SHARP(シャープ) DX-A3は、1987年8月に発売されたエントリークラスのCDプレイヤーです。DX-150という型番で海外にも輸出されていました。
SHARPはCDプレーヤーの1号機「DX-3」(165,000円)を、1982年に発売しますが、その後はミニコンポサイズの低価格モデルを中心に発売します。ただSONYやTEACなど他のメーカーも低価格競争に加わり、急激な低価格化が進んでいきます。
そうなるとオーディオブランド「オプトニカ」で、失敗しているSHARPには旗色が悪く、カタログブックを見る限り、このDX-A3あたりを最後に、単品コンポのCDプレイヤーからは撤退したようです。
当時のSHARPはピックアップやサーボ、信号処理用のチップ、デジタルフィルターなどを自社で生産しており、このDX-A3にもそういったパーツが多く使用されています。
でもこのDX-A3の最大の特徴は、SANYO製の16bitDAC「LC7880M」です。このDACはグリッチ歪みが発生しないように、抵抗ストリングDAC、PWM(パルス幅変調)DAC、レベルシフトDACの3種類のDACを組み合わせてD/A変換を行う「ダイナミックレベルシフト変換方式」を採用しています。
いわばバーブラウンのDAC(抵抗ストリング)、フィリップスのDAC(シフト)、後に登場する松下のMASH(PWM)の、いいとこ取りをしたようなDACです。内容的にはとても興味深いものですが、ただ音質が伴っていないのが残念なところです。
(音質について)
音はドンシャリ気味で明らかにJPOP、歌謡曲、ロック向き。当時のエントリーモデルとしては標準的な傾向の音です。レンジと音場はともに狭いですが、定位だけは抜群に良いです。
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(フロントパネル) |
ディスプレィは液晶タイプで、トラックナンバーと経過時間、それに再生やリピートなどの、アイコンが表示されるだけの簡易なものですが、「マルチグラフィック・ディスプレイ」と名付けられていました。
プログラムの機能も簡易なため、複雑なキー操作などはありません。
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(内部について) |
シャーシは薄い鋼板製。防振対策は何もされていないので叩くとよく鳴ります。フロントパネルは樹脂製。脚はインシュレーターではなく小さなゴム脚です。
内部を見ると、基板を抜き取られたジャンク品かと思ってしまいますが、メイン基板はメカの下にあります。CDのケースより少し大きいぐらいのサイズに、デジタル回路とオーディオ回路が収められており、どちらかというと、ポータブルCDプレーヤーの回路に近いかもしれません。
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(電源回路) |
電源トランスは20VAで、この回路からすれば余裕の容量です。
電源回路はメイン基板とメカ、システムコントロールとディスプレィの2系統になっています。電源コードは細い並行コードです。
電解コンデンサはルビコンの25V・2200μF X2本など。
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電源回路 |
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レギュレーター |
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(デジタル回路 サーボ・信号処理・システムコントロール) |
デジタル回路はメカの下のメイン基板のほとんどを占めています。
この回路でメインとなるICは、SHARP製のシグナル・プロセッサ「LR37631」で、1チップの中にサーボ制御回路と、EFMやサブコード復調、誤り訂正などの信号処理回路が収まっています。チップはノイズの干渉を防ぐために、アルミの板で覆われています。
RFアンプはSANYO製の「LA9200N」。RAMはSHARP製の「LH5116N-15」が使われています。
システムコントロール用のマイコンは、SHARP製の「RH-IX1478AF」で、フロントパネルの裏の基板にあります。
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メイン基板 |
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左:シグナル・プロセッサ
LR37631
右:RAM LH5116N-15 |
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RFアンプ
SANYO LA9200M |
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システムコントロール
RH-IX1478AF |
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(オーディオ回路) |
オーディオ回路は必要最低限の物しかない、とても簡素な回路です。
デジタルフィルターは2倍オーバーサンプリングで、シグナル・プロセッサ「LR37631」の中に内蔵されています。
D/AコンバータはSANYO製の16bitDAC「LC7880M」です。LC7880MはCMOSプロセスで作られた、消電力タイプのオーディオ用DACです。
内部はとても凝っていて、3種類のDACでD/A変換を行う「ダイナミックレベルシフト変換方式」を採用しています。
これは16bitデータの上位8bitを抵抗ストリングDAC、中位4bitはPWM(パルス幅変調)DAC、下位4bitはレベルシフトDACで変換するというもので、これを左右独立で組んでいるため、1チップに合計6個のDACを内蔵しています。
この複雑な方式により、グリッチ歪みが発生しないグリッチレスDACとなっています。
ローパスフィルターは可変コイルを使用したアクティブ型。オペアンプはJRC「4560」が使われています。電解コンデンサはルビコンとマルコンが使用されています。
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オーディオ回路 |
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16bitDAC
SANYO LC7880M |
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(ピックアップ・ドライブメカ) |
ピックアップ・ドライブメカはチャッキングアーム式です。ピックアップは自社製の3ビーム「RCTRH8112AFZZ」で、スライド機構はウォームギヤ方式です。
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ピックアップ・ドライブメカ |
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ピックアップ・ドライブメカ |
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ピックアップ
RCTRH0053AF |
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トレイ開閉用のゴムベルト |
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(出力端子) |
リアパネルの出力端子はアナログの固定出力1系統だけです。
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出力端子 |
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