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Technics SL-1300

    1974年 定価69,800円



Technics SL-1300は1974年に発売された、ダイレクトドライブのフルオトート・レコードプレーヤーです。

当時のテクニクスのレコードプレーヤーとしては、SL-1000(178,000円)、SL-1100(88,000円)に次ぐ機種で、SL-1200(初代)よりも値段が高いモデルでした。


SL-1300は、ダイレクトドライブのフルオトート機としては、日本初となるモデルです。
ちなみに世界初はドイツのオーディオメーカー Dualが1972年に発売した「701」で、ヨーロッパのメーカーとしては初のダイレクトドライブ機でした。

当時、Dualのレコードプレーヤーは日本でも発売されていましたが、価格が高く、キャビネットは別売り、カートリッジは専用設計のため交換ができないという状況でした。
Dual 701はキャビネット付になったものの、日本の価格は165,000円。1972年の大卒初任給は52,700円ですので、給料3ヶ月分という状況でした。

SL-1300はそれを半分以下の69,800円で実現した訳ですが、アメリカではDualのフルオート・レコードプレーヤーの人気が高く、そのシェアを奪うことも目論んでいたのかもしれません。
ともかくこのSL-1300の登場により、日本でもフルーオート機の普及と低価格が進むことになります。


SL-1300はフルオトート機能以外にも特徴を持っています。それはSL-1200から受け継いだ、アルミダイキャストのキャビネットと、超低速電子整流子モーターです。

アルミダイキャストは高い剛性と適度な比重を持ち、ターンテーブルにも使用されている材料です。また木製のキャビネットよりも生産効率がよくなるというメリットがありました。

SL-1300の超低速電子整流子モーターは、当時の標準的な存在だったACシンクロナスモーターに比べて、電圧の変動や電源周波数の影響が無いというメリットがあり、また少ない電力で大きなトルクを得ることができました。

モーターの回転部はターンテーブルと一体化、固定部はキャビネットと一体構造という特殊な構造を採用し、これによりワウ・フラッター 0.03%(W.R.M.S.)を実現しています。この仕組みは「一体構造型D.D.方式」と名付けられていました。
ターンテーブルはアルミダイカスト製で重さは1.65kg。


トーンアームは高感度のジンバルサスペンションを使用した、スタティックバランスS字型トーンアームで、Dualと違ってカートリッジの交換も可能です。またアームの軽量化や精密ピボットベアリングの採用により、高いトレース能力を持っています。


フルオトート機能というとカッコ良いですが、レコードプレーヤーで出来ることは限られています。
アームを移動させてレコード盤に自動的に針を落とす「オートプレイ」。アームがレコードの終了位置まで行ったらアームを上げて元の位置まで戻す「オートリターン」や「オートストップ」。
そして「オートリターン」と「オートプレイ」を組み合わせて、自動的に反復演奏する「メモリピート(オートリピート)」ぐらいです。

メーカーはフルオートが付くとマニュアルプレーヤーよりも、1万〜2万円ぐらい値段が高くなるような価格設定をしていました。

SL-1300はマイコンを使用した電子制御ではなく、メカニカル(アナログ的)な機構により、フルオートを実現しています。
内部はとてもシンプルなメカを組み合わせて、アームの移動や上げ・下げを行っています。

またマニュアルプレーヤーとして使用することも可能で、アームのキューイング(リフトアップ・ダウン)するレバーが付いています。

付属はヘッドシェルのみで、カートリッジは付いていません。


後にSL-1300にオートチェンジャー機能を、取り付けたSL-1350(90,000円)も発売されました。



(ターンテーブル)
1970年代のターンテーブルはストロボの縞目を含めて、各メーカーごとに特徴がありました。

Technicsのターンテーブルは台形で、淵の部分に浅い角度のテーパーが付けられているため、薄型に見えスタイリッシュな印象があります。SL-1300ではそれをプリズムを使ったストロボライトで、照らすというシャレたデザインになっています。


ターンテーブルはアルミダイキャスト製で、直径は下部が33cm、上部は29.5cm。重量は1.65kgです。

ダイレクトドライブは、モーターでターンテーブルを、直接駆動するというものですが、


SL-1300のモーターはそれを一歩前進させて、ターンテーブルを「モーター化」する思想で作られたものです。

ローター(回転子)の部分はターンテーブルと一体化しており、スロットなど、その他の部分はキャビネットと一体となった構造です。

DCモーターは磁石を使って調べてみると、どうやら18極のようです。そうだとすると18極・12スロットのブラシレスモーターとなります。

ターンテーブル ブラシレスモーター
(キャビネット側)

ブラシレスモーター
(ターンテーブル側)



(トーンアーム)
トーンアームはジンバルサスペンションのスタティックバランス型S字アームです。

適応カートリッジの重量は4g〜で補助ウェイトの使用により13gまで可能です。針圧可変範囲は0〜3gです。

その他にアンチスケーティング機構や、マニュアル操作用のオイルダンプ式のキューイングレバーも備えています。

スタティックバランス
S字アーム
アームの基部



(キャビネット)
アルミダイキャスト製の薄型キャビネットです。SL-1200のキャビネットをベースに新しくデザインされたもので、Technicsはこのデザインをひとつの完成系としてとらえ、これをベースに多くのレコードプレーヤーを作りました。

アルミダイキャストのキャビネットは、剛性が高く堅牢な代わりに内部損失や振動の吸収は弱いです。そういう部分では木製キャビネットとは、対極にある金属キャビネットといえるかもしれません。

ダイキャストの厚さは4mmで、裏側には補強用のリブが入っています。アルミダイキャストといっても、ターンテーブルとは合金の比率が違うようで、叩いても「にぶい音」しか返ってきません。

底部は樹脂製です。インシュレーターは樹脂製の小ぶりな物で、キャビネットとの接合部に弾性素材(たぶんゴムだと思います)を使用して、外部からの振動を吸収しています。接地面にはフェルトが張り付けられています。高さの調整機能はありません。

アルミダイキャストの
キャビネット
プリズム式
ストロボイルミネータ

回転数切り替え
スピード調整
スタートスイッチ、レコードサイズ、リピート回数のスイッチ

底部 インシュレーター



(内部について)
電源回路のヒューズは30mmの0.3Aが1本です。

メイン基板には電源回路とサーボ回路があります。サーボ回路にはスピード調整用の半固定抵抗があります。

電源コードは細い平行コード。フォノケーブルは直付けタイプです。

内部 電源トランス、ヒュース

メイン基板

ストロボと回転数切り替えスイッチと、スピード調整用のボリューム。

モーターからアーム駆動用の
動力を取り出すメカ
アームの移動とリフトのメカ


Technics SL-1300のスペック

形式 フルオートプレイヤー
トーンアーム ユニバーサルS字形トーンアーム
スタティックバランス型
ジンバルサスペンション
駆動方式 ダイレクトドライブ
モーター 超低速電子整流子モーター
ターンテーブル 直径33.0cm
重量1.65kg
アルミダイカスト製
ワウ・フラッター 0.003%
トーンアーム
S/N比 60dB(IEC)70dB(DIN-B)
消費電力 4W
サイズ 幅453×高さ139×奥行366mm
重量 9.4kg




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