TOP使っているオーディオカセットデッキA&D GX-Z9100


A&D GX-Z9100

  1988年 定価108,000円



A&D GX-Z9100は1988年9月に発売されたカセットデッキです。ダイナミック大賞の優秀推薦機に選ばれています。
ライバル機はSONY TC-K555ESR、エクセリア XK-0090など。

輸出仕様はA&D GX-Z9100とAKAI GX-95の名前で販売されていました。GX-95は基本的には同じ物ですが、銅メッキをしていなかったり、インシュレーターも安価な物に交換するなど、国内仕様よりダウングレードされています。


GX-Z9100はA&Dのフラグシップモデルで、CDプレーヤーなどデジタルソースの高解像度化などが進む中で、微小レベル信号の録音と再生を可能とする「究極のカセットデッキ」を目指したデッキです。

スーパーGXヘッドを使用した3ヘッドに、クォーツロック・ダイレクトドライブモーター、クローズドループ・ダブルキャプスタン方式のメカ、ディスクリート構成のDCアンプなどのAKAI時代からの技術を投入。

さらに高剛性と回路間の干渉を防止する「セパレートブロック・コンストラクション」と呼ばれるシャーシと、3つの素材を組み合わせたハイブリッド構造のカセットスタビライザーなどの強力な振動対策を持った、まさに高級機と呼ぶのがふさわしい内容を持っています。


ヘッドはコアの巻線にはLC-OFCを使用したスーパーGXヘッドです。GXは「Glass&X'tal Ferrite」の略で、フェライトをAKAI独自の加工技術で、クリスタルフェライト(単結晶フェライト)化したものを、コアにして全体を高硬度ガラスで固めたものです。

巻線のLC-OFC(Linear Crystal Oxygen-Free Copper・線形結晶無酸素銅)は日立電線(日立金属)が開発した線材で、銅結晶を大きく成長させることによって結晶境界で起きる信号伝達ロスを少なくした素材です。

アンプはA&D独自のオープンループサーキットによる、ディスクリート構成のDCアンプとして、高品質のオーディオ用パーツを投入しています。


メカは3モーターのクローズドループ・ダブルキャプスタンで、キャプスタン用のダイレクトドライブのモーターはクォーツPLL制御で、ワウフラッターは0.025%(W.R.M.S.)です。

カセットの振動を抑えるために、アルミと鋼板、新素材の「ソルボセイン」を組み合わせた「バイブレーション・アブソービング・カセット・スタビライザー」を搭載しています。


オートテープセレクターを搭載しており、ノーマル、ハイ(クローム)、メタルに対応しています。
ノイズ・リダクションシステムはドルビーBとCタイプで、 録音時における高音域の特性を改善するために「ドルビーHX PRO」を搭載しています。またバイアスとレベルの、マニュアルキャリブレーションを備えており微調整が可能です。

その他の機能としては、録音レベルやMPXフィルターなどの回路を、バイパスして録音できるCD/DATダイレクトイン、飛び越し選曲が可能なIPSSや、A-Bリピートなどがあります。


GX-Z7100(81,000円)とは兄弟機で、違いはダイレクトドライブモーターが、クォーツロックではなくなり(ワウフラツターは同じ0.025%)、電源トランスが普通のEI型になっています。
回路の部分はGX-Z9100と同じで周波数特性や歪率、S/N比などのスペックも同じです。シャーシからは銅メッキが省かれ、サイドウッドも付いていません。



(フロントパネル)
AKAIはずっと薄型(背の低い)デザインを採用してきましたが、GX-Z9100の高さはGX-Z9000(112mm)から、43mmアップの155mmとなりました。今までの精悍なイメージから威風堂々とした立派なイメージに変わりました。

GX-Z9100はA&Dの新世代のカセットデッキのフラグシップということで、デザインは下級モデルに落とし込まれ、AKAI・A&Dを通じて最後のカセットデッキとなる、GX-Z6300、GX-Z5300まで引き継がれていきました。


レイアウトは流行りのセンターメカではなく、使い勝手の良い左側にカセットホルダーを配置したデザインです。

左から電源とタイマーのスイッチ、ヘッドフォンジャック、カセッホルダー。
中央部は上にディスプレィがあり、FL管によるピークレベルメーターや電子カウンター、各種インジケーターがあります。その下にはTAPE/ソースの切り替えボタン、ヘッドフォンボリューム、バイアス/レベルのキャリブレーション、録音レベルのツマミがあります。(録音バランスはありません)。

右側は操作ボタンのブロックで、上から上からIPSS、メモリ、再生、録音、巻き戻し、早送り、ポーズ、RECミュート、停止などのボタンがあります。

その下はテープカウンターの表示切り替えやディスプレィのON/OFF。一番下にはキャリブレーションのON/OFFや、ドルビーノイズリダクションとMPXフィルターのON/OFF、CD/DATのダイレクトインのON/OFFのスイッチがあります。

カセットポジションの切替はオートテープセレクターのみで、手動による変更はできません。







(シャーシと内部について)
シャーシは「セパレートブロック・コンストラクション」と呼ばれるものです。

これは「メカ・電源回路」「デジタル回路」「録音・再生回路」「バイアス発振・ドルビーHX回路」の4つを、1ずつのブロックに分けてシールドBOXの中に収めて、回路間の干渉を防ぐとともに、これらをシャーシを補強するビーム(梁)とすることで、剛性を高め外部や内部で発生するメカやトランスの振動を低減させています。

キャビネットは鋼板製で厚さは天板(1.4mm)・底板(1.4mm)・リアパネル(1.0mm)です。サイドウッドの厚みは17mmほどですが、MDF製の本体に薄い木製のパネルを取り付けた2重構造になつています。

録音・再生回路を囲うパネルと底板は磁気歪対策用に銅メッキがされています。

インシュレーターは、セラミックコンポジット材を採用した大型のインシュレーターが装着されています。

内部は左側にメカと電源トランス。その下にバイアス発振とドルビーHX回路。右側にはシステムコントロールやサーボなどのデジタル回路。その下には録音・再生の回路があります。


底板をはずした内部

録音・再生回路のシールドBOX

底板 セラミックコンポジット製
インシュレーター


(電源部) 
電源トランスはサーキュラートランス(円形トランス)です。円形のトランスというと、トロイダルトランスを思い浮かべますが、GX-Z9100に搭載されているのは「Rコアトランス」のようです。

Rコアトランスは鉄芯の切れ目が無く、断面がドーナツ型の構造をしており、EIトランスに比べてリーケージ・フラックス(磁束漏れ)がとても少なく、過負荷変動に強く、低損失、低振動、低発熱などの特徴があります。

その少ないリーケージフラックスをさらに抑え込むために、ケースが取り付けられています。

トランスの巻線は別巻線で、干渉を防ぐためにアンプ、システムコントロール、ディスプレィなどに独立させ、さらに+側と-側も独立した巻線になっています。


電源回路は録音回路、再生回路、ドルビー回路(L・R独立)、ヘッドホンアンプの5系統の独立電源で、相互干渉を防ぐとともに、十分な許容量により安定した電源を供給しています。

電解コンデンサは日本ケミコンのオーディオ用コンデンサ「AS-I」や「ASF」が使われています。また外部電源からの高周波ノイズをカットするための、EMIフィルターが搭載されています。

ヒューズは1A-250Vが2本。1.25A-250Vが2本。

電源ケーブルは平型キャブタイヤで、導体はOFC(無酸素銅)。極性表示が付いています。

電源トランス 電源回路


 
(システムコントロール・サーボ回路) 
基板は右側の2階部分にあり、サーボ回路の一部はメカの裏側にあります。

キー操作などを制御するシステムコントロール用のマイコンは、三菱製「M50754-106SP」です。

サーボによりモーターの制御を行うモータードライバは、サンヨー製の「LB1649」が使われています。

 
システムコントロール
サーボ回路
メカの後ろのサーボ基板

マイコン
三菱 M50754-106SP


(ヘッド・メカ)
録音・再生ヘッドは最大磁束密度の高いスーパーGXヘッド、消去ヘッドはダブルギャップフェライトです。
巻線のLC-OFCカンタムは日立電線が開発した線材で、水素ガス成分を極限まで排除し純度を高めた「クラス1-OFC(無酸素銅)」を、線形結晶化したものです。

メカはクローズドループ・ダブルキャプスタン。テープガイドには表面平滑性と制振性に優れ、長期間使用の際でも摩耗が少ない、セラミック・コンポジット材を採用しています。

駆動系は3モーターで、キャプスタン用はPLLクォーツロック制御のダイレクトモーター。リール・メカニズム用とパワーローディング用にはDCモーターが使われています。

カセットホルダーには録音・再生中のカセットの振動を抑えるため、鋼板(2.0mm)とアルミ板(2.5mm)と、高い振動吸収特性を持つ「ソルボセイン」を使ったカセットスタビライザーを装備しています。



このカセットホルダーの下にはアジマス調整用の穴があります。ただし特殊な形状のネジが使われいるので、マイナスドライバーを引っ掛けるような感じで回すか、フロントパネルをはずしてラジオペンチなどで回して調整します。

やっかいなのは、メカの前面カバーとフロントパネルが一体化していることで、メカの修理を行う際にも問題となります。フロントパネルの裏にある基板の配線を取り外して、カセットホルダーをくぐらせるようにして取り外します。

ヘッド・キャプスタン
ピンチローラー
メカ

カセットスタビライザー


(録音・再生回路)
「録音・再生回路」と「バイアス発振・ドルビーHX回路」は、メカやトランス、システムコントロール、ディスプレィなどの回路からの干渉わ防ぐために、シールドボックスの中に収められています。

録音・再生回路のシールドボックスは、ボリューム類があるフロント部を除いて銅メッキが施されています。

回路はラインイン端子から、ラインアウト端子に至るまで、ほぼ左右独立のMONO構成で、音質に悪影響を与えるカップリングコンデンサを排除した、オープンループサーキットによるDCアンプです。

さらに音質劣化を防ぐために、ICはドルビー部とオペアンプのみという、ディスクリート構成にしており、高音質パーツの使用しているということで、お金のかかった贅沢な回路になっています。


録音回路はバイアス発振周波数を210kHzにした「ハイフリケンシーバイアス回路」と、録音時に高域の特性を改善するドルビーHXプロを搭載しています。ノイズリダクションはドルビーBとCタイプです。

パーツはドルビーB・C用のチップは日立製の「HA12090NT」で、ドルビーHX用はNEC製の「μpc1297CA」です。オペアンプは三菱製の「M5218P」。

電解コンデンサは日本ケミコンのオーディオ用コンデンサ「AS-I」や、Vishayのフィルムコンデンサ「MKT1822」が大量に使われています。他にローム製のゲートIC「BU4030B」があります。


一見するとパーツが整然と並んでいるので、回路もキッチリとわかれているように見えますが、録音系と再生系が入り組んでいるところがあります。
おおざっぱに言うと録音系は端子の前とフロントのボリューム類の前にあり、真ん中に再生系とドルビー回路があるという感じです。

修理やメンテナンスの際に使うサービスマニュアルは、海外のサイトからAKAI GGX-95/GX-75(GX-Z7100)兼用の物を入手できますが、国内仕様と一部パーツの配置が違うところがあるので、注意が必要です。

録音・再生回路 ドルビー回路

録音回路 バイアス発振・ドルビーHX回路

キャリブレーションレベルと
メーター感度の調整回路
再生回路

ドルビーB・C用チップ
日立 HA12090NT
ドルビーHXチップ
NEC μpc1297CA


(入出力端子)
入出力端子はラインインとCD/DATダイレクトインの2系統。出力はラインアウトの1系統です。

リアパネル


A&D GX-Z9100のスペック

周波数特性 20Hz~22kHz ±3dB
(メタルテープ)
S/N比 59dB(Dolby オフ・メタルテープ)
74dB(Dolby-C・500Hz)
79dB(Dolby-C・10kHz以上)
歪率 0.5%
ワウ・フラッター 0.025%(W.R.M.S.)
0.04%(Peak・EIAJ)
消費電力 24W
外形寸法 幅460X高さ154×奥行350mm
重量 10.2kg





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