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Pioneer PDR-D7

    1998年 定価124,000円



Pioneer PDR-D7は1998年に発売されたCDレコーダーです。

録音するメディア・CD-R/CD-RWは音楽用のみに対応で、パソコン用(データ用)は使用できません。

またSCMS(シリアル・コピー・マネージメント・システム)にも対応しており、オリジナルソースを一度だけ、デジタルコピーできるようになっています。

この当時はまだCD-R/CD-RWへの録音(書き込み)時に、メディアとドライブ(ピックアップ・サーボ)との相性が、けっこう問題となっていました。

そのためPDR-D7では「記録ストラテジーコントロールIC」と、ランニングOPC(最適記録パワー調整回路)を装備していました。

再生ではCDに収められている、周波数帯域が20Hz〜20kHzの16ビットの音楽信号を、40kHzまで高帯域化し、さらに24ビット信号に再量子化するという、パイオニア独自の「Hi-bit・レガート・リンク・コンバージョン」を搭載しています。
※カタログ上の周波数特性は2Hz〜20kHzで、他のレガート・リンク・コンバージョン機も同じです。

D/Aコンバーターには高解像度でジッターに強いという、24bitの「DAC24」を採用しています。さらにジッター対策ではCD信号の検出精度の向上や、回路間の信号伝送、D/A変換の正確さを追求するという「Zコンセプト」を採り入れています。

その他に便利なものとしては、デジタル・シンクロ・レコーディング機能により、録音ソースとなる機器の再生や停止に合わせて、自動でスタート・ストップが行うこともできます。

またデジタル入力を利用して、単体のD/Aコンバーター(16bit/44.1kHz)として使うことができます。

使用可能なCDメディアは音楽CD、CD-R、CD-RWとなっています。



(音質について)
CDの再生は解像度が高く、音に奥行きや広がりがあり、レンジの広さも実感できます。

高級機に比べると派手めな音ですが、高域や中域を必要以上に持ち上げてはいません。ただ高音にキャラクターがあるので、音楽ソースによっては少しタイトなサウンドにも聴こえたり、ドンシャリぽくなることもあります。

音に軽さはありませんが、厚みがある訳でもありません。このあたりは現在のCDプレーヤーと同じです。


今はCDレコーダーとしての機能は録音に時間がかかるのと、メディアの制限などがあるので使っていません(パソコンのほうが便利)。

でも単体のCDプレーヤーとしても、価格に見合う音質だと思います。

付属の電源コードは安物で音質が悪いので、交換がオススメです。



(フロントパネル)
操作ボタンはおおまかに言ってディスプレィの左側が録音系、右側が再生系となっています。

トレイの右側にはトレイの開閉、録音、RECミュート、RECレベル、インプットセレクターといったボタンがあります。
慣れれば問題ないですが、お世辞にも使いやすいとは言えません。





(内部について)
本体はけっこう奥行き(385mm)があります。シャーシーに使われているのは普通の鋼板ではなく、厚さ1mmの制振鋼板と呼ばれる鳴きにくいものです(弟分のPDR-D5は普通の鋼板)。

底板はハニカムではありませんが、パターンをプレスして強度をもたせています。

天板も厚1mmの制振鋼板で、さらに27cm X 27cmの制振鋼板を張り付けて、2重にしています。インシュレーターは樹脂製です。

内部のレイアウトは左側に電源回路、中央がメカとオーディオ回路、右側はサーボ制御やデジタル録音などの回路となっています。


天板 底板


(電源回路)
電源トランスはタムラ製作所製の小型のものが1つ。回路はデジタルとオーディオに分かれた独立電源となっています。

電解コンデンサはニチコンのオーディオ用コンデンサ「FM」 3300μF X2本など。電源ケーブルは着脱式で3Pのインレットです。

電源トランス 電源回路


(デジタル回路 デジタル録音・サーボ・信号処理)
デジタル録音やサーボ制御、信号処理の回路では、たくさんのチップが使われています。

RFプロセッサ「AK8563」、EFMエンコーダー「LC89585」、CDデコーダー「CXD2585Q」、サーボアンプ?「PA9004」、ATIPデコーダー「PDJ014A」などなど。

CD-R/CD-RWへの録音にはランニングOPCを採用しており、ディスクの回転中もマイコンが、自動的にレーザー出力を調整することになっています。でも基板には録音の設定用と見られる、半固定抵抗も取り付けられています。

デジタル録音用にサンプリングレート・コンバーターを搭載しており、 CS放送(48kHz)やBS・Aモード(32kHz)の信号を、CDと同じ44.1kHzに変換して、デジタルのまま録音することができます。


(Pioneer PDR-D7のトラブル)
PDR-D7のトラブルで多いのがディスクを読み込まないというもの。原因はピックアップなどいろいろありますが、けっこう多いのが下の写真のスーパーキャパシタの液漏れによるものです。

スーパーキャパシタの電解液が空になっても、操作にはほとんど問題ないのですが、このキャパシタのそばを、ピックアップやサーボ回路の配線が通っており、漏れ出た電解液により基板のコーティングが溶けてショートを引き起こし、ディスクの読み込みエラーなどを発生させます。また最悪の場合は基板のパターンを溶かして断線させてしまいます。

1970年代〜1980年代のシンセサイザーチューナーにも、プリセットメモリの記憶用に、よくスーパーキャパシタが使われていますが、ウチにあるチューナーのキャパシタは、30年以上経過していますが問題ありません。

PDR-D7で使われているスーパーキャパシタは、日本のメーカー品ですが、ケースの構造が弱かったのか、第四級アンモニウム塩を使用していたのかわかりませんが、液漏れが頻発しました。

1990年代末ごろの電解コンデンサには、他にも欠陥を持っているものもあり、ネットで検索するといろいろと出てきます。オーディオ製品ではmarantz CD-17の表面実装コンデンサでも同様の問題が起きています。


それ以外はサーボ回路や、ピックアップ自体のトラブルが考えられます。サーボ回路はデジタルサーボですので、せいぜいピックアップのレーザーの出力ボリュームを、調整するぐらいしか手はないです。


デジタル回路 R・REC RW・RECと書かれた
半固定抵抗

アナログ・デバイセズの
サンプルレート・コンバータ
基板の真ん中にある電気二重層コンデンサ(スーパーキャパシタ)。メモリのバックアップに使用。



(DAC・オーディオ回路)
D/Aコンバーターは「DAC24」と名付けられた、自社製の24bitDAC「PE8001A」を搭載しています。

このDACは8倍オバーサンプリングの、デジタルフィルターを内蔵した、デルタ・シグマ型のDACで電圧出力です。

よくデルタ・シグマ型のDACでは、L・Rチャンネルに各2個のDAC(合計4個)を搭載して、差動出力を行う物が多いですが、PE8001Aのデータシートを見るとDACは2個しかありません。


アナログ入力信号をデジタル化するA/Dコンバーターは、旭マイクロシステム(現・旭化成エレクトロニクス)の、18bit・ADC「AK5340」です。


「Hi-bit・レガート・リンク・コンバージョン」は、高音質化のための2つのシステムを合わせた名前です。

「Hi-bit」は量子化ビット数以下の、微小レベル信号の再現を目指したもので、CDの16bitのデータを24bitデータに再量子化を行うとともに、ダイナミックレンジを従来の96dBから120dBまで拡大しています。

「レガート・リンク・コンバージョン」は、CDに記録された音楽波形から、原音の波形を推定する「波形再生」の技術です。

音楽信号を時間軸(時間的な幅)で捉えて、CDに記録された22.7μsec毎の音楽信号のデータの間を、オリジナルの音楽信号に近づくように設定した関数曲線を使って結び、リンギングの少ない原音に近い自然な波形を再現するというものです。

またCDの製造時には、原音の20KHz以上の周波数部分がカットされてしまいますが、レガート・リンク・コンバージョンでは、1/f減衰特性(1/fゆらぎ)にしたがって、20KHz以上の音も再現しています。


使われているオペアンプはJRC 4565DD、電解コンデンサはオーディオ用のELNA「SILMIC」やニチコンの「FM」などです。

オーディオ回路 Hi-bit・レガートリンク
コンバージョン

D/Aコンバーター
Pioneer PE8001A
A/Dコンバーター
AK5340



(ピックアップ・ドライブメカ)
メカはピックアップ以外は、バブル期の「PD-2000LTD」などと比べると、だいぶコストダウンされ見劣りします。

メカベースは鋼製のフレームにABS樹脂のベースが載るという構造で、現在のSACDプレーヤーの中級機でもよく使われる方式です。スピンドルモーターやピックアップが取り付けられているメカシャーシは、ゴム系の素材でフローティングされています。

ピックアップは読み取り32倍速、書き込み4倍速対応のSONY製「KRS-200A」。新開発の2軸アクチェータを搭載して、安定性の向上と高速再生を実現しています。CAV(角速度一定)方式のドライブでは、最大32倍速での読み取りが可能で、D-R/CD-RWディスクには4倍速書き込みができました。

初回出荷時のサンプル価格は50,000円と高額なピックアップでしたが、量産後は価格が下がりました。
ピックアップのスライド機構はラック&ピニオンのギヤ式です。


トレイ交換用のゴムベルトはメカの裏側にあります。
トレイには防振用の塗料が塗られているため、経年劣化のためベタつくこともあります。


メカの裏側 メカベース



(入出力端子・リモコン)
リアパネルにはデジタル入力端子が光学と同軸が各1系統、出力端子も光学と同軸が各1系統。
アナログは入出力ともに1系統となっています。

専用リモコンはCU-PD099。

入・出力端子 リモコン CU-PD099


Pioneer PDR-D7のスペック

周波数特性 2Hz〜20kHz
全高調波歪率 0.001%(再生)
0.004%(録音)
ダイナミックレンジ 99dB(再生)
92dB(録音)
S/N比 113dB(再生)
92dB(録音)
チャンネル
セパレーション
100dB(再生)
消費電力 16W
サイズ 幅420×高さ105×奥行385mm
重量 5.4kg




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