|
||
TOP > 使っているオーディオ > チューナー > Pioneer F-120 |
![]() |
Pioneer F-120 |
1982年 定価45,000円 |
Pioneer F-120は1982年10月に発売された、シンセサイザー方式のFM/AMチューナーです。 この頃は日本もいよいよアメリカのような、FM多局化時代が到来するといわれていた時で、周波数の近い局の相互干渉が心配されていました。 またビルの高層化などによるマルチパスの発生も問題になっており、各メーカーとも受信性能の向上と音質向上を目指して、チューナーの開発が行われていました。 1980年代に入るとバリコンチューナーに代わって、シンセサイザーチューナーが台頭してきます。シンセサイザー方式は1970年代は高価でしたが、1982年ごろには価格も下がり、売れ筋は3万円台となっていました。 ただ1982年のカタログブックを見ると、販売されている機種はシンセサイザーとバリコンが、ほぼ同数という感じ。シンセサイザーが増えたといっても、高級機はほとんどがバリコンチューナーで、性能や音質ではシンセサイザーよりもバリコンが上と考える人が多くいました。 Pioneer F-120は価格帯からいうと中級機の一番下のクラス。しかし受信性能などのスペックは6~7万円クラスのバリコンチューナー※と同じか、それを上回る部分もあり、音質もたいへん優れていたため、大ヒット商品となりました。 F-120の売り物はデジタル・ダイレクト(D.D.)デコーダーです。それまでのパルスカウント方式などで、すでにFM波をパルス変換(デジタル化)して処理するものはありましたが、D.D.デコーダーでは検波とステレオ復調をデジタルのまま行い、ノイズや歪みを大幅に改善しています。 特にステレオ復調の能力は、他社が採用するスイッチング方式のMPX回路よりも優秀で、高いチャンネルセバレーションを得ています。 フロントエンドはFM4連相当の「リニアフロントエンド」で、ツインバリキャップとパイオニア独自のバランスホールドコンデンサー方式により、高い受信性能を得ています。PLLシンセサイザー回路では、独自のパルススワロー方式により残留ノイズを低減しています。 IF部は歪率を抑えた音質重視の「WIDE」と、高選択度でクリアな受信ができる「NARROW」を選択できます。初段にはMOS FETをパラレルで使用して、高い利得とSN比を得ています。 MPX回路にはアクティブフィルターを採用して、コイルの使用をやめることで音質劣化を防いでいます。また銅箔スチロールコンデンサや、整流特性の良いファーストリカバリーダイオード、無酸素銅線の配線材など高音質のパーツを使用しています。 ※Pioneer F-120はD.D.デコーダーなどの回路によりSN比88db(ステレオ)、高調波歪率0.015%と、ほぼ同時期に発売されたTRIO KT-1100(73,800円のSN比85dB(ステレオ)、高調波歪率0.04%)を上回り、高級機のL-02(定価30万円)にも匹敵するスペックを持っていました。 同時期に発売されたチューナー・・・TRIO KT-1100(73,800円)、TRIO KT-990(53,800円)、SONY ST-S555ES(65,000円)、AUREX ST-S90(69,800円)、LUXMAN T-530(78,000円)など。 今から30年前の製品ですが、現在販売されているFM/AMチューナーは、昔で言えば初級クラスの内容。2015年に発売されたYAMAHA T-S1100を含めても、スペック的にはPioneer F-120に勝る製品はない状況です。 (Pioneer F-120のトラブル) 一番多いのは選局用のメモリーボタンが効かなくなるというトラブル。原因はメモリーボタンのタッチフィリーングをソフトにするために、タクトスイッチに取り付けられたスポンジが、経年変化によりボロボロになってしまうためです。 修理は簡単でフロントパネルを取り外し、劣化したスポンジを取り除いて、1~2mmほどの厚さの物を取り付けてやるだけです。厚紙をかさねても良いですし、100円ショップのフェルトを使えば、ソフトな押し心地になると思います。ウチではソリッドな押し心地にするため、プラ板を取り付けてあります。 ちなみにウチのF-120では周波数ズレは発生していません。 (受信や音質について) Pioneer F-120を購入した時は実家(東京23区内)暮らしで、FM用の3素子アンテナを建てて使用しました。23区内なので受信感度は申し分なかったのですが、近くにビルがあったため、バリコンチューナー時代はマルチパスに起因するノイズに悩まされていましたが、F-120によって一気に解消した思い出があります。 現在はアンテナが無いので、ケーブルテレビからFM放送を聴いています。ケーブルなので確かに信号の強度的には問題無いのですが、意外とセットトップボックスのノイズがケーブルを伝わって入ってきますし、何といってもケーブルにはFM放送以外に、多チャンネルのケーブルテレビの番組や、地デジやBS放送も流れています。 こうなるとアンテナで空中から電波をひろうのと同じで、感度や実行選択度や妨害排除能力が高いチューナーのほうが、音質的には有利かと思ったりしてします。 F-120は感度的にはフロンドエンドはFM4連バリコン相当で、7連バリコン搭載のTRIO KT-8000にはスペック的には劣りますが、信号の強度があるせいか受信能力については遜色は感じません。 音質的にはKT-8000よりもレンジが広く透明感のある音で、F-120のほうが勝っています。1970年代は感度の良いチューナー=音が良いというイメージがありましたが、やはり検波以降にD.D.デコーダーなどの新しい技術や、品質の良いパーツが投入されている結果かもしれません。 使う際にちょっと注意したいのは、電源コードの長さが約110cmと短いこと。高い場所に設置する場合には延長コードが必要になることもあります。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||
(フロントパネル) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||
フロントパネルにはFM/AMのバンド切り替えボタンとチューニング、IFバンド切り替え、ミューティング(モノラル)の各ボタンに加えて、カセットへ録音レベル信号を送るRECレベルチェックボタン。プリセットボタンは8個ですが、最大はFM8局+AM8局の計16局が可能です。 ディスプレィの表示はシンプルで、周波数以外はバンド表示、ステレオインジケーター、チューニングインジケーターともに、ただLEDが点灯するだけです。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||
(キャビネットと内部について) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
鋼板製の薄型キャビネットで、この時代としてはごく普通の作り。内部には少し大きめの電源トランスと大きな基板が1枚あるだけです。レイアウトは左から電源回路、MPX回路、IF・検波回路、フロントエンド・シンセサイザー回路です。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||
(電源回路) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
電源トランスは12VAで、チューナーに搭載されているトランスとしては、コアサイズが大きいと思います。整流特性の良いファーストリカバリーダイオードや、コンデンサは日本ケミコンのSMなどが使われています。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||
(システムコントロール) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
キー操作やプリセットメモリの管理、ディスプレィ表示などのシステムコントロールを行うのは、東芝製の3バンド対応チューニング用IC「TC9147AP」です。このICはコントロール信号の伝送をスタティックコントロールで行っており、伝送時に発生するノイズを抑えています。 周波数表示などを行うディスプレイ用のドライバーICは東芝「TD6301AP」。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||
(フロントエンド・PLLシンセサイザー回路) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
RF相互変調特性の向上を図った「リニアフロントエンド」と呼ばれる回路です。 同調素子のバリキャップは、周波数が高くなると飽和状態になりやすいという欠点を防ぐために、ツインバリキャップにして入力特性を改善。独自のバランスホールドコンデンサー方式と合わせて、高い受信性能を得ています。 RFアンプには、従来の素子に比べて特性を8dB高めたID MOS FETを採用。ミキサー(混合器)は、新開発の「FETバランスド・ミキサー回路」で、差動信号を入力できることで、安定度や妨害排除能力を高めています。 またアンテナ側の周波数と、ローカル側の発振周波数とのズレによる歪の発生をさせないために、トラッキングオシレーター回路を搭載しています。 PLLシンセサイザー回路は、パルススワロー方式を採用しています。パルススワロー方式は、プログラマブル可変分周器(プログラマブル・カウンタ)の前に、プリスケーラ(前置分周器)を配置することで、同調精度とスピードの両立しています。 クォーツを元に作った基準周波数は、可聴帯域外の25kHzに設定し、回路内の残留ノイズを解消してS/N比を改善しています。 PLLシンセサイザーで選局にあたる、プログラマブル・カウンタのコントロールなどは、東芝製の3バンドチューニング用IC「TC9147AP」に内臓されています。PLL回路用のプリスケーラは東芝「TD6104P」を使用しています。AMチューナーは三洋電機製の「LA1247」です。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||
(FM復調 IF・検波回路) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
IF部の初段アンプはMOS FETをパラレルで採用し、高い利得とSN比を得ています。IF帯域幅は歪率を抑えて音質重視の「WIDE」と、高選択度の受信ができる「NARROW」に切替えることができます。 検波部とMPX部はパイオニア独自の「D.D.(デジタル・ダイレクト)デコーダー」ですが、検波部は従来からのダブルコンバート方式を使ったパルスカウント検波で、IFの10.7MHzの周波数から1.26MHzの第2IF周波数に作り、矩形波(方形波)に変換してから検波を行っています。 使われているICはIFアンプ用ICがPioneer「PA3007」、D.D.デコーダーは「PA5006」。IF信号から1.26MHzに変換する周波数コンバート部には、クォーツ(水晶振動子)を使用した発振器を使用し、高い正確性と安定性を得ています。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||
(アンテナ端子・AMアンテナ・出力端子) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||
当時はアンテナの75Ω同軸ケーブルの接続で、まだF型コネクタの使用が一般的ではなかったため、下のようなコネクタ(F型接栓・3C2V用)が同梱されていました。他にはFM用のT字型アンテナが付属していました。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
FM | 受信周波数 | 76MHz~90MHz | |||
周波数特性 | 20Hz~15kHz +0.2-0.8dB | ||||
実用感度 | 0.95μV(IHF) 10.8dBf(新IHF) MONO・NARROW |
||||
SN比50dB感度 |
|
||||
全高調波歪率 | WIDE 0.0095%(MONO) 0.015%(ステレオ) NARROW 0.09%(MONO) 0.5%(ステレオ) |
||||
実効選択度 | WIDE 30dB(400kHz) NARROW 60dB(300kHz) |
||||
S/N比 | MONO 96dB ステレオ 88dB |
||||
ステレオ セパレーション |
WIDE 65dB(1kHz) 50dB(20Hz~10kHz) NARROW 40dB(1kHz) 40dB(20Hz~10kHz) |
||||
イメージ妨害比 | 80dB | ||||
IF妨害比 | 100dB | ||||
スプリアス妨害比 | 90dB | ||||
AM抑圧比 | 70dB | ||||
サブキャリア抑圧比 | 60dB | ||||
キャプチャーレシオ | WIDE 0.8dB NARROW 2.5dB |
||||
AM | 受信周波数 | 520kHz~1610kHz | |||
実用感度 | 55dBμ/m(ループアンテナ) | ||||
選択度 | 30dB | ||||
S/N比 | 50dB | ||||
イメージ妨害比 | 40dB | ||||
IF妨害比 | 65dB | ||||
消費電力 | 14W | ||||
サイズ | 幅420×高さ61×奥行317mm | ||||
重量 | 4.0kg |
TOP |
CDプレーヤー |
アンプ |
スピーカー |
カセットデッキ |
チューナー |
レコードプレーヤー |
PCオーディオ |
ケーブル |
アクセサリー |
歴史・年表 |
いろいろなCD |