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DENON DCD-755II

    2002年 定価39,800円



DENONのDCD-755IIは、2002年7月に発売されたエントリークラスのCDプレイヤーです。海外仕様はDCD-685です。

2000年4月に発売されたDCD-755の改良モデルで、新たにCD-R/RWの再生に対応しました。

CD-R/RW対応したといっても、CD-DA形式が再生できるだけで、現在のCDプレーヤーのようにMP3、WMA、WAVなどのファイルを再生できる訳ではありません。


DCD-755IIのD/Aコンバータは、音が良いと現在でも評価が高い、電流加算型の20bitDAC バーブラウン「PCM1702」を搭載。
ラムダS.L.Cによってゼロクロス歪みが、発生させないようにしています。

デジタルフィルタは20bit・8倍オーバーサンプリングです。


ピッチコントロールを装備しており、CD再生のピッチを+-12%まで調整が可能です。

最大20曲のプログラム再生やランダム再生、リピート、オートスペース、オートエディット、ディスプレイディマーなどの機能があります。


DCD-755とDCD-755IIは、良く売れたCDプレーヤーで、この成功によりシリーズ化されます。

2006年に24bit・DACとAL24 Processingを搭載した、DCD-755AEを発売。2009年にUSBメモリーに対応したDCD-755SEを発売。2012年に32bit・DACとAL32 Processingを搭載したDCD-755REを発売。2019年まで販売されました。


DCD-755IIは人気モデルだったので、中古価格は安定しており、オークションでは後継機のDCD-755AEや、DCD-755SEよりも高い価格で取引される場合もあります。

発売から20年近くがたち、一番心配なのはピックアップの寿命ですが、最近ではピックアップのKSS-213Cの正規品互換品がネットで安く買えるようになりました。



(音質について)
音は少し硬めのDENONサウンドです。エントリーモデルということでメリハリのある音です。簡単にいうと「ドンシャリ」から、ドンの部分を無くしたような音です。

エントリーモデルの中には、ドンシャリをやめて、高品位な音を目指す物もありますが、限られたコストの中でそれを達成するのは難しく、成功した例は少ないです。

それよりも、DCD-755IIと組み合わせられる、エントリークラスのアンプは非力な訳ですから、こういうメリハリ重視のほうが、結果的には良いのかもしれません。


問題は付属の電源コード。音質的な考慮はいっさい無い安物のコードです。

高音はソースによって、うるさく聴こえる場合もありますが、自作のコードに交換したら、キンキンした部分が抑えられて良くなりました。
ジャズでは楽器の艶もキチンと載ってきます。
低音は量感が少ないものの、全体の重心が下がり音の軽さも解消されます。

評判の良かったDCD-1650ARと比べると、物足りない部分がいくつも出てきますが、それでもPCM1702の片鱗を感じさせる音が出てきます。


現在のモデルとは違い、ジャズはDENONと呼ばれていた頃の製品ですので、エントリーモデルとはいえ楽器の質感や演奏の臨場感なども、ちゃんと再現されます。

ジャンルはジャズ、ロック、JPOP、アニソンなど。クラシックを聴くにはレンジや解像度、細部の再生能力がちょっと足りません。



(音質改善?のテスト)
DCD-755IIはシャーシやインシュレータが貧弱ということで、セッティングによって音質が、かなり変わります。
そこで、身近な物を使って音がどう変わるかのテストをしてみました。


テストした内容 結果
1.天板に重い物(雑誌など)を置いて防振を行う。

解像度がかえって悪くなる。
2.天板を取り外す。

解像度が向上。音のキレが増す。
3.インシュレータの下にダイソーで買った 木材(桐)を敷く。

ソースによって高音と中音のバランスが改善。
4.インシュレータの下にダイソーで買った 木材(MDF)を敷く。

低音が弱くなる。
5.インシュレータの下に100円玉を敷く。 中音域がふくよかになり、ボーカルが少し前に出る。10園玉でも効果があります。



(フロントパネル)
前モデルのDCD-735に比べると、操作ボタンが大幅に増えました。当時はフロントパネルからボタンの数を減らして、リモコンからの操作がメインになっていた時代ですので、それに逆行するようなデザインです。

当時もプログラムやリピートは、リモコンからしかできないモデルが多かったのですが、DCD-755IIはそれらに加えて、オートエディットやオートスペースの操作ボタンもあります。

ダイレクト選曲はリモコンからしかできませんが、曲送り・曲戻しはジョグダイアルになっており、素早く操作できます。

その他にはディマーやピッチコントロールのボタンがあります。

カラーはゴールドとブラックがありました。







(シャーシ・内部について)
シャーシは制振鋼板を使用しています。天板は薄い鋼板製で防振塗装がされています。

インシュレーターは中空のプラスチック製で、厚みはありませんが、横幅があります。接地面にはゴムが貼られています。


内部の基板はジャンパー線だらけですが、ICはほとんどが基板の裏側に取り付けられています。

ICの中にはマイコンやサーボ用のICなど、音質に影響を与える輻射ノイズを出すものもあるのですが、基板の裏に配置することで、少しでも影響を抑えようという設計です。

内部は左側に電源部。中央にセンターメカ。その後ろにはオーディオ回路があります。右側はサーボ・信号処理などのデジタル回路という配置です。


底板 インシュレーター



(電源回路)
電源トランスは別巻き線です。電源回路はシンプルですがオーディオ回路、デジタル回路・メカ、ディスプレィの独立電源となっています。

DSPを搭載しているため、三菱製のトラッキングレギュレータ「M5290」を使用しています。

電解コンデンサは日本ケミコンの、「ASF」や「SMG」などを使用しています。

電源コードは着脱式ですが、メガネケーブルです。

電源トランス 電源回路

トラッキングレギュレータ
三菱 M5290



(デジタル回路 サーボ・信号処理)
ICはすべて基板の裏側にあるので、表面はジャンパー線だらけです。

サーボ回路のICはSANYO製のアナログ・シグナルプロセッサ「LA9241」です。


DCD-755Ⅱでは再生速度のピッチコントロールを搭載しています。CDはCLV(線速度一定)のため、ディスクの内側の1曲目の信号を読む時が一番回転が速く、外側に行くに従って回転が遅くなります。

読み込んだ信号は信号処理回路で復調した後に、エラー訂正を行いながら、いったんメモリーに書き込まれます。このメモリから読みだす際にクォーツPLL回路を使って、正しい再生スピードになるように調整されて出力されます。
※このためCDプレーヤーのワウ・フラッターは、測定限界以下ということになります。

ピッチコントロールで、再生する曲のピッチを早くしたり、遅くする場合は、ディスクの回転をコントロールするだけではダメで、メモリから読みだす際に、曲の再生スピードを早くしたり、遅くする必要があります。

その仕組みに使われているのが、FMシンセサイザーチューナーと同じ、シンセサイザーという回路を使用して、スピードの調整を行っています。

DCD-755Ⅱは専用のクォーツ(水晶振動子)と、クロックジェネレータ(東芝 TC9246P)、そしてPLLフリーケンシー・シンセサイザーのローム「BU2616F」を搭載しています。このICは名前のとおり、FM/AMチューナーのPLLシンセサイザー回路用のICです。

デジタル回路 サーボ用IC
SANYO LA9241

PLLシンセサイザー
ローム BU2616F
クロックジェネレータ
東芝 TC9246P



(DAC・オーディオ回路)
D/Aコンバーターは、サイン・マグニチュード方式の、バーブラウンの20biDAC「PCM1702L」を2個使った、左右独立DACです。出力は音質の良い電流出力となっています。

サイン・マグニチュード方式は、内部にある2つのDACを+専用と-専用で動作させてD/A変換し、それを後で合成するというもので、マルチビットのDACにつきものだった、ゼロクロス歪みが発生しないというメリットがあります。

動作としてはテクニクスの4DACシステムや、DENONのラムダS.L.C(スーパー・リニア・コンバーター)に近いものです。

DCD-755IIはラムダS.L.Cも搭載しており、ゼロクロス歪みの対策にはこちらを使用しているようです。

ラムダ(LAMBDA)は、LADDER-FORM MULTIPLE BIAS D/Aの略で、信号をプラス側とマイナス側の二つに分け、テジタルパイアスをかけてシフトし、ゼロクロス点が含まれない状態でD/A変換して、信号を合成するもので、ゼロクロス歪を解消しています。


デジタルフィルターは20bit・8倍オーバーサンプリングのNPC 「SM5841BS」です。

エンファシスの演算精度を改善をはかったり、出力レベルを12段階までコントロールして、音質対策をしていますが、スペック的にはそれほど良いデジタルフィルターではありません。

形式はIIRフィルタで3段(69+13+9タップ)の演算により、リップル特性±0.03dB以内、阻止帯域の減衰量53dBという性能を持っています。


ラムダ(LAMBDA)用のDSPはSANYO製の「LC78625」です。

電解コンデンサは日本ケミコンのオーディオ用「ASF」などです。

オーディオ回路 DSP
SANYO LC78625

DAC バーブラウンPCM1702 デジタルフィルター
NPC SM5841BS



(ピックアップ・ドライブメカ)
ディスクのドライブメカは、エントリーモデルということで安物です。

メカはDENON製ではなく、ピックアップとスピンドルモーター、ピックアップをスライドさせるモーターとギアからなるスレッド機構が、取り付けられた完成品(アッセンブリーパーツ)です。現在でも市販されています。

ピックアップはSONY製のKSS-213Cで、これもネットで購入できます。

メカシャーシを支えるベース部分は鋼板製ですが、その下の脚の部分はプラスチック製です。

CDの再生時にはピックアップが、いったん一番外側まで行って、そこから中央部のTOCを読む仕様なので、少し時間がかかります。


ピックアップ
SONY KSS-213C
メカの足の部分



(出力端子・リモコン)
出力端子はアナログが固定の1系統。デジタル出力は光の1系統となっています。

専用リモコンの型番はRC-266です。

リアパネル

DENON DCD-755IIのスペック

周波数特性 2Hz~20kHz
高調波歪率 0.0025%
ダイナミックレンジ 100dB
S/N比 110dB
チャンネル
セパレーション
103dB
消費電力 10W
サイズ 幅434×高さ100×奥行285mm
重量 3.6kg




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DENON・デノン DCD-755II CDプレーヤーのレビュー