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YAMAHA K-1a

     1979年 定価98,000円

YAMAHA K-1aは1979年11月に発売されたカセットデッキで、1978年に発売されたK-1/K-1Bをベースに、メタルテープに対応したモデルです。

ライバル機はAIWA AD-F70M、AKAI GX-F80、Nakamichi 481、OTTO RD-V3M、Pioneer CT-920、SONY TC-K75、TEAC C-3、Victor KD-A77など


K-1aのヘッドはセンダスト合金を使用した「ピュアセンダストヘッド」です。センダストはフェライトやパーマロイよりも高い磁気特性を持っていましたが、とても硬いために薄膜化などの加工がしずらく、腐食を防ぐために添加物を加えると、磁気特性が損なわれるなどの問題がありました。またコストが高い素材でした。

ピュアセンダストヘッドはセンダストのコアを、高真空遠心鋳造法という技術で製造しています。この方法では、まずセンダスト合金の材料を、高い真空に保たれた容器の中で溶かして、高純度のセンダストを作ります。これを高速回転する鋳型に流し込んでブロック状のコアを製造しています。
また巻線には伝導率の高い銀線を使用するなどして、ローインピーダンス化が図られています。

ヘッドのテープタッチ面は摩耗を防ぐために、センダストを真空中でプラズマ状に溶融したものを放射する「プラズマ溶射法」で作られています。これをさらに鏡面仕上げを行い均一なテープ走行を実現しています。


消去ヘッドは従来の「ダブルギャップ・フェライト」ヘッドを改良した、「ダブルギャップ・ストロング・イレーザ」ヘッドとなっています。

メカはキャプスタン駆動用とリール駆動用モーターを搭載した2モーターで、YAMAHAは「セパレート・ドライブ方式」と呼んでいました。1980年代では「当たり前」の方式ですが、1970年代後半にはまだ1モーターのデッキも多かったために、付けられた名前です。

キャプスタンは真円度誤差が0.1ミクロンに精密加工されたもので、これに慣性質量が大きい大型フライホイールを組み合わせています。ワウフラッターは0.028%とK-1よりも向上しています。

オーディオ回路のヘッドアンプは、インプットコンデンサーの無いICL構成として、音の劣化を防いでいます。イコライザアンプにはローノイズFETを採用しています。
録音機能としてはバイアスアジャスタを搭載しており、±8%の範囲で調整が可能です。再生機能ではサウンドフォーカススイッチを搭載しており、「SHARP」は周波数特性重視、「SOFT」は位相特性重視という選択ができます。

テープセレクターはノーマル、クローム、メタルに対応。ドルビーノイズリダクションは「Dolby-B」で、MPXフィルタを内蔵しています。

その他には有害な低周波成分をカットするサブソニックフィルター、メモリーリワインド、ソースモニタスイッチ、タイマー録音機能などを装備してます。



(音質について)
音はクリアでYAMAHAらしく高音にアクセントがあります。高音はキレイで伸びもあります。低音もキチンと出ますし、さすがは高級機という感じの音です。

ただ正直にいうとこのデッキだけは、この音で正解かどうかがわからないのです。それはヘッドに使われている銀線の問題。銀線はともかく酸化しやすく、酸化すると音が大きく劣化します。ヘッドはいちおう密閉構造になっていますが、完全な気密構造ではありませんし内部には隙間があります。

出てくる音を聴く限り酸化はそれほど進んでいない感じですが、まったく酸化していないということはあり得ません。30年以上たってこの音ですから、新品の時は音はどのぐらいすごかったのかと思います。



(フロントパネル)
K-1aのフロントパネルはシーリングパネルを使ったデザインで、前モデルのK-1/K-1Bを踏襲したものです。カラーはブラックとシルバーの2種類がありました。

レイウトは左側から電源ボタン、ヘッドフォン端子、イジェクトボタンとガラス窓のついたカセッホルダー。

中央部は上に回転式のカウンターと、録音・再生・早送り・巻き戻しなどの操作ボタン。このボタンは押しやすいようにスラント゜しています。

ディスプレィはシンプルでドルビーとテープポジションのインジケーター。右側にはFL管によるピークレベルメーターがあります。このレベルメーターはグリーンの表示で、セグメントは細かいものの、レンジはマイナス側が-30dbまであるものの、プラス側は+3dBまでしかありません。

その下には出力レベル(ラインアウトとヘッドフォン共用)と、録音レベルのスライドボリュームがあります。

シーリングパネルの中には、メモリーボタンと留守録用のタイマーのスイッチ。マイク端子、バイアスアジャスター、ノーマル(LH)、クローム(CrO2)、メタルのテープポジションの切り替えスイッチ、録音バランス、ドルビーノイズリダクションのON/OFFスイッチ、MPXフィルターのスイッチ、ソースモニター、LINEとマイクの入力切替、サブソニックフィルター、サウンドフォーカスなどのスイッチがあります。




(シャーシと内部について)
シャーシは鋼板製で、サイドパネルをコの字型に折り曲げ、フロントとリヤパネルと組み合わせて、フレームを作り剛性を確保しています。

天板もコの字型で厚めの鋼板が使われており、裏側には大きな防振材が貼られています。底板はメカと電源トランスがある部分は振動対策と強度を上げるために2重底となっています。脚はプラ脚(ゴム脚)です。

フロントパネルは厚さ4mmのアルミ材。破損が心配なシーリングパネルも厚さ4mmで、しっかりと取り付けられています。


内部は前モデルのK-1/K-1Bとほとんどかわっていません。目につくのは電源回路のレギュレータの位置が変更されているくらいです。

左側のサイドパネルの横には、システムコントロール回路の基板があり、マイコンなどノイズの発生源を、録音・再生回路からなるべく離すように配慮がされています。その隣にはメカと電源トランスがあります。

右側のメイン基板は一番左側に電源回路。真ん中が手前から録音回路、再生回路、メーター回路があり、左右独立のツインMONOとなっています。
一番右にはドルビーやなどの切り替えスイッチがあります。

気になるのは、 録音回路のパーツ数が同時期のKD-A5やTC-K55などの、「598」モデルよりも少ないこと。基板を細かく見ていくと、真ん中にある「ソース」の切り替えスイッチや右側の「ドルビー」の切り替えスイッチで、本来の「ソース」や「ドルビー」以外の、制御系などいろいろな回路の切り替えを同時にしています。

このため配線パターンが、この2つのスイッチにめがけて殺到していめため、部品を取り付けるスペースが無くなっています。また内部配線の不要な引き回しが多くなっており、結果として音質の劣化を招く可能性もあります。また故障時の原因調査にも時間がかかりそうです。

ふつう、この手のスイッチは「再生」ボタンが押された時に、いろいろなラインの切り替えを行うものです。どうして「ソース」や「ドルビー」にしたのかわかりませんが、YAMAHAはオープンリールデッキは作っていなかったと思いますし、カセットデッキへの参入も遅かったので、いわゆるノウハウが不足していたのかもしれません。


天板 底板


(電源部)
電源トランスはサイズは大きくはないものの、31V・42VAと大きな容量のものが搭載されています。リーケージフラックス(磁束漏れ)対策のために、金属ケースに入っており、別巻線になっています。

電源回路はメカやディスプレィ、オーディオ回路などに系統を分けた独立電源となっています。このうちオーディオ系は、左右のチャンネルの相互干渉を抑えるために、±2電源方式となっています。

電解コンデンサはELNAのREなどが使われています。電源ケーブルは細い並行コードです。

電源トランス 電源回路


(システムコントロール回路)
キー操作などを制御するシステムコントロール用のマイコンは松下製「AN6251」です。

システムコントロール回路 マイコン AN6251

(ヘッド)
録再ヘッドはセンダストをラミネートコアに使用した「ピュアセンダストヘッド」です。

センダスストヘッドは従来のパーマロイやフェライトヘッドに比べて、最大磁束密度が高く、バルクハウゼンノイズ(磁壁が移動によるノイズ)が少なく、キュリー温度が高いためテープとの摩擦による熱に対しても温度特性が安定しているという、優れた特徴を持っていました。

ただし初期のセンダストヘッドはフェライトヘッドよりも耐久性が劣り、高周波特性や腐食性などに問題がありました。トリプルPヘッドはこれらの問題を改善した、いわば第2世代のセンダストヘッドです。

ピュアセンダストヘッドはK-1aから使われるようになった名前で、K-1の時は「トリプルPヘッド」(Triple-P-Head)と呼ばれていました。
トリプルPヘッドは正式には「Pure & Plasma Process Head」と呼ばれ、これはセンダストの高純度を表す「Pure」、プラズマ溶射法の「Plasma」、高精度の製造・加工「Process」からとられたものです。※1

素材となるセンダスト合金は、日立金属や古河電工などの素材メーカーでも開発・製造がおこなわれていましたが、日本楽器(YAMAHA)は自社で製造方法の開発を行っており、その状況は日本応用磁気学会などでも紹介されています。

まずセンダストの純度を高める(不純物をなくす)方法として、まず製造過程での管理技術「コンタミネーションフリー(コンタミ防止)」を実施しています。これにより99.999999〜99.9%という高純度のセンダストを使用しています。

コアの製造は高真空遠心鋳造法(真空遠心鋳造法)を使用しています。まずカプセルに高純度のセンダストのインゴットを入れて10-5torrの真空にします。次にセンダストを真空中で溶解して、内部の空孔を無くします。これを同じカプセル内にあるセラミックの鋳型に流し込みます。
この鋳型は高速で回転(18,000rpm)しており、遠心力によりセンダストの凝固時に高い圧力をかけて急冷を行います。これによって結晶粒の成長を抑えて一方向性結晶としています。鋳造されたセンダストは研削、切断されてコアが完成します。

コアは1トラック当り5枚積み重ねてラミネートにして、パーマロイのシールドケースに収められますが、テープとの摺動面にはセンダストをプラズマ溶射して、緻密で空隙の少ない皮膜を作っています。
この緻密な皮膜こそがYAMAHAのヘッドの特徴で、耐摩耗性の向上とともにセンダストの弱点である腐食を抑えています。

K-1aのピュアセンダストヘッドでは、高音質のメタルテープに対応するために、ヘッドの巻線を電気抵抗の小さい銀線を使用するなどの改良を行い、インピーダンスを1/4に低減。高域の位相特性のリニアリティやチャンネルセパレーションの改善がはかられています。

実はこの頃、銀の価格が投機により急激に高騰しており、1978年に1トロイオンス当たり6.12ドルだったものが、79年には28ドル。1980年には48ドルと8倍にも上昇しました(シルバーショック)。当時、私は写真も趣味にしており、1眼レフ用の酸化銀電池「4SR44」の価格が、いっきに3倍ぐらいになってビックリした思い出があります。

K-1aの後継機であるK-1dも同じヘッドを使用しているのですが、宣伝文からは銀線という文字が抹消されました。もしかすると銅線に戻されたのかもしれません。ともあれ酸化の問題もあるので銀線を使ったヘッドはとても珍しいと思います。

消去ヘッドはダブルギャップフェライトですが、保持力が高いメタルテープ用に対応するため、消去能力を高めた「ダブルギャップ・ストロング・イレーザ」を採用しています。


※1 トリプルPヘッドはセンダストのメリットである飽和磁束密度や透磁率が高く、磁気歪が少なく、安定した温度特性を持ち、そして耐摩耗性が高いという特徴を持ち、1978年の時点では間違いなく最強のヘッドだと思います。
しかしその後に、もっとすごいヘッドが登場します。それはPioneerが開発した「リボンセンダストヘッド」です。センダストの薄膜化によりコアを11枚のラミネート構造にして、過電流の発生を抑えることで、センダストヘッドの音質的な弱点を解消しました。このヘッドは1979年5月発売のCT-A1(230,000円)から搭載されました。

※2 カタログの説明文には「センダストで厚く覆っている」と書かれていますが、これはあくまで宣伝文句で、溶射は皮膜を形成するための表面処理の方法です。

ヘッド・キャプスタン・ピンチローラー ピュアセンダストヘッド


(メカ)
K-1aのメカは正確で安定したテープ走行を実現するために、高い剛性と精密さを兼ね備えた優秀なメカが搭載されています。メカのシャーシ部分には厚さ1.6mmの鋼板を使用し、剛性と強度を確保することで、モーターなど回転系から生じる振動を抑えています。

キャプスタン用にはFGサーボ制御のハイトルクDCモーターを使用しています。このモーターは内部にサーボ回路が内蔵されており、モーターの後部にはスピード調整用の穴があります。

リール用は瞬時に回転方向を切り替えたり停止が可能な、モーター後部にブレーキ機構を内蔵したレバーシブル(リバーシブル)DCモーターです。

フライホイールは直径が大きく慣性質量が大きいほうが、回転が安定するということで、K-1aでは直径77mm、慣性質量2000g/cmの両面ダイナミックバランス型フライホイールを採用。重量級フライホイールで問題となる偏芯についても、高精度の加工により偏重心距離を6ミクロンに抑えています。
またキャプスタンも真円度誤差0.1ミクロンという高精度の加工が施されています。

リールからカウンターまで、ゴムベルトが取り付けられており、カウンターを回転させると同時に、カウンターの裏側にあるセンサーで、テープの回転を検知し、オートストップが作動するようになっています。
このゴムベルトが切れると録音・再生・早送り、巻き戻しなどができなくなります。早送り、巻き戻しが出来て、録音・再生ができない場合は、フライホイール用のゴムベルトが切れた場合やキャプスタン用のモーターの故障(モーター本体ではなく、内部のサーボ回路)が原因のようです。

メカ フライホイール

FGサーボ制御のハイトルクDCモーター


(録音・再生回路)
録音回路のイコライザアンプは、初段にローノイズFETを使用し、入力カップリングコンデンサを省いているため、ヘッドの出力を直接FETのゲートに入力できるため、音質の劣化がありません。

バイアス発振回路のバイアス周波数は105kHzで、発振波形の歪が少なく、出力が大きいものを採用しています。またキャリブレーション機能により±8%の範囲で調整できます。

ノイズリダクションはドルビーBタイプで、MPXフィルターのON/OFFが可能です。ドルビー用ICは「NE646B」が使われています。

テープポジションはノーマル、クローム、メタルテープに対応。 ノイズリダクションはドルビーBタイプで、MPXフィルタも搭載しています。

面白いのは再生時に使用するサウンドフォーカス機能で、名前のとおりカセットデッキ側でサウンドエフェクトを行うものです。モードは「SHARP」と「SOFT」があります。

「SHARP」という名前ですが、これがノーマルモードです。再生ヘッドの高域周波数の損失を補うために、ピーキング(強調)用の共振コンデンサを「ON」の状態にしています。ピーキングは今では「強調」という意味になりますが、昔の言い方をすると「補償」、つまり足りないものを補っているということになります。

「SOFT」は共振コンデンサを「OFF」にしたモードで、高域の周波数特性が1〜3dB低下しますが、素直な位相特性やボーカルなどの定位が改善するというものでした。

録音・再生回路 バイアス回路

再生回路 ドルビー回路


(入出力端子)
入出力端子はラインインが1系統、ラインアウト(可変出力)が1系統です。

リアパネル


(YAMAHAのカセットテープ)
1979年ごろのカセットテープはSONY、マクセル、TDKの御三家に、富士フイルムやDENONブランドに変更した日本コロムビア、スコッチやBASFなどの海外勢などが加わり、戦国時代になりつつありました。

また多くのオーディオメーカーがOEM供給により、自社ブランドのカセットテープを販売していました。

YAMAHAはカセットデッキで出遅れましたが、カセットテープの販売も出遅れ、1982年に自社ブランドのカセットテープを発売します。

ラインナップはノーマルタイプが「MUSIC」 C-60 550円、「MUSIC EX」C-60 650円、「MUSIC GX」C-60 750円。クロームタイプは「STUDIO EX」C-60 850円。そしてメタルテープの「METAL」C-60 950円です。
上:MUSIC EX 下:STUDIO EX



YAMAHA K-1aのスペック


周波数特性 30Hz〜22kHz ±3dB(メタル)
30Hz〜19kHz ±3dB(クローム)
30Hz〜17kHz ±3dB(ノーマル)
S/N比 60dB(Dolby オフ・クローム)
Dolby-B使用で9dB改善
歪率 1.0%
ワウ・フラッター 0.028%(WRMS)
消費電力 25W
外形寸法 幅435X高さ140×奥行305mm
重量 8.8kg












YAMAHA K-1a  B級オーディオ・ファン