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ONKYO Integra A−925

  1996年 定価69,800円



ONKYOのIntegra A-925は、1996年3月に発売されたプリメインアンプで、1995年10月に発売されたA-927の兄弟機となります。

FMファンのダイナミック大賞 優秀推薦機に選ばれています。海外仕様はA-9711で、こちらはゴールド以外にブラックも発売されました。

バブルの崩壊や円高により、各社ともにラインアップを縮小している時期で、ライバル機はDENON PMA-715R-K、Marantz PM-62、Pioneer A-D5、SUNSUI AU-α507XR、SONY TA-FA3ESなどです。



A-925はいわゆる「無帰還アンプ」です。無帰還アンプは、NFB(Negative Feedback)をかけないアンプということになるのですが、1970年代末〜1980年代のONKYOのアンプというと、「スーパーサーボ」や「DDスタビライザー」といった、NFB回路が「売り物」で、ONKYOはこれで飯を食っていた訳です。

それがA-927では、NFB回路を外した無帰還アンプにして「音が良くなりました。」と宣伝した訳ですから、これにはビックリしました。


「無帰還アンプ」といっても、オーディオ業界の悪いクセで、きちんとした定義はありません。

そのため、NFBをまったく使っていないアンプを「無帰還アンプ」と呼ぶ以外に、トランジスタアンプなどでは、出力段からNFBを外した物も「無帰還アンプ」と呼ばれますし、終段のエミッタフォロワのNFBを外しただけの物も「無帰還アンプ」と呼ばれています。

一方で、特定の効果を狙ってNFBを掛ける方法に「局部帰還」「部分帰還」という言葉もあります。これも定義が決まっている訳ではないので、人によっては1段または2段の増幅部にNFBをかけた回路と説明する人もいます。
このため同じNFB回路でも、ある人は「無帰還」と呼び、別の人は「局部帰還・部分帰還」と別々の言い方をしている場合もあります。


「無帰還アンプ」は真空管アンプではポピュラーな存在ですが、トランジスタやMOS-FETを使用したアンプでは、NFBのメリットが大きいので、そこまでポピュラーな存在ではありません。

雑誌などの記事の影響で、小出力の自作の無帰還アンプを製作する人は増えていますが、メーカー製はいろいろなタイプや能率のスピーカーをつなげて、大出力でも安定した動作と音質を保証しなければならないため、「無帰還アンプ」として製品化された物は少ないです。

代表的な物はPioneerのC-Z1/M-Z1(1980年)、DENONのPOA-8000(1981年)、POA-3000Z(1984年)、POA-2200(1986年)、PMA-1010D(1987年)など、そしてONKYOのA-927、A-929、A-925。アメリカのCOUNTERPOINT、最近ですとSOULNOTEやCECのアンプなどが有名です。

PioneerのC-Z1/M-Z1は詳しいことはわかりませんが、DENONの無帰還アンプでは、歪除去回路やディストーション・サーボ回路などが、局部帰還回路になっています。またSOULNOTEは、トランジスタにエミッタ抵抗を挿入して電流帰還を掛けています


A-925やA-927では、電力増幅段(ドライバー段・出力段)から、NFBを排除したとなっていますので、出力段から電圧増幅段(入力段・プリドライバ)へのフィードバックはしていないようです。でも電圧増幅段の内部では局部帰還などを行っていると思われます。



(NFBのメリット、デメリット)

1.NFBのメリット

 1.歪やノイズの低減。
 2.周波数特性の改善。
 3.出力インピーダンスの低減(逆起電力の影響を低減)
 4.ドリフトなどに対する動作の安定

半導体で増幅するアンプは、真空管アンプと違って、素子のバラツキなどが原因で、歪やノイズが発生する箇所が多いのが現実です。
そのためメーカー製のアンプは、「無帰還アンプ」といっても、実際には何かしらのNFB回路が存在している場合が多いです。

NFBは回路内で発生した歪やノイズなどを打ち消すために使われ、「足される物」を引くために使用されます。そのため音質を向上させる回路というよりも、音質を元に戻す回路というほうが、性格的には近いかもしれません。

またNFBを掛ける前の回路の、オープンループ特性(裸特性)や音質が良くないと、NFBによって歪やノイズを取り去っても、音質が良くならないということもあり、単純に「NFBありき」で回路を設計しても、音質は良くなりません。


2.デメリット

 1.回路の増幅率が下がる。
 2.帰還量を大きくすると音質が悪くなる。発信する危険性もがある。
 3.TIM歪が発生して過渡特性が悪くなる。

NFBの帰還量を多くすることは、確かに歪率を下げる手法のひとつですが、実際の歪やノイズ以上にNFBを掛けてしまうと、元の音と変わる=音質の悪化を招きます。
当然、このことはメーカーも理解している訳で、適正な帰還量の研究は1970年代から行われています。(たぶんメーカーによっては1960年代からやっていると思います)

一部のオーディオファンは1980年代のアンプが、現在のアンプよりも歪率が「ケタ違い」に良いのことを疑念に思い、たっぷりNFBを掛けていると勘違いしていますが、当時のアンプのほうが、良いパーツを使っているということを理解しなくてはいけません。

また、NFBの掛け方もすべてオーバーオールに掛ける訳ではなく、局部帰還と組み合わせることで、コントロールが行われています。


TIM歪(トランジェント・インターモジュレーション・ディストーション)は、1970年代にフィンランドのマッティ・オタラが提唱したものです。
けっこう古い話なのですが、いまだにNFB悪役説の中ではよく取り上げられます。

実はマッティ・オタラは1970年代後半に来日しており、時期を同じくして、日本のメーカーもTIM歪や過渡特性への対応を行っています。

1977年発売のMarantz Model 1180は、TIM歪の低下と、過渡混変調歪の対策が行われています。VICTORも大ヒットした、スーパーAサーキットを搭載したA-X5、A-X9のシリーズからTIM歪対策を行っています。
Technicsは1979年発売のSU-V8でTIM歪は測定不能と表示。SANSUIも1980年のAU-D607F、AU-D707FからカタログにTIM歪(Sawtooth法) 測定限界以下と掲載しています。

つまり、日本のメーカーは約40年も前にTIM歪への対策を、確立している訳です。



(A-925について)
A-925はA-927と同じ回路やシャーシを持つモデルで、いわばA-927をコストダウンしたアンプです。

A-927では「動的特性」の向上をコンセプトにして、そのためにNFBを掛けていない「裸特性」の改善しています。

ダブル・インバーテッド・ダーリントン回路(最近のONKYOの呼び方では3段インバーテッド・ダーリントン回路)を採用。従来NFBが行っていたドリフト対策は、温度補償回路の見直しにより改善をしています。

電源トランスは、新開発のダブルコアAEIトランスで、コイル状のコアを2個組合せた構造により、リーケージ・フラックス(磁気漏れ)を抑えています。

シャーシはH型フレームによるボックスシャーシ構造で、剛性を高めるとともに、回路間の干渉を防いでいます。


A-925とA-927との違いは天板(ボンネット)、ブロックコンデンサの容量、トランス、フィルムコンデンサーやボリュームなどのパーツ、基板など。省略されている機能は、ミッドバス、サブソニックフィルター、パワーアンプダイレクトなどです。
またA-925はリモコンに対応しており、電源やボリューム、インプットセレクターを操作できるリモコンを標準装備しています。


A-927からはA-925以外に、A-929 (1995年発売 170,000円)も作られています。A-925との価格差が10万円以上もあるというのは、ちょっと思い切った値付けだと思います。その後A-927LIMITEDが発売されました。



結局、ONKYOが無帰還アンプとして製作したのは、このA-927ファミリーだけで、そういう意味では成功作では無かったと言えます。

その後はデジタルアンプの開発に注力し、2004年にONKYO独自の「VLデジタル」を搭載したA-1VLを発売して注目を浴びますが、効率の悪さやダンピングファクターの低さなどの問題を抱え、ピュアオーディオ用としては、2009年のA-5VLを最後に開発をやめます。※A-7VLはA-5VLのマイナーチェンジ版。

2010年代になると、ONKYOは再びアナログアンプへと戻り、A-927の3段インバーテッド・ダーリントン回路の改良型を搭載した、A-9000RやA-9070が発売されました。



(音質について)
ONKYOらしい透明感のある音ですが、傾向としてはやや硬めの音です。それでも、あまり刺激的なところは出てきません。レンジや音場は少し狭く、物足りなさがあります。

解像度もあり、細部の再現もA-917より上なくらいなのですが、こういったキチンとした音を出すには、最低でもボリュームを10時以上にすることが必要です。ただし、その音量だとマンションなどでは隣家から苦情が出るかもしれません

いかんせん通常の音量では能力を発揮してくれません。ともかく低音が出ないために、全体的に軽い音になってしまいます。

スピーカーによっては、低音で中音域がマスキングされないので、解像度が良好になる場合もあれば、別のスピーカーでは肉付きのない痩せた音になってしまいます。

兄貴分のA-927も通常の音量では、低音が出ないとよく言われていましたが、回路が共通のA-925でも同じです。それならばと低音が良く出るDENONのCDプレーヤーと組み合わせてみましたが、やはりダメでした。


A-927よりも価格が安いということもあり、ジャンルはクラッシック、ジャズ、ロックとオールラウンドに使える音づくりです。その中でも一番向いているのはジャズになります。


小音量での特性や音質は問題があり、またスピーカーとの相性は出るタイプなので、けっして使いやすいアンプとは言えません。


人気モデルではないので、無帰還アンプの中古品としては価格が安いです。ともかく無帰還アンプの音を、一度聴いてみたいという人には良いかもしれませんが、NFBのアンプと比べて無帰還の良さが、感じられる訳ではありません。

単純に音の良し悪しで言ったら、無帰還のA-925よりも音の良いNFBのアンプはたくさんあると思います。



(フロントパネル)
A-925のフロントパネルはA-927のデザインを踏襲したものです。

機能が省略されているので、ミッドバスのボリューム、サブソニックフィルター、パワーアンプダイレクトのスイッチはありません。

フォノイコライザーのMM/MCの切り替えスイッチは、リアパネルにあります。




(シャーシ・内部について)
シャーシはA-927と共通です。内部にはH型のフレームがあり、4個のボックスを互いに結合させることで、シャーシ全体の強度を高める 「ボックスシャーシ構造」となっています。さらに不定形リブを設けることで、強度の向上と共振の分散もはかっています。
これにより重量は14.9kgですが、とても強固なシャーシとなっています。

またフレームは電源部、アンプ部、フォノイコライザーといった回路間の干渉を防ぐシールド板の役目も果たしています。

天板は1.2mm厚の鋼板製で、端の部分に細長い防振材が取り付けられています。フレーム部分の厚さも1.2mm。
底板は1mmで黒く塗装がされており、17個のビスで固定されています。このビスの一部には樹脂製のパーツが付いています。

インシュレーターは小型の樹脂製で、内部はヘクサグラム(ダビテの星)のような形状になっています。


内部は左側に電源部、中央にパワー部(入力、プリドライバー、ドライバー、出力段)、右側はインプットセレクター回路とフォノイコライザーがあります。

底部 底板をはずしたところ

天板 インシュレーター



(電源部)
電源トランスは、A-927に搭載された「ダブルコア・レーザートランス」と同じ構造を持つ、ダブルコアAEI(Anti Electromagnetic Interference)トランスです。


磁気抵抗の少ない圧延方向に連続したコイル状のコアを2個組合せた構造により、リーケージ・フラックス(磁気漏れ)を抑えています。
またコアの一部をカットして、コイルを円筒形にすることで、太い銅線を巻き線にすることが可能となり、電流供給能力が向上しています。

ブロックコンデンサーはブルーコンデンサーです。このコンデンサはONKYOとELNAが音質の改善のために共同開発したもので、力強さと繊細さという相反する条件を克服するコンセプトで作られたものです。

コンデンサは基板にしっかりと固定されており、上部も振動防止用のプレートで固定されています。

電源ケーブルは直付けで直径7.5mmのキャプタイヤです。

ダブルコア・AEIトランス ブルーコンデンサー



(パワー部)
A-925の回路はA-927と共通で、一部のパーツのグレードが落とされています。

NFBを外して無帰還アンプとするためには、「裸特性」の改善が必要で、特にNFBに頼っていた、歪やノイズの改善、周波数特性、インピーダンス、温度変化などによるドリフトへの対策が必要となります。

ONKYOが選んだのは、以前のA-917シリーズとは全く違う、ダブル・インバーテッド・ダーリントン回路(最近のONKYOの呼び方では3段インバーテッド・ダーリントン回路)を、新たに開発して搭載することでした。

インバーテッド・ダーリントン回路は、直流電流増幅率(hFE)が高いというのが特徴ですが、発振しやすいという弱点があり、このあたりを克服しているのだと思います。

また、従来NFBが行っていたドリフト対策は、温度補償回路の見直しにより改善をしています。

当時のA-927のカタログには、「スピーカーからの逆起電力に影響されない無帰還パワーアンプ搭載」となっていますが、これは他のメーカーや昔のONKYのNFBの理論と正反対の話なので、疑わしさが残ります。

A-927/A-925の場合、無帰還ではなく、3段インバーテッド・ダーリントン回路で出力インピーダンスを低くしています。
オーディオ業界では昔から「ダンピングファクターが高い=逆起電力に強い」という理屈があり、もしかすると、このあたりから宣伝文句を作り出したのかもしれません。

またDCオフセットの制御のためにDCサーボ回路が搭載されています。



出力段のパワートランジスタは、サンケン「2SA1695」と「2SC4468」です。

ヒートシンクはA-917シリーズと比べると小型です。ベースが5mm厚でフィンは16枚で厚さは3.5mm〜2.5mm。振動を抑えるためのテープが貼られています。

差動増幅・プリドライバー部 ドライバー段・出力段

ドライバー段のトランジスタ サンケン製のトランジスタ
「C4883」と「A1853」

出力段のパワートランジスタ
サンケン「2SA1695」と「2SC4468」
ヒートシンク



(プリ部・フォノイコライザー)
リモコン対応ということで、ボリュームや入力セレクタには、モーターが取り付けられています。特に入力セレクタはA-917やA-917Fの電動セレクタで、トラブルが多発したことから、手動でも電動でも動作するようになっています。

フォノイコライザーは簡易な回路です。当時はCDの全盛期で、レコードはもうすぐ淘汰されるだろうという、見方でしたからしょうがありません。

メインボリューム インプットセレクタの
スイッチ

フォノイコライザー



(入出力端子・リモコン)
入出力端子はCD・PHONO・TUNERにAUX。TAPE(PLAY・REC)が3系統という構成。
TAPE-3端子は、テープデッキの他、グラフィックイコライザーやサラウンドプロセッサーなどの外部機器を接続することも可能です。
金メッキされているのはCDのみ。

端子の横にはフォノのMMとMCの切り替えボタンがあります。

スピーカー端子は上級機のA-929は1系統ですが、A-925は2系統あります。
コンセントは2口あります。


リアパネル

リモコンで出来るのは電源のON・OFFと外部入力のセレクト、ボリュームのアップ・ダウンとミューティングのみ。

その他にONKYO製のCDプレーヤー、カセットデッキ、チューナーの操作ができます。型番はRC−312S。



ONKYO Integra A-925のスペック

定格出力 120W+120W (6Ω)
80W+80W (8Ω)
ダイナミックパワー 260W+260W (2Ω)
高調波歪率 0.04% (定格出力8Ω)
混変調ひずみ率 0.04%
S/N比 114dB (CD、TUNER、AUX)
87dB (PHONO MM)
70dB (PHONO MC)
ダンピングファクター 120 (8Ω)
消費電力 185W
サイズ 幅435×高さ164×奥行434mm
重量 14.9kg




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