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ONKYO rubato DP-S1のレビュー




iONKYO rubato DP-S1は、2017年3月に発売されたDAP(デジタルオーディオプレーヤー)です。16GBのストレージと2基のmicroSDカードスロットを備えています。価格はオープンで、発売時の実売価格は45,000円ぐらいでした。

同時に発売されたPioneer private XDP-30Rと内容は同じで、デザインやユーザーインターフェイス、音のチューニングなどが変更されています。

メーカーはパイオニアの経営危機により、オンキョーがパイオニアのAV事業を吸収して誕生した、オンキヨー&パイオニア株式会社(当時)です。

オンキョー、パイオニア共にオーディオメーカーとして長い歴史があり、多くのヒット商品を生み出してきました。
DP-S1/XDP-30Rには、両者が開発してきた技術が投入されています。


DP-S1の特徴はESSの高音質DACを左右独立で搭載し、ヘッドホンアンプ用のICも左右独立にすることで、フルバランス回路を構成。それをバランス出力することで、ノイズや歪といった音質の悪化要因を低減し、イヤホンの能力が発揮できるように駆動力を高めていることです。

この構成は、ONKYO DP-X1/と同じ回路構成で、Astell&Kernの高級DAPとも同じです。フルバランス回路は、通常のDAPがLチャンネルとRチャンネルの2つの回路で作られるのに対して、L+、L-、R+、R-という4つの回路が必要で、単純にパーツも2倍必要になるというコストのかかる回路です。

オンキヨー&パイオニアは、Astell&Kernを発売しているドリームアスカンパニーとは、規模が違い世界中で多くのオーディオ製品を発売しているため、部品の調達コストが圧倒的に有利です。(同じ部品でもずっと安く買えるということ)
同じ回路構成で販売価格が大きく違うのは、これによるところも大きいハズです。


ただし、ESSの高音質DACやフルバランス回路などの恩恵を受けるのは、有線イヤホンを使用した時のみです。ワイヤレスイヤホンを使用する時は、ワイヤレスイヤホンに搭載されているDACやヘッドホンアンプが使われるため、音質はイヤホンしだいということになります。


DP-S1のディスプレイは2.4型(320×240ドット)。バッテリーは1,630mAhで、FLACロスレス(24bit/96kHz)ならば連続15時間の再生が可能です。

機能としては16bitや24bitの音楽ファイルを32bitまで拡張し、アナログのような滑らかな音質で再生可能という「Hi-Bit」モードを搭載。また、アップサンプリングによってMP3などの圧縮音源も192/176.4、96/88.2kHzに変換することが可能です。

オーディオ入力信号で音質悪化の原因となる、ジッターのロック幅を7段階で調整して、音質を向上させるロックレンジアジャストを搭載。

使用するイヤホン、ヘッドホンに合わせて、出力レベルを3段階から選択できるゲイン切り替え。ボリュームリミッター、音楽ファイルの音量のバラツキを補正して、基準値に合わせて再生するリプレイゲインなどの機能があります。


音楽用のイコライザーは、曲のジャンルに合わせてFlat、Pop、Rock、Jazz、Dance、Vocal
の6種類が用意されている他、自分でカスタムすることもできます。また低音を増強する「Bass Enhancer」は5段階から選択できます。

これらの音質用の設定は有線イヤホンだけでなく、ワイヤレスイヤホンでも有効になります。


曲の再生モードは通常、1曲リピート、全曲リピート、シャッフル。

USB-DAC機能があり、パソコンと接続すればパソコンのプレーヤーで再生した音楽を、DS-P1のDACで変換して、イヤホンで聴くことができます。
またUSB出力機能があり、USB-DACと接続することもできます。


その他には、e-onkyoで購入した曲のダウンロード機能や、Tuneln Redio、Radiko、DEEZERなどのネットワークサービスも利用できます。

Bluetoothのオーディオコーデックは、当初SBCだけでしたが、2018年のファームウェアのバージョンアップにより、aptX HDも追加されました。

表示言語は9か国、10言語。



DP-S1の回路について


DP-S1のDACはES9018C2Mですが、これはDP-X1に搭載されたES9018K2Mとパッケージが違うだけで、中味と音質は同じものです。

ES9018C2Mは内部に4個のDACがあり、1基でもバランス用の差動出力が可能ですが、左右独立に2基搭載することで、セパレーションの改善などを図っています。

DACの後ろのローパスフィルターなどの回路も、バランス回路に対応するために、通常の倍の4回路となっています。

ヘッドホンアンプ用のICもESS SABRE 9601KもDP-X1と同じです。これも左右独立で2基搭載して、バランスアンプとすることで、通常のヘッドホンアンプの2倍の出力が可能となっています。


バランスアンプはL+、L-、R+、R-と、通常のヘットホンアンプの2倍の4つのアンプでイヤホンを駆動します。パワーも通常のヘットホンアンプの倍となるため、通常のDAPやヘッドホンアンプでの使用を前提に設計している、イヤホンの入力特性、再生特性と合わなくなることがあります。

そのため、ヘッドホンアンプやDAPの中には、L/Rグランド分離型のバランス出力(疑似バランス回路)を搭載して、出力や特性、GNDなどを通常のイヤホンに合わせやすくしている物もあります。

実はDP-S1にも「アクティブコントロールGND」という疑似バランス回路を搭載しており、フルバランス回路と切り替えることができます。
実際にふつうのイヤホンわ聴く分には、アクティブコントロールGNDのほうが高音質になることが多かったりします。


他に音質対策として内部のプロセッサと、オーデイオコーディック用のIC(CPLD?)からは、大量のノイズが出るため、低減用のカバーが取り付けられています。
また基板・パーツなどの振動対策として、アルミ削り出しのシャーシを使用しています。


DP-X1ではPCMもDSDも192kHz/24bitにダウンコンバートされていましたが、DP-S1ではPCMは192kHz/32bitまで、DSDは5.6MHzまでネイティブ再生できます。

実はDP-X1のDACであるES9018K2MもDSD入力が可能なのですが、コーディックICの問題で、ダウンコンバートせざるを得なかったのだと思います。
DP-S1では新型のICになったため、DACのDSD入力が、そのまま利用できるようになったのだと思います。

マスタークロックは、高級機と同様に44.1kHz系の水晶発振器と、48kHz系の水晶発振器の2基を搭載。再生ファイルのサンプリング周波数に合わせた、正確なD/A変換を実現しています。



DP-S1のトラブル


DP-S1のトラブルで有名なのが、タッチパネルとボリュームの不具合です。Pioneer private XDP-30Rでも同じトラブルが発生しています。

タッチパネルは反応しないとか、反応が悪いという物ですが、初期ロットの中に不良品が入っていたようです。

それとは別にソフトウェア側での問題もあったようで、ソフトウェアのバージョンアップによって、ある程度解消しました。
ただ、根本的に小さい画面で、スイッチのON/OFFをさせるため、タッチの場所によって、反応が悪いということは起こります。(SONYなど他社のDAPでも起きます)


ボリュームのトラブルは現象としては音量ダイアルが弛くなって、少し回しただけでも、音量が大きくなったり、小さくなったりします。

そのうちに、ボリュームを上げても、逆に下がったり、下げても上がったりと不安定になり、ボリューム操作が事実上、不能になったりします。

原因は完全にハードのトラブルです。DP-S1/XDP-30Rでは、電子ボリュームを使用しており、ボリューム本体が故障している訳ではありません。
ダイヤルに連動しているのは、ロータリーエンコーダーという可変スイッチのような部品で、これが壊れることによって、上記のようなトラブルが発生します。



ボリュームが壊れてしまった時の対応としては、設定画面にある「ホールド中の操作」で、ボリュームを「無効」にしておけば、聴いている最中に音量が変わることはありません。

そのうえで、スマホに「Onkyo DapController」というアプリをインストールして、Bluetoothで接続すれば、アプリからボリュームをコントロールできます。


それ以外にも発売当初はいろいろな問題がありましたが、ソフトウェアによる問題は、バージョンアップによって、ほとんどが解消したようです。



音質について


有線イヤホンでの音質の評価です。

ESS社製のDACとアンプを、高級機と同じように2基ずつ搭載しているということで、ネットでは音質が良いという意見が多いですが、実際にはバリバリのオーディオメーカーが作ったDAPなので、かなりキチンとチューニングされています。


DP-S1と同時に発売された、Pioneer SE-CH5BL(バランス接続)とは、相性はバッチリで、これで聴くと音がクリアで解像度が高いです。全体のバランスも良く、高音は良く伸びて、低音は締まりが良いです。

ジャンルもクラシック、ジャズ、ロック、JPOp、アニソンとソツなくこなします。

DP-S1では高価なイヤホンでも、相性の問題でアニソンなどの打ち込み曲は、音が混濁してしまい、聴くに堪えない物もありまが、このイヤホンでは音のセパレーションが良く、十分に実用になります。


問題は通常のイヤホンで、他社のDAPもそうですが、スマホの汎用的なチューニングとは違うので、かなりイヤホンとの相性が出ます。

相性が出やすい原因のひとつが、内部の回路がバランス接続用のイヤホンを接続するために、フルバランス回路になっていることです。

通常のイヤホン用はGNDが必須ですが、フルバランスアンプにはGNDがありません。そのため、アンバランス変換回路でGND(グランド)の処理してから、3.5mm端子に出力しますが、そこで音質が悪化が発生します。

そのため、DP-S1には通常のイヤホンにも対応する、「アクティブコントロールGND」という疑似的なバランス回路を搭載しています。
実際にふつうのイヤホンを聴く分には、アクティブコントロールGNDのほうが高音質になることが多かったりします。

また、フルバランスアンプは、通常の2倍の出力となるため、イヤホン・ヘッドホンの入力特性と合わなくなる場合があります。これに対応するため、イヤホン・ヘットホン用の出力ゲインを切り替えるスイッチが付いています。


DP-S1だけではなく他のDAPも同じですが、スマホやパソコンの近くに置くと高周波ノイズを拾って、音質が悪化するので注意が必要です。





ONKYO rubato DP-S1のスペック

インピーダンス 3.5mm ステレオミニ 16Ω~300Ω
2.5mm 4極バランス 32Ω~600Ω
音楽ファイル MP3(44.1kHz、48kHz)
AAC(44.1kHz、48kHz、96kHz)
FLAC、ALAC、WAV、AIFF
(44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHz)
DSF/DSDIFF、MQA
(2.8MHz、5.6MHz)
DRMで保護されたファイルは再生不可。
ディスプレィ 2.4型 解像度 320 x 240
カードスロット microSD SDHC x2
無線LAN 802.11a/b/g/n
Bluetooth Bluetooth Ver4.0
オーディオコーデック SBC、aptX HD
USB端子 micro USB端子
イヤホン端子 3.5mm ステレオミニ
2.5mm 4極バランス
サイズ (W)63.0mm x (H)94.0mm x (D)15.0mm
重量 130g
付属品 USBケーブル、保護フィルム。




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デジタルアンプ
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