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TEAC S-300

  1989年 29,800円(ペア)



TEAC S-300は1989年8月に発売された小型の同軸2ウェイ・スピーカーです。

1980年代のTEACというとカセットデッキとCDプレーヤーがメインで、スピーカーはカタログブックで探しても、わずかな数しか発売していません。そのスピーカーも業務用やAV用がメインでした。

1984年 タスカム 3ウェイスピーカー S-2830 (119,000円)
1985年 アクティブサウンド・リフレクター方式平面スピーカー
S-2001 (34,800円 1本)
SRSS方式のサラウンド用スピーカー
S-10(29,800円 2本)
1987年 アクティブサウンド・リフレクター方式平面スピーカー
S-1001 (39,800円 2本)
1988年 2ウェイスピーカー S-100G (20,000円・2本)

そのかわりTEACが輸入している「TANNOY」のラインナップは充実しており、有名なプレステージシリーズ以外にも、多くの中・小型スピーカーを発売していました。
そんなTEACがいわば方針を変更して発売したのが、「BOXER」シリーズの第1弾となるS-300です。

現在ではこのサイズのスピーカーはメインストリームのひとつですが、当時はまだ30cmなど大口径のスピーカーの人気が高く機種も多かったので、イメージ的には超小型スピーカーという感じでした。
このサイズで多かったのは「BOSE 101」シリーズを真似たAV用スピーカーで、国内外の多くのメーカーから発売されていました。

ただ、デスクトップや棚の上に置けるスピーカーというニーズもあり、1983年発売のテクニクス・コンサイスコンポの「SBF-1mk2」や「SBF-2mk2」は、まだ販売され続けていました。


S-300は雑誌「stereo」で「特選」に選ばれるなど、ユーザーやマスコミから高い評価を得て、ヒット商品となりました。TEACはこれをベースにしたスピーカーを次々に開発し、ラインアップを充実させます。1991年には後継機となるS-300Rを発売。以後S-330、S-350と発売されます。2011年にはその血筋を引く同軸スピーカー S-300NEOが発売されました。

  (S-300シリーズの歴史)
1989年8月 S-300(29,800円) 発売
1990年6月 S-500(39,800円)
ウーファーをタンデムにして大型化したモデル
1990年8月 S-200(21,800円)
S-300をひと回り小さくしたモデル
1990年12月 S-300Pro(34,800円)
S-300のグレードアップモデル
1991年4月 S-300M(34,800円) アクティブスピーカー
1991年4月 タスカム S-2020M(35,000円)
S-300Mの業務用モデル
1991年5月 タスカム S-2000M(40,000円)
S-300Proの業務用モデル
1991年11月 S-300R(33,000円) S-300の後継機
1991年12月 S-300Extra(65,000円)
S-300のグレードアップモデル
1993年7月 S-330(33,000円)
1995年 S-350(33,000円)
2011年11月 S-300NEO(オープンプライス)
2015年8月 S-300NEO-SP(オープンプライス)
2016年1月 S-300HR(オープンプライス)ハイレゾ対応


(S-300について)
S-300の特徴は同軸(コアキシャル)2ウェイ・ユニット。有名なTANNOYやKEFの同軸ユニットとは違って、単純にウーファーの前にトゥィーター取り付けたというものです。ユニットがムキ出しの無骨なスタイルは印象的で、マニアックな感じさえします。

ライバル機となるのは、同じコンセプトで作られた同軸・2ウェイのパイオニア S-X33C(1989年)。またサイズはひとまわり大きいですがFOSTEX RM800(同軸・1988年)もライバルと言えると思います。

ウーファーは高い剛性を持つラミネート構造の13cmのパルプ系コーンで、バリウムフエライト・マグネットを採用しています。トゥイーターは2.5cmのソフトドーム・トゥイーターで、テトロンのベースに2種類のエマルジョン(乳化剤)をコーティングしており、ストロンチウム・マグネットを使用しています。

このトゥイーターユニットは幅が66mmもあるので、ウーファーの直径の約半分を占めています。設計時にどの程度、影響を考慮したのかはわかりませんが、音を聴くと意外と影響がないように思えます。
また同軸といっても、ウーファーとトゥイーターの位置が前後方向にズレているので、点音源とはなりません。

キャビネット(エンクロージャー)の容積は3L。パーチクルボード製で、リアにバスレフポートがあります。仕上げはタスマン・メープル。
底面には天吊り・壁掛け用の専用ブラケット BK-1(9,000円)と、結合するめためのネジ穴があります。




(音質について)
よく出来たスピーカーですが2本で29,800円。価格なりの部分も当然あります。
高音は自然で嫌味などはありませんが、キャラクタがあるので楽器の音色は好き嫌いがでるかもしれません。低音はエンクロージャーの容積が少ないのと、ウーファーの振動板の面積が少ないため出ないです。締まりはややルーズ。

同軸というと定位が良いということになりますが、S-300はさほど良いという訳ではなく、普通の小型2ウェイ並みといったところ。音場は左右の間隔を広げ過ぎるとかえって悪くなります。

でも一番のウリは鳴りっぷりの良さ。音圧88dB?絶対90以上はあるでしょう?でもこの小さな箱では90dBも出る訳が無いはず。「サイズを越えた」とはこのスピーカーのためにある言葉かもしれません。

ジャンルはジャズやボーカル向き。ロックは低音が出ないので厚みや迫力が不足しますが、ここで「鳴りっぷりの良さ」が効いてきます。クラシックは細部の表現やスケール感が苦手なので、ちょっと厳しいです。

TEACは自社のサイトでS-300のことを「名機」と自画自賛していますが、さすがに名機と呼ぶのは難しいと思います。ただ「優秀機」であることは間違いありません。

最近のこのサイズのスピーカーは、低音を稼ぐために奥行きがありますが、S-300は約16cm。デスクトップで使用するのにも快適です。

鳴らす時に注意するポイントは、重量は2.9kgしかないので、エンクロージャーはけっこう振動します。従ってスピーカースタンド、棚の上、ディスクトップなど、どこに設置するにしてもインシュレーターやスパイクは必須となります。






2.5cmソフトドーム・トゥイーター

ユニットはコーンウーファーの前に取り付けられています。

振動板の素材は繊維の「テトロン」で、乳化剤をコーティングしてあります。

13cmコーンウーファー

振動板はラミネート構造のパルプ・コーン。 同軸ユニットの型番は「914-F005-01」でインピーダンスは6Ω。日本製です。

ウーファーの振動板は、トゥイーターユニットの根本まであるのですが、フェライトのカバーによって、かなりの部分が隠れています。露出している部分の振動板の面積は、10cmユニットよりも少ないくらいです。

これはトゥイーターユニットのサイズが大きいので、ウーファーとの干渉を避けるための処置かもしれません。

ネットワーク

コイルとコンデンサのみのシンプルなネットワークで、クロスオーバー周波数は4kHz。

キャビネット(エンクロージャー)

パーチクルボード製で、板厚はフロントバッフル、リアバッフル、天板、底板、側板ともに12mmで容積は3L。
内部には吸音材が入っています。

リア・バスレフポート

口径は35mm、ポートは長83mmで、ダクトは紙製です。

入力端子

端子部の形状のせいで、ケーブルはちょっと入れにくいです。また締め付けのツマミも小さいのもマイナスポイント。
直径は3mmぐらいまでのケーブルが使用できます。バナナプラグには対応していません。



TEAC S-300のスペック

トゥイーター 2.5cm ソフトドーム
ウーファー 13cm コーン
出力音圧レベル 88dB
周波数帯域 80Hz~20kHz
クロスオーバー
周波数
4kHz
最大許容入力 50W
インピーダンス
容積 3L
サイズ 幅165×高さ240×奥行156mm
重量 2.9kg




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