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TRIO KP-700

     1980年 定価64,000円



TRIO・トリオのKP-700は、1980年11月に発売されたセミオート方式のレコードプレーヤーです。

ライバル機は、このクラスのマニュアル機・セミオート機はDENON DP-55MとPioneer PL-30Lぐらいしかなく、他はすべてフルオート機となります。


1970年代のトリオ(後のケンウッド)は、サンスイ、パイオニアと共に「サン・トリ・パイ」と呼ばれ、日本を代表するオーディオメーカーでした。チューナーやアンプの人気に比べて、レコードプレーヤーはいささか古臭い印象がありました。

そんなTRIOのレコードプレーヤが変わったのは1976年からで、回転精度の向上や振動対策のために、ターンテーブルの慣性質量の増加やキャビネットの強化に力を入れ始めます。その結果、KP-7300(1976年)、KP-7600(1977年)、KP-7700(1977年)、KP-5050(1979年)、KP-7070(1979年)といった物量級のレコードプレーヤーを誕生します。

1980年代に入るとマニュアルやセミオートの、物量級のレコードプレーヤーが人気となる訳ですが、TRIOのこれらのモデルは少し登場が早すぎたいうことになります。


1970年代後半はフルオートが全盛になりつつある状況で、これらのモデルはいずれもマニュアル機でした。また各社が5~6万のモデルをクォーツ化する中で、TRIOは上級モデルにしかクォーツロックを搭載していませんでした。

1979年になるとVictorが電子制御アーム搭載のQL-Y7、QL-Y5を発売。Technicsがレコードジャケットサイズで、未来的なデザインにリニアトラッキングアームを搭載したSL-10を発売。大ヒット商品となります。

またオーディオフェアなどでは、各社がDAD(デジタル・オーディオ・ディスク。後に規格が制定されて1982年にCDとなります。)のデモンストレーションを行われていました。

これらの状況をふまえて、TRIOは1980年にフルオートのKP-Fシリーズを新たに発売。マニュアルのKP-5050(55,000円)とKP-7070(70,000円)の後継機としては、セミオートのKP-700を発売しました。


KP-700はKP-7070からクォーツロックと慣性ロックを受け継いでいますが、ターンテーブルは軽量化(2.6kg→1.9kg)され、慣性モーメントも550kg/cm2 から450kg・cm2 へと減っています。

これはモーターがKP-7070が20極・30スロットのDCモーターだったのに対し、KP-700は8極6コイル構造の3相スイッチング・プレーンドライブ・モーターに変わったためです。

このモーターはいわゆる「コアレス&スロットレスモーター」で、DCモーターに比べると、コギング(回転ムラ)の発生が圧倒的に少ないのが特徴ですが、モーターの出力を大きくできないため、重量級のターンテーブルを駆動できません。

とはいえ、ターンテーブルの慣性質量は450kg/cm2もあるため、トランジェントロード(過渡荷重)を制御する「慣性ロック」として働きます。

またサーボ回路は新しくFG方式の回転数検出機構を採用し、クォーツPLL回路により制御しています。回転が定速になると「クォーツロック」がかかり、安定した回転を保ちます。


KP-700ではキャビネットも軽量化されていますが、天板部をパーチクルボードと6mm厚の鉄板の2層構造とすることにより、共振周波数を分散させることで、振動の伝達を削減すると共に、キャビネットの重心とモーターの回転軸を一致させて、回転精度を向上を図っています。


トーンアームはスタティックバランスのS字型アームで、アームパイプとメインウェイトをブチルゴムでカップリングして、アームレゾナンス(共鳴)と1次分割共振を抑えた「弾性カップリング質量分離型トーンアーム」わ採用しています。

トーンアームのリフトアップは、アーム軸に取り付けられたミラーに、LEDから光を投射し、反射光をフォトリフレクターで受光して検出する、オートアップ機構を採用しています。



(ターンテーブル)
ターンテーブルはアルミ合金ダイキャスト製で、直径は33cm、重さは1.9kg。
モーターは新しく開発された3相スイッチング・プレーンドライブ・モーターを採用しています。

このモーターはコアレス&スロットレスモーターです。コアレス&スロットレスモーターの特徴はコギングが小さいことですが、スロットレスにすると構造上、モーターの出力が大きくできず、ターンテーブルも軽量の物にせざるを得ません。
TRIOでは8極6コイル構造とし上で効率の向上をはかり、起動トルクを1.5kg/cm以上とし、1.9kgのブラッターを2.2秒(33回転)で定速にしています。

センターシャフトは大きな慣性モーメントのターンテーブルを受け止めるために、硬質ステンレス製の10φのシャフトを使用しています。


ターンテーブルの回転数の安定には「クォーツロック」と「慣性ロック」の2つが使われています。

ターンテーブルの回転数が一定になると、クォーツ発振器の正確な信号とPLL回路(Phase Locked Loop)によって、回転数が変動しないように「クォーツロック」がかかります。

慣性ロックはサーボ回路だけではコントロールできない、過渡的な負荷変動に対応するためのものです。慣性質量450kg/cm2のターンテーブルをドライブすることで、ピックアップがダイナミックレンジの大きな音溝を、トレースする際に発生する非周期的なトランジェントロード(過渡荷重)を制御し、音溝の振幅を忠実にトレースします。

ターンテーブルシートはヘルツホルム共鳴器の原理を利用したもので、表面に小さなポートを設けその裏面に空間が作られています。これは録音スタジオなどの壁面に使われる多孔ボードと同じで、レコード盤から発生する音や振動を防ぐ効果を持っています。

3相スイッチング・
プレーンドライブ・モーター

ターンテーブルシート(表) ターンテーブルシート(裏)

電源ボダン、
回転数切替えボタン、クォーツロックインジケータ、スタート・ストップボタン



(トーンアーム)
トーンアームはスタティックバランスのS字型アームです。

このアームは「弾性カップリング質量分離型トーンアーム」と名付けられ、アームパイプとメインウェイトをブチルゴムでカップリングすることで、アームレゾナンス(共鳴)と1次分割共振を抑えています。

アームパイプ内のケーブルは、単線が使用されることが多いですが、KP-700では平行コードを使用して、あえて同位相で外部誘導を受けるようにしてあります。これによりノイズレベルの低下とクロストークの安定化を図っています。

アームの実効長は245mm、オーバーハングは15mm。適用カートリッジ重量は2~12gで針圧範囲は0~3g。トラッキングエラーは+1.8~-1度です。

その他にはインサイドフォース・キャンセラーや、高さ調整機構を備えています。

スタティックバランス
S字型アーム
アームの基部





(キャビネット)
キャビネットは木目仕上げ。材質はパーチクルボードで、厚さは天板・サイドが17mm。ところどころに補強材が追加されています。

天板には三角形の鋼板の板(厚さ6mm)が取り付けられています。パーチクルボードと鋼板では振動係数(共振周波数)が違うため、モーターから発生する振動の伝達を軽減しています。

さらに鋼板の重量によって、キャビネットの重心と、モーターの回転軸を一致させて、回転精度を向上させる役目も兼ねています。また取り付け方から見て、モーターとトーンアームの支持部の補強も兼ねていると思われます。

なお改良型のKP-700Dでは、DL(ダイナミック・センターロック)モーターを搭載しているため、重心対策が不要となり、鋼板は撤去されています。

内部 アームの取付部

インシュレーター

インシュレーターは大型で直径58mm。外側はプラスチック製で安っぽいですが、内部には防振ゴムが組み込まれ、振動の吸収を図っています。接地部にはフェライトが貼られています。高さ調節機能付き。


(サーボ回路)
モーターの回転数を安定させるサーボ回路は、クォーツロックFGサーボです。

回転数の検出にはホール素子なども使われますが、KP-700ではより高い精度が得られるマグネットとモーターのローターの磁束密度変化によって、発電するFG(Frequency Generator)コイルが使われています。

これをクォーツ(水晶発振器)から得られる正確な周波数を基準にして、PLL回路(位相同期回路)でモーターの回転を制御しています。これにより負荷変動に対しても回転が撹乱されることが少なくなり、安定した回転が得られます。

PLLや制御用に使われているICは、東芝製のクォーツPLL・モーターコントローラ「TC9142P」です。その他にはヘックス・インバータ「MC14584B」、フリップフロップ「CD4013B」、オペアンプ JRC「2902N」などが使われています。

電源トランスは20V・16VA。ヒューズは1.5A・250Vです。

サーボ・電源回路 東芝製のクォーツPLL・
モーターコントローラ
「TC9142P」

ヘックス・インバータと
フリップフロップ
電源トランス


(フォノケーブル)
フォノケーブルはいわゆる直付けタイプです。 トーンアームのケーブルは、端子板でフォノケーブルとハンダ付けされており、ケーブルが交換できる仕様ではありません。

フォノケーブル


TRIO KP-700のスペック

駆動方式 クォーツPLLダイレクトドライブ
モーター 3相スイッチング・プレーンドライブ・モーター
(コアレス&スロットレスモーター)
起動トルク 1.5kg
ターンテーブル 直径33cmアルミ合金ダイキャスト
重量1.9kg
慣性モーメント 450kg/cm2
ワウ・フラッター 0.025%(WRMS)
回転数偏差 0.003%以内
S/N比 62dB(JIS)、75dB(DIN-B)
消費電力 14W
サイズ 幅490×高さ173×奥行409mm
重量 13.8kg





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