデジタルフィルターは、2倍オーバーサンプリングです。今どき普通のDACでも8倍は欲しいのですが、ノイズがバリバリでるUSBインターフェースを内蔵しているのに、これでは完全に役不足です。 「PCM2704」は音質よりも機能を統合することで、いくつも必要なパーツを1個にまとめて、コストダウンを図るためのチップです。 パーツ卸の価格が1個3.3~3.5ドルぐらいだそうですから、今回は付録ということで大量発注しているハズなので、もう少し単価が安いと思います。 DACのスペックを見るとS/N比とダイナミックレンジが98dBと、オーディオ用のDACとしてはかなり悪いです。実際の音はスペック以上に悪いという感じです。 |
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入力信号 | 16bit 44.1kHz/48kHz |
ヘッドホン出力 | 13mW+13mW(300Ω) |
サイズ | 幅64×高さ38×奥行94mm (支柱含む) |
重量 | 59g |
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