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YAMAHA CDX-600
    1988年 定価59,800円



YAMAHAのCDX-600は1988年2月に発売されたCDプレイヤーで、前年に発売されたCDX-700(59,800円)の後継機となります。

CDX-600は上位モデルのCDX-800(69,800円)から、オーディオ回路とシャーシをグレードダウンしたCDプレーヤーです。CDX-800の内容はCDX-1000(89,800円)とほぼ同一ですので、CDX-600もCDX-1000をベースに開発されたモデルということになります。

当時の新製品は、秋のオーディオショウ~冬のボーナスシーズンの間に、発売されるのが当たり前でしたので、2月の発売というのは、もしかするとライバル機の内容を見て、急遽CDX-1000をベースに開発した物かもしれません。

この頃のCDプレーヤーは家電メーカー、オーディオメーカーの主力商品で、競争も激しい時代でした。さらにバブル時代ということで、1987年の「598」クラスには、かなりの物量が投入されており、一部の機種は1985年の15万円クラスの、KENWOOD DP-2000Pioneer PD-9010Xを上回る内容と音質を持っていました。

CDX-600のライバル機はSONY-CDP-227ESD、Technics SL-P770、Victpr XL-Z511、DENON DCD-1400、Pioneer PD-7070、SANSUICD-α607i、NEC CD-620など。→1987年の59,800円クラスのCDプレーヤーの比較


CDX-1000とCDX-600の大きな違いはDAC、ローパスフィルター、それにシャーシです。

CDX-1000とCDX-600は同じDAC、16bitのバーブラウンのPCM-56Pを、左右独立で搭載していますが、CDX-1000ではこれをフローティング動作させて、疑似的な18bit・DACとして駆動させています。またDACの後ろのローパスフィルターの部分も違います。デジタルフィルターは18bit・8倍オーバーサンプリングを搭載しています。

シャーシは金属と樹脂を組み合わせたハイブリッド・シャーシですが、CDX-1000は天板がアルミ、底板が肉厚の鋼板なのに対し、CDX-600は普通の鋼板と樹脂の組み合わせとなっています。

その他のアンチバイブレーション・フローティングサスペンションを使用したメカ、2WAYコンピューターサーボ回路、シャントレギュレーター電源、デジタルノイズ低減するための「カレント・アイソレーション」などは同じです。

機能の面でもローパスフィルターを通さずに、DACの音をそのまま出力できる「ハイビット・ダイレクトアウトスイッチ」を搭載しており、2スピードモニターサーチ、
インデックスサーチ、マニュアル/デリート/オートの3モードプログラム機能、4モードのリピート再生、タイマープレイ機能などは同じ。

CDX-1000は電子ボリュームを使用して、ヘットホン出力と外部出力の調整が可能でしたが、CDX-600は普通の可変抵抗を使用しており、外部出力は固定出力になっています。


何と言ってもベースが89,800円のCDX-1000ですので、このクラスでは4DACのTechnics SL-P770と共に、強力な物量機となっていました。特に電源部は強力で後継機のCDX-620では、半分ぐらいの内容にスペックダウンしています。



(音質について)
音色は上級機のCDX-1000と同じキャラクタ。まさに「YAMAHAビューティ」です。
高音は「きれいな音」で伸びがあります。

内容としてはCDX-1000とそれほど差はありませんが、音となるとランクが違います。解像度やレンジは1ランク落ちますし、細部の再生や全体の表現力にも差があります。

ハイビットダイレクトアウトにして聴き比べると、DACは同じPCM56Pとはいえ、CDX-1000の18bit駆動の威力を実感できます。

音楽のジャンルはジャズ、クラッシックにロックも聴けるという、オールラウンド指向。CDX-1000もオールラウンドですが、繊細さや演奏の表現力の再現に力を入れた音。それに対してCDX-600はメリハリ付けをハッキリとさせ、ロックやJPOPなどを気持ちよく聴けるサウンドとなっています。



(フロントパネル)
フロントパネルはCDX-1000を踏襲したデザインです。カラーはチタンとブラックの2色。

ほとんど同じですが、ヘッドホン用のボリュームが電子ボリュームから、普通の可変抵抗によるボリュームに変更されています。

レイアウトはディスプレィの右側にプレイ、ストップ、ポーズなどの操作ボタン。ディスプレィの下には10キー、スキップ、サーチやプログラム関係のボタンにヘッドフォン・可変出力兼用のボリューム。
トレイの下にはハイビット・ダイレクトスイッチやディスプレィ表示の切替ボタンなどがあります。


ハイビット
ダイレクトアウトスイッチ



(シャーシと内部について)
シャーシは鋼板とプラスチック(樹脂)による複合シャーシ(今風にいうとハイブリッドシャーシ)です。リアパネル以外はすべて2重構造となっています。

構造は磁気ひずみの低減するために、非磁性体の樹脂でBOXを作り、ここにメカや回路を納めます。その外側を鋼板製のコの字型の天板と底板。フロントのアルミバネルで囲むという構造です。天板と底板の厚みは1mmで、天板には防振材が取り付けられています。

また樹脂は内部損失があるため、外部からの振動を吸収したり振動係数を変えることで減衰できます。

内部は左側にメカと電源トランス。右側の基板は手前がデジタル回路。奥の左側が電源回路、右側がオーディオ回路。電源回路の上にはカバーのついたデジタル出力用の回路があります。

また、基板の上はケーブルがあちこちに走っていますが、これは基盤にパターン配線するよりも、配線を短くできるためです。


底板 天板





(電源回路)
電源トランスは別巻線のトランスで、CDX-1000よりもひと回り小型の物です。容量は26V・24VAで磁束漏れが起きないようにシールドケースに入っています。

電源回路はシャントレギュレータ方式で、電源に直列に定電流回路を挿入し、アンプ部などの近くには電圧を安定化させるトランジスタを並列に配置し、ノイズのカットとアースのクリーン化を実現しています。

また家庭用電源からのノイズの対策として、ACラインノイズフィルターとフェライトコアが装備されています。


電解コンデンサはこのクラスでは一般用が使われたりしますが、CDX-600ではオーディオ用のELNA DUOREX 25V・3300μFや、オーディオ回路用電源にはルビコンのブラックゲート 10V・1000μFなどが使われています。

容量はCDX-1000より減らされていますが、このクラスとしては十分な余裕を持った電源となっています。

電源コードは極性表示付きの細い並行コードです。

トランス 電源回路

ルビコン ブラックゲート ACラインノイズフィルターと
フェライトコア



(サーボ・信号処理回路)
サーボ回路は「早い」と「遅い」の2つの応答スピードを、自動的に切り替える「2wayコンピューターサーボ」を搭載しています。

これはCDの演奏時はキズや扁心に重点を置いた「ゆっくり」とした応答スピードとし、従来よりもトレース能力を向上。選曲やサーチの時には、サーボの応答スピードを早くして、高速アクセスを可能にしています。

使われているICは、サーボ制御とEFM誤り訂正などの信号処理が1チップに入っているYAMAHA製の「YM3616」、信号処理に必要なRAMはSANYO製の8bit・CMOSスタティックRAM「LC3517B-15」。デジタル出力用はYAMAHA製の「YM3613B」などです。

サーボ回路の調整用ボリュームは、トラッキング・ゲイン、トラッキング・オフセット、キック・ゲイン、フォーカス・ゲイン、フォーカス・オフセットです。

サーボ・信号処理回路 YAMAHA
YM3616
YAMAHA
YM3613B
SANYO
LC3517B-15



(DAC・オーデイオ回路)
D/Aコンバーターは、バーブラウンの16bit・DAC「PCM56P」のLランクを、左右独立で搭載しています。PCM56Pで音質が良いのは「Jランク」や「Kランク」で、Lランクはアルファベット順は後ろですが、音質ランクは低くなります。

このPCM56Pはグリッチノイズが発生しない、グリッチレスタイプのDACで積分DACなどに比べると、高速で精度の高いD/A変換が可能です。多くの機種に搭載された大ヒットDACです。

デジタルフィルターは18bit・8倍オーバーサンプリングの「YM3414」です。第1フィルターは225次、第2フィルターは41次、第3フィルターは21次の演算能力を持っています。

デジタル回路とオーディオ回路の間には光伝送に代わり、新開発のカレント・アイソレーションを採用しています。
これはオーディオ信号を電流信号に変換しての伝送とフィードバック回路により、デジタルノイズやリップルがオーディオ回路に混入しないようになっています。

電解コンデンサは上記のように、DAC・オーディオ回路の電源用にルビコンのブラックゲート。出力用にELNA DUOREXなどが使われています。
また銅製のバスバー(ブスバー)も装備しています。

オーディオ回路 DAC
バーブラウンPCM56P

デジタルフィルター
YM3414
ELNA DUOREXと
バスバー



(ピックアップ・ドライブメカ)
ピックアップ・ドライブメカは、チャッキングアームを採用したもので、CDX-1000と同じ物が搭載されています。

メカシャーシ(メカベース)は頑丈な鋼板製で、アンチバイブレーション・フローティングサスペンションにより、3点支持でフローティングされ、外部からの振動を遮断しています。

ピックアップは追随性の良い3ビームのオリンパス製「TAOHS-JP3」。ピックアップのスライド機構はギヤ式ですが、モーターとギヤの間をゴムベルトで伝達することで、モーターの振動がピックアップに伝わるのを防ぎ、安定した読み取りを実現しています。

メカ メカ

ピックアップユニット トレイ



(出力端子・リモコン)
アナログ出力端子は1系統で固定出力です。デジタル出力は同軸のみとなります。

専用リモコンの型番はRS-CD6Tです。

リアパネル


YAMAHA CDX-600のスペック

周波数特性 2Hz~20kHz±0.1dB
高調波歪率 0.003%
ダイナミックレンジ 100dB以上
S/N比 106dB
消費電力 18W
サイズ 幅435×高さ107×奥行347mm
重量 5.5kg





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