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KENWOOD LS-1001(LS-300G) |
1993年 ペア60,000円 |
LS-1001はもともとはKENWOODのミニコンポ「K'sシリーズ」のスピーカーとして、作られたもので、「LS-300G」の型番で単品でも発売されました。 LS-300Gは音質が評価され、FMファンのダイナミック大賞の優秀推薦機にも選ばれています。 1990年代に入りバブル崩壊とともに、ピュアオーディオ用のコンポの需要は激減し、新商品はガクッと減りますが、その代わり活気づいたのがミニコンポでした。1991年のFMファン・No.7でも特集が組まれており、この年の春に発売された41モデル(セット)の紹介が行われています。 ミニコンポの需要が増した背景には、ちょうど団塊ジュニアが大学生や高校生になる時期に迎えたことや、バブル期にマンション住まいが増えたことなどがあると思います。 当時のミニコンポのセットでは、アンプとチューナー、CDプレーヤー、カセットデッキ、それにスピーカーの5点を組み合わせて、7万円台というものもありますが、各社のラインナップのポイントとしてはいわゆる「高級化」で、「コンパクト・ハイファイコンポ」(ハイコンポ)とも呼ばれました。 KENWOODが「ハイクオリティコンポ」として登場させたのが「K'sシリーズ」です。 このミニコンポの高級化のさきがけとなったのが、ONKYOの「Liverpool」シリーズです。セットの合計価格が30万円を超えるなど、初級用コンポの組み合わせよりも高かった訳ですが、単品でも十分なクオリティがあり、特にスピーカーの「D-200」「D-200Ⅱ」は大ヒットとなりました。 ミニコンポの場合、アンプやCDプレーヤーなどはサイズの制約から、どうしてもフルサイズのコンポに比べて、電源部や増幅回路などをコンパクトにせざるをえず、音質の上でもハンデとなります。 スピーカーはそのような制約がないため、Victor SX-F3(Fシリーズ)など、単品としても優秀なスピーカーが登場しました。 LS-1001が「LS-300G」として、単品発売されたのは1993年11月です。 ライバル機はDENON SC-E232、DIATONE DS-200Z、ONKYO D-202A、Victor SX-300、YAMAHA NS-10MX。海外勢ではCelestion5MK2、infinity Reference10、JBL LX300、ロジャース Studio3、ワーフェデール Diamond5などです。 小型スピーカーブームが始まった頃のため、特に国産機には強力なモデルが揃っていました。 LS-1001はウーファーの振動板にはパルプを使用し、剛性対策としてコルゲーションリブが付けられています。防磁仕様の大型マグネットが採用され、フレームは強固なアルミダイキャストとなっています。 トゥイーターは、ポリエステル系の素材にコーティングをしたソフトドームで、ダンパーに磁性流体を使用した、ワイドレンジのユニットを搭載しています。このトゥイーターとウーファーは、近接配置されており点音源化をしています。 キャビネットはフロントバッフルが、多重塗装をしたMDF(現在の規格でいうとパーティクルボードに近い)です。仕上げはウォルナット。製造は内部のユニットも含めて日本製です。 LS-1001はウーファーのパルプコーンや、アルミダイキャストフレームの採用、2枚重ねのバッフルなど、細かい部分でもこだわりが随所に見えるスピーカーで、とてもミニコンポ用に開発したスピーカーとは思えないません。 この頃の「K'sシリーズ」はアンプ・スピーカー・CDデッキ・カセットデッキ・チュナーのセットだと合計金額は23万円以上。大学卒の初任給よりもかなり高いものでした。 中味や音質からいうと、たぶん単品発売は当初から予定のうちで、どちらかというと単品で開発していたものを、ミニコンポと組み合わせたという感じです。 また、やわらかめな音は当時のクラシック用スピーカー、ONKYO D-202「cafe classics」や、SONY SS-A3「La Voce」、そしてYAMAHA NS-1「classics」などを意識したものかもしれません。 LS-1001は実際には使い勝手や音質の面でも、ミニコンポには向いていません。まずポン置きでは「まともな音」が出ませんし、リヤバスレフの背圧(低音)が大きいので、壁から離して使わないといけません。 また出力音圧が82dBと能率が低いので、アンプのボリュームを9時以上まで、もっていかないと本来の音が出ません。夜に小音量で聴くのも不向きです。 確かに内容の割にはオークションや中古の価格は安いですが、セッティングをキチンとしないとちゃんとした音が出ないなど、使いこなしは簡単ではありません。 またネットではLS-1001(LS-300G)の改造記事が多いですが、裏を返せばそれだけこのスピーカーの音が気に入らなかったり、自分に合わない音である訳です。たぶん、ほとんどの人は「やわらかい音」ということを理解せずに、買っているかと思いますが、万人うけのするような音ではありません。 |
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(音質について) LS-1001の音はやわらかめ。いわゆるソフトなサウンド。解像度はそれほど高くなく、ゆったりした音です。ハイスピードのFOSTEX GX100と比べると、「半テンポ」遅いんじゃないかと思えるくらいです。 もうひとつの持ち味は豊かな低音ですが、これをキチンと出すためには壁面からの距離(最低50~60cm)が必要です。壁面に近すぎると全体的にこもったような音となったり、低音がボワついたりします。 こういう場合の対策としてはバスレフダクトに詰め物をして、背圧をコントロールします。やってみると確かに高音のキレが出て、中音も落ち着きますが、その一方で低音の量感は少なくなってしまいます。いわゆるトレードオフ。 高音は少しキャラクタがあるので、好き嫌いが出る場合もあるかもしれません。 定位はナチュラル。音場は前に出てくることはなく、奥行が深いタイプ。ただしセッティングによってかなり左右されます。 ジャンルとしては、女性ボーカルやクラシック向きの音です。ロックやJPOP、アニソンなどには向きません。 ジャズも聴けなくはないですが、ソースによってはこの「やわらかさ」により、ちょっと苦しい部分がでます。 JBL系のジャズの音が好きであれば、まず合わないと思います。ジャズを聴くのであれば、他に良いスピーカーがいくらでもあるので、これを選ぶ必要はないと思います。 LS-1001はオーディオ的には音数も少ないですし、艶はハデさがなくしっとりとした感じいうことで、いろいろと不満が出そうな音です。 音楽(ボーカルやクラッシック)を聴くという観点からいうと、出しゃばったところがなく、ゆったりと耳障り良く聴けるスピーカーだと思います。どちらかというと「表現」を楽しむタイプです。 (セッティングについて) LS-1001は確かにポテンシャルを持っているスピーカーですが、セッティングができる人でも、少し手こずるぐらい「追い込み」が必要なスピーカーです。 そしてキャビネットはけっこう振動するので、しっかりとしたスピーカー台とインシュレーターの使用は必須です。 リヤのバスレフダクトからの背圧が大きいので、壁面から50~60cmぐらい(壁面の材質によって違くなります)離して使うのがベター。このくらい離すとマスキング効果がなくなり、高音のキレが増して中音も落ち着いてきます。壁に近すぎると全体的にこもったような音となり、低音がボワついたりします。 壁面からのスペースに加えて、左右のスピーカーの間隔も最低1mは必要で、このくらいのスペースがセッティングを始めるにあたってのベースライン。簡単に言えば広い部屋向きのスピーカーです。 壁面からの距離がとれない場合は、バスレフダクトに詰め物をして、背圧をコントロールということになりますが、詰め物の材質でも高音の解像度や艶、低音の締まりなどがかなり変わります。 壁面までの距離を20cmにして、スポンジ(100円ショップ)、紙(ティッシュ)、木綿の布地(古下着)、フェルト(100円ショップ)で試してみると、スポンジは低音の締まりは良いのですが、高音の伸びが足りません。ティッシュは薄いために音の透過性が良く、5枚以上重ねて使わないと低音の締まりが出てきません。 意外とよかったのが、古下着の木綿の布地を少なめに使う方法。低音の締まりも出て高音の伸びや艶も良いです。フェルトはスピーカーの内部の吸音材にも使われたりしますが、音を吸い過ぎてしまい、高音も低音もあまり良くありませんでした。 当然、どの素材もダクトに入れる量で音が変わるので、楽しみながら自分にあった音にチューニングすれば良いと思います。 またネットで多くの人がやっているように、キャビネットの中に吸音材を入れる場合も、吸音材の材質や量、入れ方によって音は変わってしまうので、このスピーカーの本来の音を出すのは難しいと思います。 |
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(2.8cmドーム・トゥイーター) ポリエステル系の素材にウレタン・コーティングをしたソフトドーム・トゥイーターで、再生周波数帯域は600Hz~30kHzと低域側にレンジが広いユニットです。 型番はT03-0475-03。 ユニットには磁性流体が使われています。磁性流体はNASAが開発したもので、磁性超微粒子が液体に混ざったものです。 スピーカーでのメインの役割はダンパーですが、それ以外にも放熱の効率アップや高周波歪みの改善、周波数特性の改善などの効果があります。 オークションなどを見ていると、トゥイーターのところから液体が染み出たような跡があるものがありますが、これは要注意。シールが劣化して磁性流体が流れ出ると、トゥイーターの本来の音は出ません。 |
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(15cmコーン・ウーファー) 振動板はパルプにダンプ材を塗布したノンプレスコーンで、分割振動領域でも大きなピークやディップ(一時的な下降)が生じにくいというものです。 このウーファーの特徴はコルゲーションリブが付けられていること。これはコーンの剛性を上げるための技術で、1970年代のスピーカーでは良く使われていた技術です。 1980年代に入ると含浸剤の改良で強度が上がったり、振動板の素材自体がパルプ以外に変更されたため、あまり見られなくなります。たぶんLS-1001では何としてもパルプを使いたかったのではないかと思います。 フレームはアルミダイキャストで、マグネットは直径90mmと大型。キャンセルマグネットが付いた防磁仕様となっています。 センターキャップは逆ドーム型で、エッジはゴム製です。ユニットの型番はT10-0598-03。 |
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(ネットワーク回路) シンプルながら位相特性に優れ、緩やかなカーブの-6dB/octのネットワークです。クロスオーバー周波数は1.5kHz。 空芯コイルは大型で容量2.8mH。コンデンサはユニコン(UNICON)製の、ハイファイスピーカー・ネットワーク専用コンデンサの「Bi-POLAR」。セメント抵抗は磐城無線製の20SG・7.4ΩK。 セメント抵抗は音が悪いという人がいますが、確かに金属箔抵抗などよりも、高い周波数でのインピーダンス特性が悪いです。 でもメーカーはその特性(高域のピーク)をうまく使って、高音の「艶」を表現するなどのチューニングを行って、スピーカーの個性を作っている訳です。同様に電解コンデンサは、良くないとかいう人もいますがこれも同じことです。 ネットワークは単純な回路ですが、単なる「ローパス」「ハイパス」だけではない奥が広い世界です。 |
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(キャビネット) LS-1001(LS-300G)のカタログでは、鳴きが少なく響きの美しいMDFを使用となっていますが、当時は木材繊維の密度が低い物でもMDFと呼ばれていました。 現在の基準で言うとMDFを使用しているのは、フロントバッフルの一部だけで、他はパーティクルボードです。 フロントバッフルはパーティクルボードをベースに、ラウンド加工されたMDFを張り合わせています。独特の形状はバッフルの平面の面積を、少しでも不要な反射を少なくするために採用されたものです。 バッフルはMDFの1枚板というスピーカーが多いですが、密度の違う2枚の板を張り合わせることで、振動係数を変えて共振を防ぐという狙いがあるのかもしれません。張り合わせた部分の厚みは40mmです。 MDFの部分が黒いのは、塗装を7回行って塗料をMDFに含浸させているためです。これによりMDFを硬化させて強度を上げ、フロントバッフルの振動を抑えています。 リヤバッブルの厚さは21mmで、天板・底板・側板もそれぞれ21mmぐらいです。 吸音材はグラスウールで底板部分だけに貼られています。 |
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(入力端子) バナナプラグ対応でナット部分は生産時期により、プラスチック製と金属製があります。 付属品はスピーカーケーブルと写真のバナナプラグが8個。別売品は3点式のスピーカーベース「HBC-1001」、スピーカーケーブル「SPC-1001」(1m・2000円)など。 |
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トゥイーター | 2.8cm ソフトドーム |
ウーファー | 15cm コーン |
出力音圧レベル | 82d8 |
周波数特性 | 45Hz~30kHz |
クロスオーバー 周波数 |
1.5kHz |
許容入力 | 30W |
最大許容入力 | 60W |
インピーダンス | 8Ω |
サイズ | 幅210×高さ348×奥行308mm |
重量 | 7.8kg |
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