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Lo-D D-550

   1977年 定価52,800円



Lo-D D-550は1977年に発売されたカセットデッキです。Lo-Dは日立製作所のオーディオブランドで、ちょうどこの頃が黄金期にあたりますが、1980年代前半になると失速して、中ごろにはピュアオーディオから撤退します。
Lo-Dはあくまでも国内向けのブランド名で、海外ではHitachi D-550として販売されました。

この頃のカセットデッキは49,800円以下が初級モデル、59,800円〜が中級機と言いたいところですが、当時はオーディオブームです。特にカセットデッキは良く売れたため、各社ともにラインアップを強化しており、その間を狙って54,800円のデッキもありました。また52,800円や53,800円という、中途半端な価格にもLo-Dを含めて5社がデッキを発売していました。

D-550は売れ筋の価格帯(49,800円〜53,800円)に投入されたため、ライバル機はたくさんありました。主な機種はAIWA AD-7350、AKAI GXC-702DU、DIATONE DT-4550、DIANGO AU-K6000、Lo-D D-560、OPTONICA RT-1550、OTTO RD-5250、Pioneer CT-500、SANSUI SC-1、SONY TC-K3、TEAC f-250、Technics RS-M20、YAMAHA TC-3、Victor KD-25SAなど。


D-550はS.L.(スーパーライフ)ヘッド、いわゆるハードパーマロイヘッドを搭載しています。消去用はフェライトヘッドです。

メカは1モーターで、スビンドルやリール、そしてメカの一部を駆動しています。パワーアシステッドコントロールが搭載されいます。これはピアノボタンの操作時にあまり力を加えなくても、動作する仕組みで、ソフトタッチな操作を実現しています。

ノイズリダクションシステムは「Dolby-B」を搭載。テープセレクターはバイアスとイコライザを個別に切り替えるタイプで、クローム、フェリクローム、ノーマルの3ポジションに対応しています。

その他にはライン入力とマイク入力を切り替えるインプットセレクタ。ヘッドフォンと兼用のラインアウト出力のボリュームなどがあります。


D-550は内容もスペックも、初級モデル並みですが、それにもかかわらず、カタログでは「マニアのシビアな要求にも応えられるようデッキとしての精度、機能を十分に追及した」などと、大胆というか挑発的な宣伝文句が書かれていました。

この頃のオーディオファンは、スペックをキチンと見ていましたし、周波数特性や歪率、S/N比、ワウフラッターといった用語の意味がわかっていたので、こういう言葉に騙される人は少なかったかと思います。



(音質について)
低音は良く出ますが、高音は少し抑え気味です。これで高音を強くしたら単なる「ドンシャリ」になってしまうので、メーカーもそれは避けたかったのかもしれません。

でもレンジは狭いですし、音にキレがありません。何よりも細かい音がつぶれてしまいます。やはり初級モデルに近い音と言わざるを得ません。



(フロントパネル)
デザインはこの時期のカセットデッキとしては王道のデザイン。悪く言えば何の特徴もありません。それでもボタンやツマミ類の仕上げは少し高級感があります。

横幅390mmとフルコンポサイズとしては少し狭いですが、これはオプションのキャリングハンドル(TA-3 3,500円)を取り付けることを前提にしたものです。

レイアウトは左側に電源スイッチとヘッドフォン端子、マイク端子。カセットホルダーの窓は少しスモークがかかっています。日本で発売されたモデルは透明ですが、海外仕様の一部には同様にスモークの物があり、もしかすると過去の修理の際に交換されて、スモーク仕様になったのかもしれません。その下には操作用のピアノボタンが並んでいます。

カセットホルダーの右にはテープカウンターとリセットボタン。録音とドルビーのインジケータ。VUメーター(ニードルメーター)は小ぶりです。

下段にはドルビーNR(Bタイプ)のON/OFFスイッチ。ラインインとマイクのインプットセレクタ。テープセレクタはイコライザーとバイアスが独立したタイプで、ノーマル、クローム、フェリクロームに対応しています。
録音レベルのボリュームは左右独立。出力ボリュームはヘッドフォンと外部出力が兼用です。





(シャーシと内部について)
シャーシはリアパネル、サイドパネルと一体になった樹脂製です。フロントパネルはアルミ、コの字型の天板は鋼板です。

内部のレイウウトは、左側に大型のメカ、トランスと電源回路。右側のメイン基板には、録音回路、再生回路とドルビー回路、そして電源回路の一部があります。




(ヘッド・メカ)
ハードパーマロイのS.L.(スーパーライフ)ヘッドを搭載しています。このヘッドは従来のパーマロイヘッドの約5倍の寿命があり、ナローギャップ仕上げになっています。消去ヘッドはフェライトです。

メカは1モーターでスピンドルとリールと一部のメカの駆動を行っています。メカはピアノボタン式ですが、パワーアシステッドコントロールとして、ヘッドとピンチローラーの上げ下げは、モーターの力で行い、早送りと巻き戻しはメカニカル方式(人力)で動作します。

モーター12VのDCモーターで、内部にはサーボ回路が内蔵されており、スピード調整が可能です。スピードの調整をしてみましたが、サーボの反応が遅いです。

ヘッド・キャプスタン
ピンチローラー
メカ

モーター フライホイール



(電源部)
電源トランスはリーケージフラックス(磁束漏れ)対策のために、金属ケースに入っています。電源回路は簡易な回路で、独立電源ではありません。電源コードは細い平行コードです。

電源トランス 電源回路



(録音・再生回路)
録音と再生回路はIC化によってパーツが少ないです。確かにIC化によって、コストが安くなるとともに、回路の安定度が増すなどのメリットがありますが、なんでもIC化してしまうと、かえって音質は悪くなります。そういう意味ではD-550の回路は、初級機レベルです。

ノイズリダクションはドルビーBタイプで、MPXフィルターは搭載されていません。ふつうドルビー用のICは中級機以上であれば、録音回路用と再生回路用に2個が搭載されていますが、D-550は日立製のドルビーIC「HA1226」が1個だけです。

その他に使われているICは、録音アンプ、ラインアンプ、ヘッドフォンアンプが内蔵された、日立製のカセットデッキ用アンプIC「HA11122W」。録音回路のオペアンプは日立「HA1406」です。
電解コンデンサは日本ケミコンとニチコン製が使われています。

録音回路 録音回路

再生回路 ドルビー回路



(入出力端子)
入出力端子はラインイン、ラインアウト(可変出力)が各1系統です。その他にDIN端子があります。

リアパネル


(日立のカセットテープ UD)
1970年代の日立のカセットテープは、子会社の日立マクセルからOEMで供給されていました。そのことは当時のオーディオ雑誌でも紹介されており、広く知られていました。

左の「UD」は1973年に発売されたもので、有名なマクセルの「UD」(初代)と同じ物ですが、値段はマクセルよりも少し安く販売されていました。


Lo-D D-550のスペック

周波数特性 30Hz〜16kHz(フェリクローム)
30Hz〜17kHz(クローム)
30Hz〜15kHz(ノーマル)
S/N比 53dB(Dolby オフ)
63dB(Dolby-B)
歪率 1.8%
クロストーク 30dB以上(チャネル間)
60dB以上(トラック間)
ワウ・フラッター 0.08%(WRMS)
消費電力 11W
外形寸法 幅390X高さ143×奥行254mm
重量 5.6kg




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